第37話 昔の自分と真希からの連絡

「ちゅかれたァァァァっ?!」


 ピアスを開けて、ちょっと落ち着いて座ったらもうダメだった。

 床が俺を離してくれない!


「あはは、おつかれぇ」


 はい、と冷たいコーヒーを手渡してくれる。


「うあぁぁぁぁぁぁっ、いぎがえるぅぅぅっ!」

「……何その声。やっぱ人多いときつい?」

「あれはあれで楽しいからいいんだけど、スタミナがゴリゴリ削られるね〜、普段あんまりああいうとこ行かないからさ」

「……今まで土日とか何してたの?昔は遊び行ったりしてたけど、、、」


 昔、小学生くらいには、近所の山に遊びに行ったりプールに行ったり、川遊びしたりアウトドアで好奇心旺盛だった。


「ん〜、中学になってからは図書館だったり、自習室、あとは~本屋行ったりって感じで基本インドアだったな~。しかもそのほとんどが勉強で、本当の息抜きはたまに読んだ本だったり、走ったりって感じ」

「わー、私の知っているたくみとは大違いだね~、私の知っているたくみは、運動とかしてたから、だから勉強し始めてしかも瞬く間に校内で1位になったって聞いて驚いたよ~」


 逆にそれ以外熱中してやれるものがあの頃なかった、ってだけだから誇れるものでもないの。


「まぁそれくらいなら多分真剣にやれば出来るよ、全国模試とかじゃないしね~」

「いや、普通なれないから!」


 そうかなぁ?

 行けると思うけどなぁ……。

 睡眠時間削って深夜までやって、朝起きても勉強して18時間ずっと勉強みたいな事したら。


「たくみってそういうところあるよね~、一つのものに集中すると止まらなくなるところ。それでそうなるとそれ以外のことが基本どうでもよくなるっていう」

「……なの?」


 え、全然知らなかった。

 そうだったの、俺?


「うん、一つのことに熱中するとそれが多くなるっていう、今もそうでしょ?」

「え?」


「……だって私に夢中、でしょ?」


 上目遣いで少し恥じらいながらいうかすみの破壊力はえぐい。


「……本人に言われるのはなんか、恥ずかしいけど」

「言ってる私も恥ずかしいよ!」

「……でも確かに。ずっと諦めきれなかったし、かすみのこと言われたら納得したわ、他のことどうでもよくなるという、か」

「でも勉強はしてるよね~」

「する時間は少し減ったけど、でも将来の為だから、ある意味かすみにつながるんだよ」

「……もうっ!」


 そう照れながらも、かすみは耳のピアスをなでている。

 つられて俺もなでる。


 そこには二人の絆が。

 もう離れないと。


 ピコん。


 そんな時になる通知音。


「……あ、俺か、違う俺じゃない、かすみじゃない?」

「……私? 誰だろ、バイトのやつはもう納品したはずなんだけどな」


 実はかすみ、バイトをしている。まぁ大学生だから当然と言えば当然なんだけど。

 今どきの自宅でできるもので、友達と動画編集?とかをやっているらしい。


「……あ、真希から」

「真希?」

「うん、なんか話したいことがあるんだって」

「話したい、事?なんか心辺りある?」

「うーん、真希とは家に帰ったら話すけどラインで話すこととかそんなないしね~、わざわざ会いたいってのも初めて」


 ほんとになんだろう?


「俺とのこと、相談したい、とか?」


 いやでもないか。

 どうやらかすみも同じ結論に至ったらしい。


「でもお母さんが真希の事は任せて、って言ってたからなぁ。私に相談ならわざわざこっちに来る必要もないと思うんだよねぇ、電話でもいい気がするし」


 ふむ。


「全く分かんないな、でいつ来るの?」

「……明日来たいって、なるべく早く会いたいんだって」

「明日、か」

「うん、でもたくみいるしなぁ、ことわろっか?」


 あくまで俺とのことを優先して考えてくれる。

 そのことがうれしかった。


「いや会ってあげたら?早く会いたいって言ってるんし、至急のことかもしれないじゃん」

「そうだけど……いいの?」

「うん、俺はかすみが優先してくれようとしたのが嬉しかったし、それにまたすぐ会えるからさ」

「……ありがと。じゃ明日たくみは先家に戻ってて?来週の前半で行くから!」


 かすみは真希に簡単に返事して、そして、


「まぁちょっと離れるとは言っても今離れるわけじゃないじゃない?」

「それはそう」


 多分今俺とかすみの思っていることは一致している。

 かすみの眼があの眼になってる。

 えっろいサキュバスの時の眼に。


「二日分しっかりと補給させて、ね?」

「うんお手柔らかに」

「ふふふ」


 普通逆じゃないか?台詞。


 無事俺は体力のすべてを使い切って、120%まで出し切った。


 そんな翌日。

 かすみは俺の髪をまた念入りにセットして駅まで送りに来てくれた。

 これ、セットしてもらうと人が変わったようになるけどかすみスタイリストマジで向いてるんじゃないか?

 そんなスタイリストかすみはホームまで来てくれた。


「いいの?ここまできて」

「うん、見送りがしたかった、気を付けてね」


 かすみは俺の手をぎゅっと握り、心なしか少しウルウルしてる気がする。


「電車に乗るだけだから大丈夫だよ、かすみこそ帰り道気を付けてね?」

「うん、ありがと!少し離れるだけなのにこんなにさみしくなるなんて思わなかった」

「……でも遠いけど近くにいるでしょ?」


 かすみのピアスをなでる。


「たくみ……」


 かすみはうっとりとした目をして、そして周囲を確認し人がいないのを確認すると、


 ちゅっと


 触れるようなキスをした。


 と同時に電車が来た。


「しっかりと溜めてね?」


 かすみは妖艶な笑みを浮かべながらいつか聞いたセリフと同じことを言った。

 だから、おれも。


「分かった、しっかりと溜めてかすみに勝てるようにするね?」


 といつかのセリフをなぞる。

 そのまま電車が閉まり、かすみと離れていく。

 帰りの電車は行きの時よりも倍以上の時間がかかった気がした。


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(かすみside)

 

 たくみが電車に乗って私から離れていく。

 またすぐ会えるけど、でもさみしいものはさみしい。


 「ふぅ」


 一度息を深く吐いて、お揃いのピアスをなでで落ち着く。

 これ一緒に買っておいて本当に良かった。


 ホームを出て、駅前の広場に。

 既に真希は待ち合わせ場所にいた。

 その姿は少しこけたように見えた。

 真希は私と同じようなタイミングでこちらに気付き、寄ってくる。


「かすみ姉さん、今日はありがと時間採ってくれて」

「ううん、いいよ、じゃカフェでも行く?」

「うーんできれば家に行きたいかな、出来れば二人だけで話したいから」


 一応家を片付けておいて良かった。

 まぁ正確には片づけてもらっておいて、だけど。

 たくみ、ありがと!!!感謝!!!


「……いいよいこっか」


 家までの道のりは雑談をして過ごした。

 大学のこと、高校の事、最近の事。

 でも肝心の話はなかった。


 そして家について飲み物を出して、落ち着くと真希は真剣な顔をしてこう切り出した。


「かすみ姉さん彼氏できたんだ?」


 ー------------------------------------

 いつも応援ありがとうございます

 これを書いてるのは23時50分。

 なぜ平日と同じ時間になってるんだろう?


 いつも星とかありがとうございます!!

 モチベになりまくってます!!

 後、感想とかも目を通してます、返せてないだけなのでご容赦を返せるときに……

 誤字脱字とか助かってます!!

 もし宜しければレビューとかもしてもらえたら嬉しいです。

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