第31話 ずるい女

真奈美さんが去って残されたのは俺ら二人。


「いや~、びっくりしたよ」


家にいたはずのかすみは来た理由を照れ隠しのように話し始める。


「いや、俺もびっくりしたよ、真奈美さんと話していたら気づいたら隣でそわそわしているかすみがいるんだもん」

「……だって心配だったから、さ。ほら真希の件は巧が悪いわけじゃないけど。お母さんも自分の娘のことだからちょっと感情的になってもおかしくないかも?って心配してたわけ」

「……あ~、確かにそれはあるかもね、どんな人でも子供のことになると、人が変わるともいうし」

「うんうん!そうなの、親は変わるんです娘のことになったら!だから私が隣にいたのもリスク管理、そうリスク管理の一つなのよ!」


なんかすごいかすみが言い訳っぽい。

目泳いでいるし、自分も親になったことないでしょ。

それにそんな理由つけなくても、大丈夫なのに。


「心配してきてくれたんでしょ?」

「ま、まぁそうとも言うけど」

「ありがと」

「べ、別にあんたのために来てあげたわけじゃないんだからねっ!」

「なぜにツンデレなのよ」

「照れ隠しだよ~!!」


ベーと舌を出すかすみが、微妙に年齢にそぐわず子供っぽくてかわいかった。

てか照れ隠しって言っちゃってるし。


「……じゃあ今日は夜までその感じでいこっか」

「……え?」


かすみの眼が一瞬点になった。

その予想外の言葉を受けたときの感じ、真奈美さんとほんと瓜二つだ。


「なんかそういうかすみもいいなって」

「……うぇ?」

「つんつんな感じのかすみもまた新鮮で……いい!」

「……変態なのかな?」

「男はすべからく変態な生き物だよ?」


うわぁ……と引き気味のかすみ。


「私の彼氏堂々と変態宣言してる……はぁまぁそれに付き合ってあげるのも年上としての責務かな」


しょうがないわね、とかすみも乗ってくる。


「じゃ早く家に帰ろうか、今日も何か色々あって、ちょっと疲れ気味だし」

「そうね~」


そうして談笑しながら二人の家へと帰る。

夜のひと時。


こんな日常をかすみと過ごせるなんて2週間前の俺はもう来ないと思ってた。

だからこんな風な穏やかな日常を憂いなく過ごせるのが本当に幸せで……

しかもいつ言おうかと悩んでいた真奈美さんについてもなんか成り行きで解決でき、本当に良かった。


帰り道。


「それにしてもお母さん複雑だっただろうな~」

「たしかによく考えたらそうだね」

「真希の件聞きに来たはずなのに気づいたら巧君の告白になってるんだもん、不意打ちすぎだよ、私も今日話すとは思わなかったしさ」

「……俺も」

「そうだよねぇ……え?俺もって?」

「いや実は真奈美さんに話してたらこの人に言わないのはな、って。それによくよく考えたら反対されることもしていないし。それにたとえ真奈美さんに反対されても、いいって納得してもらうまで説得するつもりだったし。 だからもうこれは早いか遅いかの違いだから早くしようかなって」

「巧君……」

「かすみ」


2人の距離が自然と縮まる。

そしてハグを迎え入れようとした巧にかすみは……


「おばか!」


チョップしてきた。


「ふぇなんで?」

「たくみは私のことになると暴走気味になるんだから!今度はちゃんと二人で相談して決めましょ?特にお父さんの時とかね、何でも一人でしなくていいの」

「あぁ分かった、ごめん」

「いいよ、それに……嬉しい方が圧倒的に大きかったから」

「それならよかった」

「……ねぇ?」


かすみはとことこと前に行くと前かがみになりながら振り向く。


「早く帰ろ、そしてさっき話してたやつ、やろ?」


やろ?

……やろ?

…………やろ?


俺の中でかすみの言葉が反芻される。

そして……


「……ずるくね?そんなこと言われたらさぁ早く帰らないといけないじゃん!」

「女なんてずるいもんだよ」

「怖ぁ」

「怖くないよ、私がずるくなるのは巧だけだから」


あなたにかわいがってもらうために、好いてもらうために、愛してもらうために、ずるくなるの。


「どう?ずるい女もいいもんでしょ?」

「俺にだけずるいのは最高だね」


もちろん夜は励みに励んだ。

ツンツン演技をしているかすみをとろかしていくプレイ。

控えめに言って最高だった、終わったのは深夜。


そして無事寝坊しかけた。

もう寝坊しかけるのデフォになっていないか?


そんな風にあわただしく登校、またHR始まるギリギリだった。


「最近来るの遅くなったねぇ」


隣の席のギャル相沢さん。

朝からテンション高いなぁ。


「朝帰りかにゃぁ?」


にやにやとこちらをからかって様子を楽しんでいる

そして微妙に当たってるという。

嘘をついてからかわれるならあえて攻める。


「……だったらどうする?」


「……な、な、なえ?!」


ううん?

なんか顔が赤いし。

反応が新鮮と言うか、初心と言うか……


「もちろん冗談だよ?」

「そ、そうだよね知ってるけどね!」


めっちゃ焦ってる。

あれ?もしかして?


「……相沢さんもしかして」

「さ、さぁ授業の準備しよ、今日も授業楽しみだなぁ!!」


相沢さん。実は初心なのかな?

めっちゃ焦ってるし、教科書逆だし。


ちらと横を見れば真希の席はまだ空いている。


「最近佐倉さんこないねぇ、なんかあったのかな?」


相沢さんの復活も早い。

いや話題逸らせると思ったのか。


真希はまだ来ないのか。

でも昨日話した時真奈美さんに状況も話したし大丈夫なはず。

なんとかするはずだきっとうん。


授業をいつも通り過ごした時。

やっとめんどくさい午前中を乗り切って、トイレを出た時。


トイレを出たら目の前にいたのは真希の友達の沙里と亜衣。


「……ねぇ成瀬話があるんだけど?」


え?出待ち?


ー-------------------------------------

安定のギリギリ後書き。

いつもギリギリになって誤字脱字すると言う。

ご迷惑をおかけしてます!


さて、次回は真希フレンズ。

巧君1週間しか逃げれず!

さてどうなるのか……


皆さんの応援で永遠にモチベ続いてます。

自分でもなんだかんだ毎日更新しててびっくりしてます。


ほんじゃまぁ週初め、そして8月最初の日頑張っていきましょう!

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