第30話 母と娘、渚へドライブ(真奈美side)


「ただいま~」


 カフェから出て、自宅へ戻る。

 旦那はまだ帰ってきていないらしい、今日も遅いとか言ってたな。


 ただいまに対して真希から返事はない。いつもはあるけど、それだけ落ち込んでいるのね。


「さて、どうしたもんかしらね~」


 なんで休み始めたのかは分かった。


「アオハルってやつね~」


 巧君にとっても真希にとっても。

 巧君から事情は聴いた、大体全部。

 もちろん言っていないこともあるだろうけど。

 巧君の事情から真希が何をしていたのか、過去に何をしたのか、それがにどんな影響を及ぼしたのか。

 最近の巧君に何があって、なんで真希の告白を断ったのか。


「真希の告白が嘘告白だから、それをさよならと、自分はどうでもいい存在になり下がった、ね。少し過激だけど事情を考えればそうなるのは分かる。 逆に今普通にくらしているのもすごいくらい、もっと暴れてもいいのに」


 かすみがなんとかしたんでしょうね。

 何かをして。


 巧君を癒すために一体何したのかしら?

 話を聞いた感じかなり人間不信になってたはずなのに……

 そのやり方で真希も元気にならないかしら?


「……って娘に頼るようではだめね~」


 それに真希の思い人である巧君は自分の姉のかすみと幸せになった。

 うん、これは伝える時期が大事ね。


 今真希は絶賛傷心中だし。

 伝えられないわよね~、あなた実は嘘告白の件なくても多分付き合えなかったなんて。

 まぁ私も勘違いするくらいに、巧君と真希はいい感じに見えたからね。

 余計ショックなのかも。

 でも肝心の巧君はずっとかすみを……


 そりゃ巧君も怒るのが普通って考えると、逆に理性的に押さえたほうなのかな?

 やっぱ優しいんだね。


 さて、じゃあお叱りをうけて塞ぎこんだ真希を何とかするのは私たちの仕事ね~。


「真希~」

「……なに?」

「準備しなさーい」

「……準備……ってなんの?」

「出かけるわよ」

「でも明日学校あるし~」

「いいから行くわよ!」

「わ、分かったから!ちょっと準備だけするから!」


 3日ぶりに見た真希の顔は酷いものではあったけど、帰ってきた日よりはましかしら。

 軽く化粧を済ませると、真希は私の後にとことこついてくる。

 化粧しなくても可愛いと思うのは親ばかじゃないと思う。


「……どこいくの?」


 車の助手席に座りながらジト目でこちらを見ている。


「うーん山と海どっちがいい?」

「……なにその選択、人でも埋めるの? しいて言うなら海かな」

「じゃぁちょっと海風でも浴びに行きましょうか」

「え?!今日平日だけど?!」

「……だから?」

「忘れてた、お母さん行動力の鬼だった」

「鬼ってなによ、全くもっと可愛く言いなさい?」

「……お父さんにはいったの?」

「『おっけ、じゃあ俺も行っていい?』って言われたから家で留守番してなさいって言っといたわ」

「ふーん」


 そのままドライブしていると真希は車窓から外をぼーっと眺めていた。

 2時間近く運転してようやく着く。

 我ながら平日に来るところじゃないかもしれない。

 まぁもうここまで来たら3日休むのも4日休むのも変わらないでしょ。


「……あれここって」

「覚えてる?」

「うん、最近はあんまり来る機会なかったよね?」

「そうね、成瀬家とうちで昔はよく来てたわね」

「成瀬家……」


 そうよね、思い出すのは巧君のことだよね。


「巧君となにかあったんでしょ?」

「……え?」

「分かるわよ、親だもの」


 巧君から話を聞く前から彼の事なのは分かっていた。

 だってそうじゃなきゃこんな風に真希が休んでたら巧君は来るからね。

 真希が休んだらお見舞いにも来てくれた巧君だもん。


「……巧にさ、告白、したんだ」

「うん」


 真希はぽつりぽつりと話を始めた。


「私ってさ、こんな性格だからさ、自信が出なかったんだよ彼と関係を進めるのが。そんな感じだからさ、去年の文化祭とかも一緒に回ってたんだけど何も進展がなくて」


 私はただ頷くだけ。


「だからそんな私のために、友達が言ってくれたの罰ゲームで告白しようって、そしたら引けなくなるから、私も一度言ったらやらないと気が済まない性格なの知ってたんだろうね、そうやって発破をかけようとしてくれた」


 真希の友達。


「で、それをやろうとした日、巧が学校を休んでさ、それで今週やっと来たから告白しようとしたの、そしたらその前に『嘘は嫌い』って言われて、それでも私の気持ちは嘘じゃないから好きって素直に伝えたの、そしたら嘘は嫌いって嘘告白は嫌いって、それに……昔の嘘も知ってた」


「昔の嘘?」


「うん、かすみ姉さんが従兄弟と出かけた時に巧に聞かれて彼氏っていっちゃったんだ、そうしたら私を見てくれるかな、って。そのことも知ってた。全部知ってて最後に多分巧はチャンスをくれたんだ、優しいから。 でも私はそれに気づかず告白して巧を失った」


「だから私は逃げたんだ私の部屋に、そうしたら巧は来てくれるかなって」


 来なかったけどね、と真希は付け加える。

 話してくれた内容は巧君のとほぼ一緒。かすみの件をまるっと知らない感じかな?


「……それで?」

「え?」

「それで真希はどうするの?」

「どうする……って?」

「今真希がしたのは過去の話。でもそれはもう起きてしまったことでしょ、大事なのは未来、これからあなたがどんな行動をするか、じゃない?」

「どうするか、なんてそんな巧は怒っているし」

「大事なのは巧君が許してくれるかどうかじゃないわ、あなたが自分のした行動に対してどう責任を取るか、これからどうしていくのか。巧君が許してくれるくれないはある意味副次的な話よ」

「自分の……行動」

「ええ、そう。どうしたらいいのか何が悪かったのか、そういうのをまず全部考えたうえで、これからどうしたらいいのかちゃんと考えなさい。これはあなたの今後の為よ」



 真希は私の言葉をかみ砕くように、うんうん頷いている。


「よし、じゃあ最後に海に向かって叫んだら帰ろっか」

「……え? さ、叫ぶ? な、なんで?!」

「いいからやるよ私からね!」


「ねむー-------い!!!!!」


 私の素直な気持ち。

 もう今日は色々あって疲れた。

 巧君からのカミングアウトとか真希の悩みとか。

 もう青春過ぎてお姉さん胃もたれしちゃう。


「ぷっ、何それじゃあ私も」


 すぅと息を吸い込み、そして


「私の、ばかやろー---------------!!!」


 私たちの叫びは夜の海がすべてを吸い込んでくれた。


「少しはすっきりした?」

「まぁ少しは」

「後はあなたの行動次第よ」

「分かってるって、何回も同じこと言うのはおばさん化の始まりだよ?」

「は?おば……さん?誰が?」

「……あ」


 これはゆっくりと帰りのドライブでおばさんと言う言葉についてお話ししなきゃいけないわねこの小娘と。


「お、お母さん目、怖いよ?」


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 サタデーナイトをいかがお過ごしですか皆さま。

 私は後書きを書いております。

 くしくも昨日と同じ。


 体調はなぜかすこぶる元気です。

 お昼寝3時間しちゃいました。

 まぁだから書き始めるの遅いんですけ……


 いつも応援ありがとうございます。

 星とか、フォローとかありがたい限りです。

 作品のフォロー数も3000人を超えました!

 あといつも言ってますが、感想とかも拝見してますので、嬉しいお言葉ありがとうございます!!

 早速レビューも書いて下さり作者泣きそうです(´;ω;`)


 ではよい日曜日をお過ごしください。


Ps:なんか予約投稿出来てなかった、遅くなってごめんね




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