第29話 偉大なる母
「お宅のかすみさんと付き合わせていただいてます!今後もよろしくお願いします!!」
俺がそう言った瞬間、真奈美さんの眼が点になった。
「…………かす、み?…………え?えぇぇぇっ!?」
真奈美さんの驚き方はどこかかすみに似ている。
さすが親子。
やっぱ遺伝なんだなぁ。
「えーっと………うん。分かった!」
あ、分かってくれたらしい。
さぁ認めてくれるか、いや認めてくれなくても誠心誠意かすみへの愛をお伝えして認めてもらうまで通うけど。
「巧君」
真奈美さんが真剣な顔でこちらを見つめてくる。
なんか告白したあとの結果を待つ気分だ。
かすみと付き合ったのはある意味流れだったからドキドキとかもあんまりなかったし。
いや卒業の瞬間は挿れるなど、いやでもかすみも初めてなのにあふれ出る優しさで導いてくれたし。
いやでも毎日ドキドキしていると言えばそれはそうなんだけど。
うん、会いたくなってきたな。
でも真奈美さんの顔は酷く真剣で。
そしてその綺麗な唇が答えを紡ぐ。
「もう一回……いってもらっていい?」
「うぇ?」
かすみとの仲を認めてくれるかどうかじゃないの?
いや待てよ?
溢れるほどのかすみへの愛をそんな小さな声で呟いていいのかとそう言うことか!
試している訳ですね、俺のかすみへの愛を。
分かりました!!
全世界に、いやせめてこのカフェにぐらい響くように伝えろということですね。
よし。
すぅぅぅぅうぅっっ?!
「ぼ――「ちょっと待って!!」――はい?」
「今、叫ぼうとした?」
「……はい」
真奈美さんがストップをかける。
なんで?
かすみを認めてもらうには全世界に認めてもらうだけの告白を……
「そういえば忘れてたけど巧君、勉強はできるけどちょっと抜けてるところあったね、うん説明足りなかった、普通に驚きすぎて聞き間違えたと思うから聞かせて?っていったの?カフェの中心で愛を叫ばなくていいから」
「あ、そうだったんですね、てっきり愛を確かめられているのかと」
「なんで告白の仕方が平成初期なのよ、それで?」
優しい笑みで続きを促してくれる真奈美さん。
聖母のような微笑み。
「かすみさんと真剣にお付き合いさせていただいてます、二人の関係を認めていただけるとありがたいです」
「うちのかすみよね?あの」
「はい、お宅の2時間サスペンス好きなかすみさんです」
「……なるほどかすみだわ…………そういえば昔から巧君はかすみの事好きって言ってたわね」
思い出すように眼を細める真奈美さん。
「それじゃあ巧君のお母さんの件とうちの真希の話を聞いて落ち込んでいた巧君を救ったっていうのは?」
「はい、かすみさんです」
良かったさっき身体の繋がり的な話をしなくて。
バレたらはずかしい。
「運命ってあるのかもしれないわね、ううん戻るべきところに収まったとでもいうべきなのかな?……うん今更かすみのどこが好きなのかとかはきかない。お互いに昔から好きだったのは知っていたから、だから一つだけ」
真奈美さんは凛とした目で
「今後かすみを幸せにしてあげられる?」
「はい!……と言いたいところですけど、すいません」
「……というと?」
「まだ就職もしてないので経済的なこととか、かすみさんの生活を絶対に守ってあげれるとは言いきれません。ここで言うのは無責任だと思うので。ですが」
「うん」
「かすみのことを守りたいと、一緒に生きていきたいと思ってます、そしてこう言ったら男らしく無いかもしれないですけど2人で幸せになっていきたいと思ってます。誰かひとりが幸せにするんじゃなくてお互いに。辛い時には寄り添って楽しい時には何倍にもして笑って、そんなふうに2人で歩んでいきたいんです、かすみさんと。…………ど、どうですか?」
真剣に聞いていた真奈美さんがふっと笑う。
「なんで最後自信なさげなのよ……それにしても同じようなこと言うのね」
「え?」
「ううん、前巧君のお父さんにプロボーズの言葉教えて貰ったの。その時も同じこと言ってたから、親子似た者どうしたんだなぁ、って」
な!なに!?
あの社畜と同じ!?
てことは俺も社畜に!?
「ち、父を超えてみせます!」
「ふふっ、それは世の親の願いよ、自分を超えてもらうのは。でもあなたの真摯な気持ちは伝わったわ、かすみのことを真剣に一途に考えてくれているのは」
「はい」
「でも結婚とかはまだよ?ちゃんと責任が取れるようになってから言いなさい。だからひとまずは真摯に二人で歩んでいきなさい、その後のステップはまたその時がきたら、でいいわね?」
「はい!」
とりあえずは認めて貰えたらしい。
良かったまじで。
「でもびっくりしたわ。私は最近真希と仲良くしていたからてっきり真希がって思ってたんだけど」
「どちらかと言うと、妹的に考えてた?ですけど……まあ今となってはそう思ってたのは自分だけだったみたいですけど」
自嘲するように独り言が漏れた。
「うーん、多分真希も騙そうとかって訳では無いと思うのよね、まあ親贔屓が入ってしまうのはあるけどそんなひねくれた子でもないと思う。真希が悪いのは間違いないんだけどね、悪質じゃないというかなんて言うか」
「…………」
「まぁだからどうして欲しいってわけじゃないの、今はお互い落ち着いて考える時間が欲しいだろうからだからここからは私のお願い」
お願い
仲直りして、とかかな?
だったらきついな。
「仲直りして、とは言わない、けど真希の話だけでも聞いてあげてくれると嬉しいわ、お互いに落ち着いて距離をある程度とった上で期間を置いた上で」
落ち着いた時に、話を聞くか。
「話を聞く、なら、」
「あなたが怒る気持ちも十分わかる、わたしは真希の親だけど同時にかすみの親でもあるし。どれだけ2人が好きあってるかも伝えてもらったから、だからどっちの気持ちも分かる」
真奈美さんとしては喜びきれないのかもしれない。
かすみの相手と、自分の娘をふった男。
考えたら親として複雑すぎるっ!
「でも真希も佐倉家の一員だからね、今後結婚とかになったら何かの機会で会う機会もあるはずだから、いつまでもこのままの状況でもいられないでしょ?」
まあそれは分かる。
でも感情的に許せない。
だから落ち着いたら、か。
「こんなとこでいい?ひとまずは」
「はいありがとうございます」
「それにしても私もまだまだねぇ、てっきり真希とだと考えてたけど、でもかすみがお似合いなのかもね、巧君の素を引き出せるかすみに。…………それで〜?盗み聞きしているかすみちゃん、安心した?」
気づいたら近くの席にかすみが座っていた。
隠れるように。
かすみさん?
かすみ?
なんで?
耳赤くなってない!
「そりゃ来るでしょ!心配じゃんお母さんがなんて言うか!」
「あらあら心配症ねぇ」
「あと真奈美がほんとにお母さんか心配で……」
「なーに?実の親に取られると思ったの?愛が深いわねぇ」
ニヤニヤとかすみをいじり始める真奈美さん。
「大好き?」
「大好きですけどなにか!!」
「ふふっ、アツアツねぇ。じゃあ私はそろそろお暇しようかしら」
そう言って伝票を持って出ていく真奈美さん。
「あ、うちの親の件とか真希には言わないでください、言いにくいのですがそこまで信用出来ないので」
「…………そこまで信用を失っちゃったか、でもそうねタイミングが最悪すぎたもんね、分かった心に秘めておく。あと真希の事は私たちにまかせて!それじゃぁね」
そう言って出ていこうとして、Uターンして戻ってくる真奈美さん。
ちょいちょいと俺とかすみを耳を近付けるようにジェスチャーすると小声で。
「…………ちゃんと避妊しなさい?」
そう言ってそそくさと出ていった。
俺もかすみも顔面真っ赤だった。
やはりかすみのお母さん。
勘が鋭すぎる。
これが遺伝か。
ー-------------------------------------
滑り込みセーフ!!
今23時54分。
皆さんが読む5分前にこれ書いてます。
つまり、誤字脱字あったらごめんなさい。
週末の夜来たぁぁ!!
わたくしは濃厚接触者の濃厚接触者かもしれないので、この週末は自宅でゆっくりしようと思います。
いつも応援ありがとうございます。
星とか感想とか大変モチベになってます!
お時間あればレビューなどしてもらえると嬉しいです!!
ではではよい週末を!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます