第26話 告白後には(side真希&真希フレンズ)

聞きたくない答えを伝えて、屋上から巧が去っていく。


「まって……」


行かないで。

待ってどうして。


「ね、ねぇ行かないで?」


普段の巧なら振り向いてくれる。

優しいあなたならこのまま行かないで、振り向いて慰めてくれる。


真剣にお願いさえすれば聞いてくれる。

最後には呆れたように笑って、「しょうがないな」って言ってくれるじゃん……


なんで今日は言わないの?


小さい頃から私が泣いてたら来てくれた。

いじめられてたら、颯爽と助けてくれてじゃん。

1番きて欲しい時にいつも隣にいてくれたじゃん!!


どうして、どうして今日は、振り向いて、応えてくれないの。

今1番あなたを求めてるのは私なのにっ……


「うぅぅぅっまってよぉぉお、話を聞いてよぉぉォ」


嘘じゃない、嘘じゃないんだよ。

私の気持ちは。


確かにかすみ姉さんの件では嘘をついた。

けど、けどさ。

しょうがないじゃん!

そうしなきゃあなたはこっちを見てくれなかったじゃん!


いつもあなたの眼に映ってたのは姉さん。

隣には私もいたのに。


だからチャンスだと思ったの。

あなたの眼に私が映るチャンス。


でもそれが悪かったのはわかる。

それについては心から謝る、全部謝るから!!

だから。


「……さよなら、なんてそんな事言わないでっ!?」


でもそんな私の叫びは巧には届かない。

聞こえているはずなのに。


手を伸ばすその背中がこれまでになく遠い。

たった数メートルの距離がまるで次元を隔てたかのよう。


扉に手をかけ、一度も立ち止まることなく巧は屋上から出ていく。


「待ってよ!」


その声も空しく。


バタン。


巧は私の声に振り替えることは扉は閉まった。


後に残ったのはむせび泣く私と、夜の帳が落ち始めた校舎の影。

どれくらいそこにいただろう。


キィーと音がする。

扉を開けた音。


「たくみ?!」


やっぱり戻ってきてくれたの!

さっきのことは言いすぎたってかえってきて……


そこにいたのは巧。

ではなく


「……沙里、それに亜衣」


それは告白を応援してくれた友達二人。


「……どうしたの?」

「ちょっと前に巧君だけが屋上から出てきたのに真希は出てこないからさ。あまりにも真希が遅いから気になって、さ」


沙里と亜衣の気まずそうな雰囲気からも、告白の結果は分かっているのだろう。

付き合っていたら喜びを爆発させていただろうから。


「ごめんね、応援してくれていたのに」

「う、ううん大丈夫。それより真希は大丈夫?なわけないか」


亜衣が苦笑する。


「大丈夫、恋愛がすべてじゃないし!!」


沙里が励まそうと必死に慰めてくれようとしている。

その気持ちはありがたい。

ありがたいけど。


「っ?!……ごめんやっぱり今は何も言えないっ……先帰る」


それだけを伝え、逃げるように屋上を飛び出す。


今すぐここから逃げ出したかった。

巧との全てが終わってしまったこの場所から。


逃げうように走るように家にたどり着いた。

近くには巧の家。


彼はもう帰っているのだろうか。

今なら今ならまだ間に合うかな?

ふらふらと足が巧の家に向かう。


「……たくみぃ」


会って謝りたい。

会って慰めてほしい。


大事なのは大事だったのは。


「ちょっと真希何してるの?」

「……お母さん」

「真希っ?!」


私の異変の様子に気付いたのか、駆け寄ってくる。


「おかあさんっ……」


涙が込み上げてくる。


「……うえぇぇんんっ」


もう我慢できなかった。

お母さんに連れられ家に帰る。

お母さんは何も聞かなかった。


「大丈夫?!犯罪に巻き込まれたの?」

「ううん」

「そう、なら一安心……ね。でも何かあったのね」


お母さんは一つうなずき、台所に向かう。


「それじゃとりあえずご飯食べなさい。どんなに悲しいことがあってもお腹は空くものだから、そして思いっきり悩みなさい。それで何か相談あったらお母さんでもかすみでもそれこそ巧君でも、誰かに相談しなさい」


そう言って屈託ない笑顔を浮かべた。

その言葉が、その言葉がより真希を傷つける。

そんな相手に嘘をつき続けていたことに、その罪悪感に追われる。

真希はもう何も言えなかった。

シャワーを浴びて部屋に戻る。


早く寝たかった。

一刻も早くこの不愉快な現実から目を逸らしたかった。

逃げたかった。


でも現実は、私を離してくれなかった。


その翌日、真希は学校を休んだ。


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「ねえ沙里、おかしいと思わない?」

「うんそれ思った」


ドアの裏で告白を聞いていた二人は率直に思った。


沙里と亜衣の間では巧があんなに激情を見せるとは思わなかった。

それこそ嘘告白だと知ったとしても。笑って許すと心の広さがあった。


「今までの巧君なら許してたと思うんだ」

「うん、そうだね」

「そんなに許せなかったってことかな嘘告白が」

「何かあるんだろうね、でも正直今の私たちにはわからない、でも出来ることはあると思うんだ」


2人は巧のことはほとんど知らない、精々真希から聞いたことだけ。

でも真希の事なら知っている。

彼女がどれだけ可愛いか。

ダークブラウンに染めたミディアムヘア。

胸こそ標準的だけど逆に美乳とさえいえる。

おしゃれにも気を使って。

それこそ巧にはもったいないくらい。


あの子がどれだけ好きだったか。


「多分誤解があるんだよ、あの嘘告白も名目はそうだったけど、それも踏ん切りのつかない真希を発破するための言葉だとしればまた話は変わってくると思うんだ」

「そうだね、亜衣。もう1度話が出来るように誤解を解いてあげることはしてあげられる、ううんこれは私たちにしかできないと思うの」


沙里はその夜、巧に連絡したがついぞ連絡はかえってこなかった。

そして次の日、巧は放課後にも話をしには来なかった。


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真希と真希フレンズ回でした。

さぁさぁ今後の展開は?!


いつも星とかありがとうございます!!

モチベになりまくってます!!

週刊ランキングもじわりじわりと上がっててびっくりです。

後、感想とかも目を通してます、返せてないだけなのでご容赦を

誤字脱字とか助かってます!!







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