第20話 告白後には
「ふぅ……」
泣き崩れ、縋りつく真希を置いて屋上を去り、そのまま学校を出る。
途中誰かとすれ違った気もするが、覚えていない。
そもそもどうやって自宅に帰ったかすら覚えていない。
ただ茫然と帰った気がする、今までの真希やかすみと真希3人で過ごした記憶を思い出しながら。
三人で遊んだとき。
文化祭で買い食いしたときとか。
何気ない日常。
まぁ今回は流れのままに海にはいかなかったけど……。
存外、人に別れを切り出すというのは、きつい。
それがたとえどんなにひどいことをされたとしても。
告白を振る、関係性を絶縁するというのはめちゃくちゃストレスかかるものらしい。
たまに100人以上の人に告白されて全部ふりました~みたいな話を芸能人とかも時々聞くけど信じられない。
どんなメンタル強者かと、もしくは麻痺しているのか。
とにもかくにも毎回こんな事をやっているのか。スゲーな、世の中の美男美女たちは。
まぁ見ず知らずの人からの告白ならそこまで思い入れもないからまた別なのか、
「まぁ俺に関係ないな……にしてもキッツいなぁ」
かすみさんの時はどうやってこういう苦痛を乗り切ったんだっけ。
あの時はえーっと……
どうしたっけ、あんま記憶ねーや。
シャワー浴びて、ひとまず暗い家の中で動画でも見ながら過ごそうか。
いやその前にとりあえずかすみに連絡か、まだ言わなきゃいけないことがる。
Takumiii:『お疲れ~、もう家~?』
すぐに返信。
かすみん:『ずっと家!』
Takumiii:『ちゃんと講義出れたの?』
かすみん:『うん!!もちのろんよ!!なんてたって天下のオンライン授業。化粧もしなくて楽ちん~』
かすみとの会話、楽しいはずなのに。
でも朝ほどの高揚感はない。
文章にはそんな様子は見せないように気を付ける。
Takumiii:『そっかそっか、よかった心配だったから。朝まで温泉マル秘見てたからさ』
かすみん:『イージーですよこれくらい』
それから他愛もない会話を続け、時には動画を見て、なんだかんだと時間が過ぎ、帰ってきてからもう2時間以上が過ぎ、それでも頭の片隅からは離れない。
かすみん:『で、どうしたの?学校で何かあったんでしょ?』
Takumiii:『え。ええ。よくわかりましたね』
気分が沈んでいるのはそうだけど。
それにしてもなんで文章だけで分かるの、かすみの感、強すぎんか?
かすみん:『……電話でいい?』
Takumiii:『うん』
これもし何かを隠したりなんてつこうものなら一瞬で看破されるんじゃ・・
――Priiiiiiiiiiiii
ありもしない妄想をしたタイミングでの電話に思わず身体がびくっとした。
な、なにもしてないけどね?
そして電話かかってくるのはっや。
『もしもし』
『はーいこんばんは~、朝ぶりだねぇ』
『そうっスね』
『なんかあった?と聞かなくてもある程度予想できるけどねぇ、たくみ今日学校行ったんでしょ?』
『うん』
『真希となにかあったんだよね』
断定系。
もはや疑問ですらない。
まぁその通りなんだけどさぁ……。
やっぱすごすぎないか?
エスパーですか?
はっ、心通じ合ってる的な?
『まぁ昔から見てるからね、ことたくみの事なら分かるよこれくらい、だからこれはたくみ専用』
『なんかえっちぃ』
『なんでよ! 結構いい事言ったつもりなんだけど!!』
『それ自分で言わなきゃいいのにな~』
『素直がウリですからわたし!』
胸をはって、ふふんと得意げにするかすみの顔が目に浮かぶ。
『……どや顔してるでしょ?』
『今鏡の前にいないのでわかりませーん』
『……あれ?今家じゃないの?』
『今コンビニに向かってるのだ~』
あ、今外なのか。
『夜道気を付けてよ、周りをしっかり見て』
『大丈夫だよ、あんたは私のお母さんか!』
『……はは違いますよ、でもかすみにまたいなくなられたら』
もう周りにはほとんど人がいなくなる。
だんだんと俺の周りから人がいなくなる。
父さんは元々ほとんどいないし、母さんもいなくなった。
真希は気づいたら離れていて。
『安心して、私はもうあなたから離れないから』
聞く人が聞けばかすみの心は重いのかもしれない。
でもそれくらいでいい。
それくらい俺を放さないでくれたら、俺も放さない。
それでさえ物足りないと思う。
まだ付き合ったばかりだから余計さみしく感じるのもしれない。
電話だけ出来るだけでも前より全然ましなのに。
かすみに会って、その身体に触れて、抱き合って、貪り合って。
そんなことが先週あったたら今が酷くもどかしい。
次会うのは土日。
まだ4日もある。
時が経てばこの焦がれるような思いは、無くなるのか。
そんなことを思ってしまう。
あぁ今君が隣にいたら……
『知ってる、俺も。 本当は聞いてほしいことがあったんだ。』
『ふむふむ』
『でも』
そしてかすみに会える時には元気で溌剌とした姿を。
『でもなにー?――何も話してないけど、私とくだらない話をしたら元気出ちゃった?』
『ええそりゃもう、エナジードリンクを3本飲んだみたいな元気に!』
『それだと体に悪いじゃない!』
『……んじゃスポドリとか?』
『飲み物の問題じゃない気ような、ニュアンスがなんか違うような、うーむ』
かすみが悩む。
『かすみの声を聴いてたら、話してないのに心が軽くなったのは本当。今から話すけど、後お願いも』
『うんそうして?ってあ。こんなに長電話してて大丈夫? お父さんはいないの?』
『社畜の父なら今週は多分帰ってこれません。『非常に申し訳ない、休みが休みが取れず出張にぃぃぃ』って謝りのラインと土下座スタンプ送ってきましたから』』
『ち、父の威厳が感じられないね』
『そんなのものは当の昔に塵芥に』
『辛辣ぅ』
っとそうだ。
かすみに話したかった内容があったんだ。
『で話ですが、かすみにお願いがあったんでした』
『……ん? 何?』
『真希の件です』
『……真希?』
一瞬間があった。
『ええ、実は――』
今日起きたことを要点をかいつまんで話す。
昔なんで嘘をついたのか詰問したこと、嘘告白をしたこと、そして……それを断ったこと。
かすみはただそれを無言で聞いていた。
『それが沈んでた原因なのかな、人に別れを切り出すってつらいものね? で、私に何をしてほしいの?』
『……真希を叱ってあげてほしいんです』
一瞬の間。
『……なんでたくみがそれをお願いするの?』
『んーなんでですかね、関係性を切りましたけど、でも僕は真希に今後ずっと不幸になってほしいわけじゃない。更生できるなら更生したほうがいいと思うんです、今のままじゃ彼女はダメだから』
『……優しいね?』
『優しくなんてないです、結局これは俺の為。真希はかすみの妹。今後家族になるかもしれないんです。それをあいつが変なことを今後しでかして、かすみが、そしておじさんおばさんが泣くのは忍びない。だから𠮟って、許してあげられるかすみにお願いしたんです。酷かもしれませんが』
『これはうちの家族の問題だもん真希のケアはちゃんとするよ、まぁもちろん散々苛め抜いてからだけど』
『……愛ある鞭ですね』
『……ふふ、私がずっとすきだったのがたくみでよかった』
『……え?』
『あ~あ、いますぐ会いたくなっちゃった……』
『……俺もです』
一瞬しんみりとして、でもすぐにかすみは明るい声で
『だから今度会う時までしっかり溜めておくんだぞ? そしてあったらその時はたっぷりと』
一瞬眼が点になる。
ためる、貯める、溜める……あぁ~。
『いきなり下ネタぶっこまないでくださいよ』
『おばさんしんみりした空気ちょっと苦手で……』
『おばさんジョークですか』
『ああ!ぴちぴちのJDのことおばさんていった!』
『自分で言ったんでしょ?』
笑いながら責めるようなかすみの声。
『分かりました、しっかり溜めて、かすみに吐き出すね?』
『……わーお、自分で言っといてなんだけどそれは怖いネ』
2人してひとしきり笑って。
『じゃまたね?』
『はいまた』
電話を切った。
一気にシーンとなる部屋。
「少し気持ちが軽くなったかな」
じゃぁ浴びてなかったシャワーでも……
ピンポーン。
鳴り響く玄関のチャイムの音
「ん? だれだ? 宅急便?」
なんかネットで頼んでたっけ?
「はーい」
夜も遅いし、配達員さんを待たしたらいけないので慌ててドアを開ける。
配達員さんが立っているはずのそこに立っていたのは……
「…………やっほ、しっかりと溜めたかな?」
さっき通話を切ったばかりの愛しの彼女がそこにいた。
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今日も更新しちゃった(´>ω∂`)
今日はいつも通り巧がメインでした。
やっぱかすみしか勝たんよ。
癒される、こんなお姉さん欲しかったみたいな人は感想ください!
いつも星とかありがとうございます!!
モチベになりまくってます!!
後、感想とかも目を通してます、返せてないだけなのでご容赦を返せるときに……
誤字脱字とか助かってます!!
もし宜しければレビューとかもしてもらえたら嬉しいです。
Ps.今週過ぎ去るのが早いと思うのは自分だけだろうか。
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