第19話 告白の答え(真希side)

「――あなたのことが好きです、付き合ってください」


 私がそう言った瞬間、巧は一瞬驚き、そして次に笑った。

 決してポジティブな意味じゃなくて、くしゃりと涙を流さまいとするかのように、悲しそうに。


「……………………そっか」


 永遠にも思える十数秒が過ぎさり、実際巧が放った言葉はそれだけ。


「……え?」


 意味がわからない。

 喜ぶなら分かる。

 困惑するなら分かる。

 それとももし私に好意を抱いていないのなら、迷惑そうにため息をつくのでもまぁわかる。


 だからこそ分からないの。

 なぜ告白されて哀しそうに笑うのか。

 どこに哀しくなる要素があったのか。


「……なぁ俺のどこが好きになったんだ?」


 ……どこ?

 そんなの一杯ある。


「誰の話でもちゃんと聞くこところ、私の話を共感して、いつでも味方でいてくれるところ、私のことを守ってくれるところ、大人っぽくて同年代の男子とは違うところ、勉強ができるところ、苦手だった運動も気づいたら出来るようになって、それこそ人並み以上に何でも出来てそんなそつなくこなすところが……」


 他にも一杯出てくる。

 私が巧のどこが好きなのか。

 その全てを伝えたい。でもそんなのいくら時間がたっても伝えられない。


 ふと、前を向く。

 熱弁するのに併せて見れていなかった巧の顔を。


 その顔はもう悲しみを通り越して、なんとも言い難い表情をしていた。

 巧はまたうつむき、


「そうか。そう言うところが好きになったのかそうか、ある意味ちょうどいいな」

「……ちょうどいい? 何が?」

「だってそうだろう? 俺がこうなったのは真希、お前のお陰だ。お前の言葉がきっかけでこうなった」


 私のおかげ?

 私がきっかけ?

 かすみ姉さんに振られたあとのこと?

 あのときは落ち込む巧を慰めたりもした。

 その時に前を向いていこうみたいなことを言ったのかな?……あんまり覚えていないけど。


「なぁ聞いてもいいか?」

「……うん」


 なんだろう、なんか嫌な雰囲気。


「俺言ったよな、嘘が嫌いだって」


 言った。

 さっきはさして気にも留めてなかったけど、これから告白するって浮かれてた。


「……なんで嘘をついたんだ?」

「……え、な、なんのこと?」

「かすみさんの件だよ、お前が言う俺が変わったきっかけ」

「…………」


 な、なんでそのことを巧が。

 なんで今になって終わった話を。


「はっきり言おうか、なんであのときかすみさんに恋人がいるなんて言ったんだ? あの時本当はいなかったんだろ? なんであの時あの人はそんなんじゃないよ?って言わなかったんだ? なぁ教えてくれよ真希」


 巧はただただ事実を述べてくる。

 そこに感情はなくただ能面の様で。


 それが余計に怖かった。

 でもだめ。

 屈したら。

 今屈したら嘘を認めることになる。


「そ、それは……そ、そうあの時は私も中学生だったし、いちいちかすみ姉さんの動向なんて知らないわよ!思春期だし」

「そうかじゃあそういえばよかったんじゃないか?」

「もうお姉ちゃんも高校生にもなるし、彼氏できたらな~みたいな話をしてたからそれでいったの!」

「へーそう、俺結構真剣に聞いてたと思うんだけど、それを適当で済ましたんだ、分かった。1ミリも譲れるところはないけどひとまずはそれで置いといてやるよ、一つ目の嘘については」


 一つ目……。


「じゃあ二つ目。定期的にかすみさんのいもしない彼氏の話をなんでしてきたんだ」

「だっているもん!!かすみ姉さんには彼氏が!!」

「へぇじゃあ聞いてみるか?」


 だめだ。

 聞かれたらいないのが分かる。


 ど、どうしよ。

 何か何か。


「安心しろ、別に聞かねーよ答えは分かってるし」


 な、なんでかすみ姉さんの恋人のことを巧が?

 どうやって知ったの?


「昔の知人が教えてくれたんだよ、たまたまな」


 なにそれなにそれ。

 今の今までうまくいきそうだったのに。

 なんでなんでこうなるの。

 全部姉さんがわるいの?


「じゃあ最後」


 最後、最後

 こ、これで終わり。

 これさえ凌げばまた……。


「なんで嘘告白したの?」


 う、嘘告白。

 これは沙里と亜衣しか知らないこと。

 なんでそれを巧が?

 どこかで聞いてたの?


 頭が回らない。

 でもこのままじゃいけないのは分かる。


「朝聞いたときはショックだったね、おれさ~お前とは仲いいと思ってたんだよ」

「……そ、そうだよ私と巧は――」

「――仲いいやつに対してそんな関係性をぶち壊すような嘘告白するか?」

「そ、それは……」


 嘘告白がダメなことなんてわかってた。

 でも、でも!

 今じゃなきゃ言えないっていいチャンスだって、そう思ったから!

 体裁は嘘告白だけど、ほんとの、ほんとの気持ちは――


「俺さ嘘告白とか真希がしなきゃ、真希に何か言うつもりもなかったんだよ、素直に謝ってくれればそれで」

「わ、私が好きだって言ったこの気持ちは嘘じゃ――」

「――でもさお前は告白さよならした。だからその告白の答えを言おうか」


 い、いや。

 止めて言わないで。

 それを聞いたら私たちの関係は。

 この5年間の積み上げた二人の関係がはっきりと……


「へ、返事はいらない、今はいらないから! だ、だからやめて、言わないで!!!」


 私がいくらやめてと叫んでも、涙をこぼしても巧の言葉は止まらない。


 あぁなんで嘘をついたんだ。

 姉さんが悪いんじゃない、すべては自分が。

 全ての始まりはあの時から。


『…………あぁ巧、見ちゃったんだ、そうだよあれはかすみ姉さんの恋人。半年ぐらい前? から付き合いはじめたらしいよ?』


 思い出すのは初めて嘘をついたあの言葉。


 巧の言葉は続く。


「お前が好きだと言った、話を聞くところも守る所も運動をこなすところも全部、ぜんっっぶ!!大人ぶったこの姿は全部!!! あの時がきっかけで変えたことだ。お前は何一つ俺のことを知らない、俺の素を知らない、何を思って生きてたかなんて、努力してたかなんて知らない、しろうとすらしなかった!!」


「そ、そんなことは!!」


「本当はもっと笑いたかったバカしたかった、でもこれは俺が選んだ道だ。それでもいい。でもお前は本当の俺を知っていると思った、だが違った。」


「ち、ちがっ、し、しってるしってるよぅぅぅっ」


「もうお前の言葉を信じらんないんだよ。

――だから答えはノーだ、さよなら真希、仲良くしてたかったよ」


 私の初めての嘘告白は、夕焼けが堕ちると共に明確に否定された。







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 みなさんごめん。

 隔日で更新とかいっときながら更新しちゃった(´>ω∂`)

 


 いやーやっと少し話が進展した。

 お待たせしました!

 やっとかすみさんをだせるぅぅ!

 

 これからも感想等お願いします!!

 時間ある時に返信できたらします。

 誤字脱字とか助かってます!!

もし宜しければレビューとかもして貰えたら我嬉しいです!


 Ps.0時に更新する奴だったから明日なしですフライングゲットってことでヨロ。

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