第11話 長いすれ違い

女性の一人暮らしの家。

現役女子大生のお家。

しかもお呼ばれして部屋には2人きり。

始めて部屋に入るときはドキドキして居た堪れないようなむずがゆいような、そんな感覚だと思ってた。



なのに何故だろう。



「……かすみ?」

「…………な、何かな?」


家の中へと入った俺は予想通りの光景を目の当たりにした。

この惨状を目の前にして、不思議とかすみのことを名前で呼ぶことに違和感を感じなくなっていた。




「……これは?」



玄関近くにまで様々な服やものが飛び散る。

足の踏みどころはないという訳ではないのだがひどく、本当にひどく雑然としている。

だがなぜかほこりとかは落ちておらず女性の部屋らしくすごくいい匂いがするからあら不思議。


いや本当に摩訶不思議。

魔境。はたまた天国。


「いやーほめないでよ~」


そしてなんかかすみが頭をかいて、てれてれしてた。


「いやほめてないです」

「たまに大学の友達が来て最低限足の踏み場を確保してくれるんだけどね、まぁさすがに服とか下着とかは自分でしまうけども。

で、お礼にお料理を作ったりするから、まぁつまりウィンウィンってやつよね」


「……たしかに昔から料理は上手かったですね」


のんのんのん。

とかすみさんは首を振る。


「たくみが知っている私の料理と、今の私の料理のレベルは違うわ!! とくと味わうがよい!!」


「ってことは今日の夜ごはん作ってくれるんですね、ありがとうございます」

「ううん気にしないで~その代わりといっちゃなんなんだけど、さ、その~」


非常に言いづらそうにでも、期待するような目で俺を見ている。


「分かってますって、部屋の片づけある程度やっておきます」

「ありがとー!!」

「……っ!!」


そうだった。

なんだかんだ俺は昔はかすみのおもちゃの掃除とかしてた。

疎遠になるにつれて何とかしてると思ったが相変わらずだった。


かすみがそのまま俺に抱き着いてくる。


ふよん、とやわらかなそれが当たる。

ただ違うのはこの感触とこの関係・


「……あててるんだよ?」


赤面しながらそんなこと言わないでください可愛よすぎるから!

昨日の再戦したくなるじゃないですか。


「……煽らないでください! 今は料理!!」

「ちぇ~」

「掃除しないと落ち着いてできないじゃないですか」

「……やる気なんだァ?」


嬉しそうにはにかむかすみ。


「まぁ私もそうだったけど……」


最後は小声になっていた。


「はぁ可愛いかよ」


「聞こえないようにいって!!」


パタパタと少し顔を赤面させながら台所に避難していくかすみ。


「ふぅなんだあれ可愛すぎか?」


「だから聞こえてるって!! 心の中でとどめておいて!!」


照れ隠しなのか、ちょっと怒気をにじませながら叫んだ。


ふぅ。

掃除して天国に行こうふへへ。


いや待て?


「掃除して居れば不思議と乙女の花園も現れるのでは?」


確かにそうだ。

この雑然とした部屋にだから物を片付ければ間違えてそういったところを開けてしまっても不思議ではない。

開けてしまったついでにおさわりしてしまうのも間違いではない。

普段のかすみのあの大きな双丘を守ってくださっているもの。


「はっ?!手厚く保護せねば!!」


「だから聞こえてるんだって!! このエロがき!! 下着類はそこらへんには転がしてないから、あとそこの棚から2番目に入ってるから開けちゃだめだよ!!」


く、くぎを刺された!! ぐぬぬ。


「……そ、それにそんなにみたいならそういう時にも、み、見せてあげるから、ね??」


台所から顔だけ出して恥ずかしそうにつぶやくかすみ。


「…………」


「……な、なにかいってよぅ」


小声で泣き言をいう女神に俺はたまらず、


「あぁもうだめッ」


無事俺は昇天した。

女神は料理に逃げていった。



無事夕飯はなんだかんだ完成した。

家にあるもので簡単に作られた和風パスタは想像以上に美味しかった。


「これは友達が掃除手伝ってでもご飯食べに来るの分かるわ」


何故かすみさんが生きていられたか納得したわ。


「でしょでしょ?」

「これで掃除出来たら完璧なお姉さんなんですけど、、」

「人間は欠点の1つや2つあった方が魅力的なんだよ?」

「まぁたしかにね」


そこでかすみは一息はくと、


「…………それで?」

「それで、とは?」

「ら、ラブホ?で話してたこと。私に彼氏がいたって話、聞きそびれてから」


なんだかんだラブホでは話せなかったし。

昔は聞けなかったが今なら。


「昔、俺が中一とかのときですかね?見てしまったんですよ、かすみが大人の茶髪で眼鏡をかけた大人な男と出かけてたのを」


「たくみが中一ということはわたし中3か。でもそれだけなら彼氏と言えなくない?」

「うん、だから当時の俺はその事を聞いたんだよ、真希に。」

「真希に?なんで私じゃないの?」

「聞けないよ、聞いてもし「彼氏と今幸せなの×××とか○○○とか最高!!」なんて言われたらそれだけで死ねるもん」


かすみはうーんと唸りそして、


「確かに私でも聞けないね~、うん。本当に軽く死ねるもの、でもその時なら私ちゃんと真希には従兄弟の相談にのってくるって伝えたはずだけど、、」


「…………従兄弟の相談?」


なんだ、そんな話初めて聞いただぞ?


「そう、ちょうどこっちのほうに来てて、彼女のプレゼントを選びたいけど、女の子の意見も聞きたいからって。 今はその彼女さんと結婚して家庭を築いているわよ? ほらこれがその写真」


差し出されたスマホを見れば確かに見覚えのある顔をしていた。歳は取っているが面影はある。

優し気な雰囲気の男性。

その真ん中には子供が抱き抱えられている。


「この人でしょ?」

「うん……」


一瞬ではあったがその姿は脳裏に焼き付いていた。

つまりそうか。


「そっか勘違いかぁ……」


何とも長い遠回りをしたものだ。

ぐたぁと身体から力が抜ける。


「……長いすれ違いだったわね」


かすみが苦笑し、身体を寄せてくる。


「俺が臆病だったから」

「私も怖くて理由を聞けなかった」


2人して顔を見合わせ、ほのかに笑った。

自然と顔を近づけ、そして離れた時間を埋めるように、俺たちは交ざりあった。



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11時半に帰ってきました!

投稿の30分前。


つまり何が言いたいか。

誤字あったらすんません!!


ではではいつもの。


沢山のフォローと応援ありがとうございます。

また★と感想などいただけてありがたい限りです!!。

みなさんの感想にニヤニヤしておりますでへへ。


これも皆さんの応援のおかげです。

ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします!!


ではではまた明日の同じ時間にお会いできたら。

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