第5話 ルルの事
昔からルルは興味が引かれるとすぐに飛びつくような子だった。次々に目移りしては、あれもこれもと欲しがる。我儘ではあるけれど、可愛いから許される…そんな考えを持つ女の子。欲しいモノは何でも与えられて、愛されて当然だと考えているのは、限度を超えて可愛がる祖父母のせいだろうか。いや、彼女が可愛いのは本当の事なのだ。貴族の嗜みとしてはダメダメだったけれど、笑ったり怒ったりとくるくる変わる表情や小柄な身体は小動物のような愛らしさがあって、とても可愛らしく見えるのだ。可愛いルルは周囲に愛される
そんな彼女が遅くなった社交デビューを果たし、
ルルは単純に愛を囁かれている事を喜んでいるようだが、その相手はすべからく貴族派に属する男性だった。家柄を調べればすぐ分かる。派閥の
当たり前だが、当初はバーナー伯爵家もキャメル伯爵家も貴族派が仕掛ける罠や、その悪意からルルを守ろうとした。僕の婚約者だし、キャメル伯爵家だって大事な娘なのだ。悪意ある噂だって消そうと色々奮闘した。だが、肝心の
婚約が破棄される結果になったのは、ルルの自業自得。……なんて、そう想い切れたら、良かったのにな。
「…ルル、僕は」
真っすぐに僕の目を見つめるきみ。
…目以外の事は褒めてくれた事がないけれど。
真っ赤なバラが好きで甘いお菓子も大好きなきみ。
…僕の贈った花はバラ以外彼女の部屋には飾られなかったけれど。
ロマンチックな物語が好きで恋の詩集が大好きなきみ。
…僕の贈った詩はヘタクソだと笑われてしまったけれど。
――それでも、きみのことが、すきだった。
本当に、僕には恋愛運が無さ過ぎる。
室内はまだまだ暗くて、明るい朝は遠そうだ。僕はもう一度寝返りを打つと、ギュッと目を強く瞑った。
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