第12話


「枕営業のコメント、増えてるんだよな…。」


そう、私がVTuberデビューをしてから二週間が経過した今も、枕営業を疑うコメントはなくなっていない。むしろ増えている。


それに、内容もどんどん過激になっていっている。

最初は、枕営業してるの?みたいな疑問系のコメントがいくつかあっただけだが、

今は桃奈咲良は枕営業でのしあがった!といった、断言しているコメントが目につく。


「やっぱり、対策って難しいのかな。」


そう、あの後も小野田さんはいろいろと動いてくれているらしい。

それでもなくならないってとこは、簡単な問題ではないのだろう。


私は詳しくないが、例えば同じ人がアカウントを変えて投稿している、とか。

もしくは集団で同じコメントを投稿するように協力しているとか…。

そういったものなのかもしれない。


「やってません!って言っても信じてくれるとは限らないからなあ。」


配信でやってません、と言うこと自体は簡単だ。でも、それをコメントしている人たちが信じてくれるかは別問題。


そもそも、なにか疑わしいことがあるからそういうコメントをしているのだろう。

私の一言を信じてコメントを止めるとは考えにくい。


それに、もしやっていた場合、やっていたという事実を証明することは安易だろう。

だが、私は本当にやっていない。

やってない事を証明することって、本当に難しいんだな。


「んん。でも、火の無い所に煙は立たぬって言うしなあ。」


そう、なんでそもそもこんな噂があるのかがとても気になる。

もしかしたら、私と似たような名前のVTuberが過去に枕営業をしていた。とか、そういう可能性も考えられる。


「…小野田さんに頼りっぱなしはよくないよね!私も調べよう!」


私が調べてたどり着ける情報なんて、既に小野田さんは調べ尽くしていると思う。

それでも頼りっぱなしは良くない。

私の方でもできる限りの情報を集めてみよう。


そうして私はSNSで検索することを決意した。

SNSの検索は止めた方がいいと助言はいただいているけども、

気になりすぎて他のことが手につかないのもよくない。


…もし落ち込んでしまう内容がたくさん書き込まれていたら、みなかったことにしよう。


私はアプリを開き、検索をした。


ーー桃奈咲良 枕営業


「いろいろ出てくるなあ。」


検索結果にはたくさんの投稿が表示された。

それでも、投稿のほとんどは枕営業なんてするわけがない!という、わたしを擁護してくれるものだった。

否定も肯定も出来ていないのに、こうして私の事を信じてくれる人がいることがとても嬉しかった。


「…この掲示板なんだろう。」


ただ、その擁護してくれているコメントのうち、いくつかに掲示板へのリンクがはられていた。


ーもしかしたら、この掲示板に私の悪口とかそういうのが書かれているのかも。


たしかに、SNSより匿名掲示板の方が、そういうことを書き込む人は多いかもしれない。

ということは、私が求めているような情報はそこにある可能性が高く。


私はドキドキしながらそのリンクを開く。すると、新人VTuber総評、というスレッドが表示された。


少し流れの早い掲示板。

新人VTuber総評、ということをあり、私以外のVTuberの書き込みもあるようだった。


「とりあえず、ざっと見てみよう…。」


投稿が多く、上から見ているとすごく時間がかかりそうだ。

とりあえず私は最新の書き込みから遡る事にした。


「あ、私の事だ。」


私に対する書き込みをみつけ、思わず一瞬嬉しくなってしまったが、内容は私の技術不足を指摘するものだった。


ーーごめんなさい、それは私も思ってます…!もっと努力するので見捨てないで…!


心のなかでたくさん謝る。

でも不思議と落ち込みはせず、もっと頑張ろうという気持ちが大きかった。


引き続き、私は掲示板を遡る。

いくつか枕営業の書き込みは見つけたが、どれもコメントでも見かけたようなものだ。理由を書いているものはなかった。


「んー。これじゃ対策は難しいよね。って、あれ。」


私は一つの書き込みをみて、思わず目を丸くした。


ーー小野田の会社のVTuberはみんな枕やってるからな。

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