第2話
俺は桃奈咲良の配信を食い入るようにみた。
そりゃあ、声だけだったら似ている人なんて世の中には何人もいるだろう。
だが、照れたときに頬をさわる癖や、
考えているときに前髪をつまむ癖
どれもアバターの動きではあるが、間違いなく妹の癖であった。
ただ、直接本人に確認したわけでも、顔をみたわけでもないから、今のところは99%妹ってことにしておこう。
ちなみに妹とは少し複雑な関係だ。
簡単に説明すると、元妹で血の繋がりはない。
両親がバツイチ同士で結婚して、親父には俺、母親には妹がついてきたって感じだ。
そこから10年くらい一緒に過ごし、
俺が大学卒業のタイミングで両親は離婚。
母親と妹は引っ越していったし、
俺もそのタイミングで一人暮らしをはじめた。だから元妹。わかりにくいし、妹であったことは変わりないから、いまだに妹と呼んでいるが。
初めて出会ったのは、俺が12歳で妹が8歳の頃だったか。
割と多感な時期であったが、お互いまだ小学生だったこともありすぐに打ち解けることが出来たし、妹という存在にずっと憧れていた俺は妹をめちゃくちゃ可愛がっていた。
もちろん年齢を重ねるにつれ、可愛がる方法は変わっていったが、妹も反抗期とかなく仲良くしてくれた。今思えば良い兄妹だったと思う。
あ、でも1度だけお兄ちゃんキモイ、と言われた時は本当に落ち込んだ。
理由は聞かないでくれ。俺の宝物が見つかってしまったとだけ言っておく。
そんな良好な関係を築いていた俺と妹だが、やはり両親が離婚しお互いに引っ越してからというものは関わる機会が激減した。
それこそ最初の方はなにかあったらお兄ちゃんに相談するんだぞ!的な感じで連絡をとっていたのだが、仕事が忙しくなったり、妹は大学とバイトで忙しかったりと、なにもないのに連絡をとるということはなくなってしまった。
最後にあったのは二年前。
妹の就職祝いで飯を食いにいった時だ。
まあ、両親の離婚とか関係なく、社会人になって独立した兄妹なんて、みんなそんなもんだと思っている。
-それにしても、どうしてVTuberなんてやりはじめたんだ?
妹はどちらかというと内気なタイプというか、目立つことがあまり好きではないタイプであった。就職祝いで直接会ったときも
その印象のままだった。
だからVTuberをやるなんて想像できないし、正直理由が気になる。
っても、いきなりVTuberやってる?って連絡とるのもどうかと思うよな。
もしかしたら隠しておきたいかも知れないし。
「とりあえず、様子見だなあ。」
どうせ時間はもて余してるんだ。
妹とか関係なく、VTuberの動画をみまくる人生だって悪くないだろう。
「じゃあ、今日の配信はここまで~!
また明日も配信しようと思うから、よろしくね!」
桃奈咲良が締めの挨拶をして、配信が終了する。
俺は残っていたビールを一気に飲み干し、
チャンネル登録をして、パソコンを閉じた。
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