第7話 直前の記憶と心残り
病院の非常階段、舎弟や若い衆数人で降りていると後ろから
「タマァ取ったる!」という怒声。
躱そうとして階段から足を踏み外し暗転。
「あ、起きた?気分はどう?」
視線に気付き目を覚ますと長椅子に横たわっていた…目の前には辻とさっきのゴツい元軍人二人。心配そうに見ていたようだが、
「…最悪」
「ヒッドーイ!」
ギャアギャア言っている二人を無視して起き上がる。
目の前のテーブルに洋服と般若のお面が置いてあった。
「あ、それアンタのよ。起きたらロッカールームへ案内してって頼まれてたの」
「…サイズ計ってないんだが合っているのか?」
「副隊長、目視でだいたいのサイズ分かるみたいだから大丈夫じゃない?」
半ば心配ながらもロッカールームへ案内してもらい着替えてみる。ワイシャツとボタンのないファスナー式の灰色の詰め襟とスラックス風のパンツ、般若面は即座に顔に付けられるように手の届く場所に持っていていいそうだ。
…思っていた以上にサイズがピッタリだった。
「何でサイズが分かるんだ?!」
「副隊長観察眼鋭いからねえ。自分の心配事とかは隠そうとするけど人の心配事とかはすぐ見抜いちゃうのよ」
ま、頼りになるのよあれで。
フォローなのかよく分からない言葉を辻は言いながら第二部隊に戻る。
マリーは机に向かい大量の書類整理をしていた。
「お、着替えてきたか。へー、似合うじゃないか!サイズも良いみたいだな」
「…どーも」
誉められてちょっと照れてしまう。
「じゃ、これが配給のスマホとタブレット。スマホに関しては個人で別にプライベートのを契約も可能だから。配給のは仕事で使うし、ここのアプリを開くと」
死者の情報とか隊員のプロフィールが見られるぞ、と説明していくマリー。
「…個人情報とかバラしていいのか?」
「ここでしか見られない仕様になってるし、ハッカー対策は常時目を見張ってるからな、セキュリティ万全だぞ!」
何故か大いばりで自慢してくる。
「…どうした?何か心配事か?」
なるほど、観察眼は確かに鋭いようだ。
「…残してきた妻が、な」
それを聞いてニヤリ顔でマリーは喋る。
「ふむ、では一つ良い事を教えよう。実は審判の門の隊員は〈間の町ーはざまのまちー〉という天国地獄の中間の場所に住む事になっているんだが、伴侶が亡くなられてこちらに来たら、当人の意志次第だが、一緒に住む事が出来るんだ。そして特別配慮で一緒の時期に転生可能なのだ!」
一応ポーカーフェイスを装っていたが、心の中では嬉しさのあまりガッツポーズを取っていた!
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