第2話 実はちょいとご相談が

 (しかし、地獄行きとはいえ柄の悪そうな連中ばかりだな)

 人の事は言えないが内心そう思って長い通路を歩いていると突然、女性が話してきた。

「ではここで地獄について説明がありますのでこちらの会議室へお入り下さい。閻魔大王様の秘書官の方がいらっしゃいます。すごく怖い方なので気を付けて下さいね」

 長々と歩いていたので多少皆が苛ついている空気が伝わってきていたが、

「暴れたりすると罰として地獄にいる期間が長くなるので注意して下さいねー」

 空気を察して即座に言われた。

 部屋に入ろうとするとまたもや腕を引っ張る人が。

「何の用だよ!」

見ると、ひそひそ声でさっきの女性が話しかけてきた。

「あなたは静かにこちらへ来てください」

そう言われて通路へ戻る。

「俺だけ別か?」

「実はちょいとご相談がありまして。皆の前では言いにくくて」

 言い方が言い方なだけにちょっと期待しつつ表情には出さず、聞く事にした。

「相談?」

「はい。実は」

そこへ通路の向こうから

「マリィー! 会いに来てくれたのかー!?」

と、男が走ってきた。

その勢いに度肝を抜かれたがマリーと呼ばれた女性は平然と、

「なに職場を離れてんねん! 仕事に戻らんかー!!」

と言いながら男が向かってくる勢いを利用して投げ技を繰り出す。投げられた男は遠くへ飛んでいってしまった。

「…さあ話を戻しましょうか」

「いや今の投げた奴大丈夫か?!」

「あー、いつもの事だし丈夫だからOK!」

笑顔で親指立ててOKポーズを取られたのでこっちも、

(まあ良いか)

と思う事にした。その場の雰囲気に流される事も大事だろう。

「では本題。あなた、あの世の滞在時間が長くなるのでこちらで働きませんか?

福利厚生、住宅手当諸々メリットがありますよー。どう? 悪い話じゃないでしょ?」

ニコニコしながら言ってきた。

…相談って、職業のスカウトということなのか?!


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