春の章 出会いと始まり

第1話 ようこそ死後の世界へ

 目を開けると荒れ地に立っていた。周りを見渡すと様々な人種がいて、皆前方を見ている。

「はーい、注ーもーく!」

 前方から女性らしき大きな声が聞こえた。

「こちらで今から天国、地獄への振り分けをしまーす!まずは信仰する宗教ごとに建物がありますのでそちらへお進みくださーい!」

「無宗教やその他の宗教の方はこちらの建物へお進みくださーい!

…えっと、これだとあちらの門へ進むとそちらの担当者。まあ死神さんがおりますので。はい。黒装束の着物なので分かりやすいですので」

 声の主を見ると、褐色の肌の20歳前後の女性がテキパキと人を振り分けている。他にも担当している者がいるようで女性と似たような格好をしていた。

 が、よく見ると額や頭に尖っている物が付いている者も。

(あれは…鬼!?)

 そこでようやく自分が死んだ事を思い出した。

「あ、あなた! あなたはこっちですよー」

突然女性に声をかけられ腕を引っ張られた。

「な、何をしやがる!」

腕を振り払いつい声を荒く言ってしまった。

「いやー、そこでボーッとしてたので人にぶつかると危ないですから」

そう言いながらタブレットをいじる女性。

「あなたは…そうそう現世でヤクザでしたね。じゃあこちらです」

そう言いつつ腕を引っ張る。今度はしっかり捕まれて振りほどけない。

「じゃあこちらの時計を身に付けて下さい。転生、生まれ変わるまでの時間が刻まれます」

そう言われ時計を渡された。身に付けると無色だった物が黒色に変わり時間が表示された。が、通常のとは違うようだ。

「こっちのYが年数、Dが日数を表しています。まあ一応の目安なので」

 説明しながら他の連中がいる場所まで連れて行かれた。

 皆強面ばかりだがプライドがあるので怯まず睨むと女性が「では地獄まで案内しまーす」

と前方の通路へ進行していった。

 (地獄の鬼とバトルするのも悪くねえな)

ハナから天国に行けるとは思っていたかったので大人しく付いていった。

まさかこれが波乱に富んだ死後の人生になろうとはつゆにも思わなかったのだが。

 

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