第20話かんがえない




 やーっと落ち着いたぜ。


 気にする暇はなかったが、良く見ると、奴隷達は長い耳を生やしている。


 最初、どこかのエルフか? と思ったがあまりにも肌が白い。それに瞳の色があかい。


 ダークエルフだ。

 魔法を使った女が立ち上がり、口を開いた。


「助けて頂き、感謝だっ。私の名はイリス……お前達は、いったい何者だ?」


 ゼフィーは俺より一歩前に出て、偉そうに胸を張る。


「ふっふっ。よくぞ聞いた小娘。わらわはゼフィー。まりゅっフガッ」

 俺はとっさにゼフィーの口を押さえた。


 今、言おうとした?


 勇者と魔竜が愉快にピクニック中ですーとか?


 やめてくれっ。

 討伐されたはずの魔竜が、ここに生きてますーってさすがにいえないでしょ。


「お、俺はアルス。俺達はー……あ、あれだ。えー、竜を神と崇める信者だ。普及させる為、各地を回っている。こいつはゼフィー……えーとっ。そぅ、こいつは竜神の巫女だ」

 

 ゼフィーは違っフガフガ言っているが、大人しくしてくれっ。


 こんな話じゃ、なかなか厳しいか?

 こーんな道もない森で、普及活動はおかしいよねー?


「そうか、何よりも助かった」


 えっ?

 そうか? 疑問にならない?

 こんな森の中に美男、美幼女ペアだよ?


 まぁ通じたのは何より。

 俺のずぶずぶ設定いけちゃったよー。

 


 あっ。センスっ。

 これがおとーさんの……あっセンス。


…………。


「イリス、取り敢えず話は後だ。もうすぐ日が暮れる。さすがにこんな森の中じゃ危険が多すぎる。そこで、この近くに廃村あるんだ。よかったら、そこでゆっくり話をしよう」


「わかった。本当に助かる」



 悪徳商人の死体から、拘束具のカギを取り出す。


 燃え尽きてたらおじゃんだったが、カギには魔力が込められていて問題はなかった。



 ダークエルフ達の拘束具を解いた後、俺達は廃村に向かった。

 奴隷となっていたのは全部で八人。

 全員がダークエルフだった。



 ゼフィーにはこれはお前と俺の為だと伝え、ゼフィーには申し訳ないが、しばらくの間、巫女の役を演じて貰うこととなった。





 …………そぅいや。

 ダークエルフってエルフじゃないから、魔族じゃね?

 大丈夫か俺?


 いや、うん。


 考えないでおこう。

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勇者は村長になりました?ツッコミと妄想は銀河の味。まともな奴は、俺だけか? 片也 @katanarikata

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