第18話親玉だーれだっ?


 目の前には大、中、小のハゲ悪党だ。

 


 俺の第六感が告げている。

 大ハゲが一番の親玉だと…………。


「子連れ? だっ、誰だっお前は?」


 フム。子連れと勘違いしたか。

 なら、それにのってやろう。


「俺か? 俺は……この子の…………パパンだ」

「パパン? 聞いたことない名前だ」


 違います。何でこの子の、が聞こえてないの?

 ちょっと噛んだだけです。

 パパンなんて俺も知らん。


「運が悪かったな兄ちゃん。見てはいけない物を見ちまったお前は、死んで貰うぜぃー」


 見てはいけない物は深夜の夫婦だけにして欲しいねー。


 ハゲらはニヤニヤと薄ら笑い、それぞれ剣を抜く。


「おいおぃ、ちょっと待ってくれよ。子供がいる前なんだぜ?」

「死ぬのじゃ」

 ドヒュンッ。


 ゴウッーーー。

「アギャーーーーー」

 悪党の中ハゲは、燃えながら倒れた。


 やれやれ、俺のベイビーが火を吹いちまったぜ。

 

「なっ、何なんだお前らは」

「命の恩人じゃっ」

 ドヒュンッ。ゴウッーーー。

「ビギャーーー」

 悪党の小ハゲも、断末魔と共に倒れた。


 いや、命の恩人言いながら殺戮さつりくしてますよ?


 残るは悪党の大ハゲだけだ。

 俺は何もしていないし、最後は、このパパンが良いところを見せねばっ。



 悪党の大ハゲはすっと両手を上げる。

 そして、持っていた剣が地面に刺さる。


「たっ頼む。こ、殺さないでくれ。降参だ。降参する」


 まぁ、戦力でも人数でも負けてたら、そうなるか。

 俺の活躍の場は、次の機会だな。

「わかっ――」

「うるさいのじゃ」


 ドヒュンッ。

「グジャーーーー」

 ドサッ。三人目の死亡を確認。


 うん。何かね、そんな気がしてたよ。俺。



「お、お前達、そこを動くなっ」


 振り向くと、奴隷の首筋にナイフを向ける男がいた。

 男の見た目は小綺麗だ。こいつが親玉か?


「お前ら、こいつらの仲間だな? いいか、一歩でも動けばこいつの首を切り裂くぞ」


 さあ、どうする?

 いくら俺が速くても、ゼフィーをおぶったままでアイツを殺るのは無理だ。


「何を言っておるのじゃ。一歩でも動けばお前を燃やしてやるのじゃ」


「ははっ、冗談を…………」


 俺も冗談だと思いたい。でも…………。


「いや、あんた逃げた方がいいぜ。こいつは一人、二人死のうが何とも思わない」


 ゼフィーは手のひらを相手に向けている。


…………。

……………………っ。



「お前ら、今度会ったら、ピーーーーで、ピーー、その後でピーーしてやるからなー」


 耐えきれなくなった男は、何か叫びながら逃げ出した。

 安心したのか、奴隷はその場に座りこむ。


「動いたのじゃー」

 ドヒュンッ。

「ハグァーーー」

 親玉の撃墜を確認した。


 俺のせい? 俺が逃げた方がいいと言ったせいか?

 なんか、うん。ごめんな。

 グッバイ。また会うことはなくなったね。



 なんか、俺達の方が悪党ぽくね?

 いやいや、まぁまぁ、何にせよ終わった。


「ゼフィー、俺は疲れたから、一回下ろすぞ」

「わかったのじゃ」



 俺の背中がやっと軽くなった。その時だった。


「お、お前達、そこを動くなっ」


…………。


 今さっきその台詞聞きいたぞ?

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