第17話あがめーん
俺はゼフィーを抱えたまま、身をかがめていた。
嫌な予感が的中していたようだ。
馬車が停車している。
こんな森の中をよく歩かせたものだな。
馬車の中には、腕と首に拘束具をはめられた人が座っている。
隙間からでは、顔までは見えない。
だいたい奴隷は十人くらいか?
周りには武器を持った男が三人。
ハゲは悪党の特徴ですか?と問いたいが今はやめておこう。
ハゲらは野営の準備を始めていた。
おいおぃ。奴隷商人かよ。森を抜けて国を出る気か?
さて、どうやって助けるか……。
「アルス何をしておるのじゃ、二十人もおらぬ、全員殺して食べ物を奪うのじゃ」
お前、もとあがめられてた者として、全員ってその発言はどうなのよ?
グレてしまったのか?
ヘイへぃ兄ちゃん、いいもん持ってんじゃねぇか的な?
「ゼフィー、殺すのは武器を持ったあの三人だ」
「なんでじゃ?」
俺が言いたい。その言葉、俺が言いたいですー。
…………。
「あの三人は悪党で、馬車の中の連中は奴隷として捕まっている。考えてみろ、助けた連中が、命の恩人であるお前を崇めてくれる可能性は十分あるぞ」
「なるほど、わかったのじゃ。なら早く助けに行くのじゃ」
「だから今、それを考えてるのっ」
ヤベッ、声が大きかった。
「誰だっ?そこに誰かいるのかっ?」
悪党三人がこちら側を見ている。
誰もいませんよー。ちゅんちゅん鳥ですー。
…………。
「聞いて驚け、そして崇めよ、わらわは魔竜、魔竜ゼフィーじゃー。命の恩人じゃー」
ちがーう。そんな声を張り上げて言うんじゃない。
まず、命の恩人にすらなってないよー。
俺の耳がキーンとなってるよー。
悪党に崇めて貰えなんて俺、言ってないよね?
なんでこっちから自己紹介してんの?
バレてもなかったのに。
俺の背中の幼女様はまた記憶喪失か?
でも、いきなりの謎の幼女ボイスで悪党は少し困惑しているようだ。
ある意味、聞いて驚いてくれたね。
よかったねゼフィー。
「でっ、出てきやがれっ」
もぅバレてるし、出て行ってやるか。
やれやれ、ノープランだぜ。
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