第10話ポッチャムキャミン

 夜営とは男の子のロマンが詰まっている。

 盗賊や魔物を除けば、焚き火の火を見つめながら何も考えない時間もいいもんだ。

 あの厄日から数日、金もなく夜営続きだが、悪くはない。


 今日のご飯は取れたてのダークバード二匹。大の大人が五人分程の大きさである。



 さぁー、今夜も始まります。

 チキチキーパーリィーナイト。


 まずは忘れちゃいけないこの方、アルスの登場だぁー。

 ヘィ、キャモんピーチガール、俺のビーナス、そして――。


 …………。



 突然、俺の横を馬車が過ぎたと思ったら、こちらへ引き返してきた。


 なかなかふっくらした体型をした男が馬車からこちらを観察している。

 貴族ではないが、それなりに綺麗な服装をしている。


 お前も、今夜のパーティーに参加したいのかい?

 招待状はあるのかい?坊や。


 「こんばんは。夜営ですか?すみませんが、そちらのダークバードを見せて。……いや、頂けませんか?」

「はい?ダメです。これは私のご飯デスヨ」


 いきなり何言ってんだ。

 突撃ごはんか?突撃夜営ごはんなのか?

 うちはお断りしてますぅ。


「申し遅れました。私の名はポッチョム。しがない商人でして、そちらのまるまると立派なダークバードを売って頂きたいのです」


「悪いなポッチョムさん。こいつは売りもんじゃないんだ。俺の今日のご飯なんだ」


 ベイビー。とっととママの所へ帰んな。

 今は大人の時間だ。


「なるほど。でしたら、羽を売って頂けませんか?」

「羽?」

「はい。高値で買い取らせて頂きます」


 へへっ、ダンナ人が悪いぜっ。

 危うく、俺の突撃ダンスを披露する所だったぜ。



 ポッチョムさんから借りたナイフで魔物を捌いていく。


「アルスさんはどちらまで行かれるんですか?」


「バッカンの森までちょっと用事がありまして」


 国を逃亡する為とは言えないよね。

 犯罪者だと思われたら通報されちゃう。


「では、私の馬車で近くまで乗せて行きますよ。森の中までは行けませんが、私もそちら方面に用事がありますので、これ程の魔物を倒すお方、護衛も兼ねて頂けると助かります」


 えっ?

 キャミソー??じゃなかった。神サーマ??


 助かるぅ。何でそんなにやさすぃの?


 もしかして、俺をおもちゃに…………。

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