第9話あばよーぐっばいん

 とある酒場にて。

 兄ちゃん、ご注文は?

 アツアツを一つ。


 はいよぉっーアツアツいっちょー入りましたぁー。

 なんなら収納魔法ポケットに入りましたァ。

 あっりがとうぅございまーすぅ。


 はいっ、やめて。


 ミーナがポンポンと軽く肩を叩く。

「アルちゃん、大丈夫。時間が経てばまた使えるから」


「良かった。どれくらいで使えるようになるんだ?」


「あの魔法で魔力を半分くらい使った。だから、1ヶ月、くらい?」

 …………長くね?



 さてさて、どうしよう。

 さすがにマリアンをここに置いていく訳にはいかないし、起きるまでの間にまた騎士達に囲まれても面倒だ。


「ミーナ、もう帰る。マリアンは騎士に頼んで、街まで運んでもらう。」


 ……帰る?

 あなたが騎士に魔法まで打ち込んで、一番罪が重い気がするのは俺だけか?

 あなたが紛れもなく、一番トラブル引き起こしたよね?


「アルちゃんは街に戻れないし、私一人で問題ない。何より……家に帰りたくなった」


 何そのホームシック発言。


「大丈夫。私がこの危機を救ったと伝える。それに、もしバレて困ったら、アイツを呼ぶ」


「アイツってもしかして、テンションが異様に高い、闘士とうしのアイツ?」

 ミーナはこくこくと頷く。


 悪くはない案だが、それでも帰るのはまずくないか?と思ったらミーナはいつもより大きな声で騎士を呼ぶ。


 お兄ちゃんはもう知らないからな。

 牢獄に入れられて、違うものを入れられてもお兄ちゃんは知ら……その時は、絶対助けに行くからな……。



「マリアンが起きたら、俺の金は1ヶ月後くらいに戻してくれと伝えてくれ」


「わかった。アルちゃんはこれからどこへいくの?」


「バッカンの森を抜け、この国を出る」


 ミーナは最後、グッジョブのポーズを取り、俺は、街とは逆に暗闇を走った。

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