第6話えぇーご町内のみなさまぁーファイヤーボールにご注意下さい

 日は落ち、装備していたマリアンをおんぶし、身を潜める。

 マリアンは全く起きる気配がない。まるで屍のよ……。



 暗黒と言って言い程、今日は暗い。

 暗くてバレないのは助かるが、代わりに見通せない。


 騎士達の巡回する足音。あまりにも数が多いので、城内の騎士も来ている事が推測される。



「やっぱり、アルちゃんとマリアンの魔力の匂い。何してるの?騎士さんが、マリアンを探してるょ」


 背後から流れる声はどこかゆるい。

 闇から、人が姿を表す。小柄な人だ。


 段々と見えてくる風貌。


 魔法使いらしい使い込まれた黒のローブ、

 黒の三角帽子を身にまとい、

 肩まである黒髪、だるそうな黒目、

 四色ブラックの知った顔だ。


 4Bのミーナ。


 魔道学校四年B組、あるいは、ある国の筆と間違えそうだが、通り名だからしかたがない。

 

 もし、ミーナが男だったら…………Bだマンだ。



 ミーナは戦友である。

 魔法の知識や魔力はこの国随一であり、その才能は勇者と共に戦える程だ。


 ただどんな時も、動じない、体力ない、帰りたいの帰宅特待生である。


 自分の唇に人指しを当て、シーッと合図を送り、ミーナはこくこくと頷き、簡単にこれまでの経緯を説明をする。


「マリアンが起きてさえくれれば、事は収まる」


「わかった。ミーナ手伝う」


 ミーナは俺の背で寝ているマリアンの頬を、ペチペチとを叩き出す。


 痛そうではないが、止めようとすると、

「やっぱり。魔力がすごく乱れてる。これはおそらく精神的な物が原因。たぶん、今日は起きない。」


………。

 嘘だピョーンって言って魔法使いミーナ。

 嘘だと言ってま、ま、魔……マミー(略)



 ここで頭脳明晰勇者、重大なる事に気づく。

 ハイッ、今ピーンッと来ました。


 マリアンじゃなくても、ミーナに、俺が元勇者だと証人して貰えばいいじゃん。


 焦っちゃってごめんねぇ。


「ミーナ、俺を元勇者だと騎士達に証人してくれないか?俺が元勇者だとわかれば事は済む」


 ミーナは、こくこくと頷く。

「わかった。大丈夫。」


 ヨシッと気合いをいれ、騎士の灯りに向かっておーいと声をかけるが、遠い。何より、暗い。


「ミーナ、騎士達の所まで、足元を魔法で照らしてくれるか?マリアンを背負っているから手が使えない」


 ミーナはまた、こくこくと頷く。

「わかった。大丈夫。」


 おぉーいともう一度言うと、騎士達は気づいたようだ。

 灯りが近づいてくる。


「ミーナ灯りを頼む」

 こくこく。

 ドヒュンッ…………。

 音と共に火の玉が駆けた。


 わぁー目の前が、すっかり明るいなぁ……さすがミーナ。

 海。騎士達の前に、火の海が広がってるね。


 ミーナさんを横目で確認する。


 俺が頼んだのは足元を照らす灯りだよね?

 攻撃魔法なんて頼んでないよね?

 なーに、一人で手配者ランクSにしようとしての?



 瞳で訴えてみたが、ミーナは気にしていないようだ。


「間違えた」

……以上。


 騒ぎを駆けつけた騎士達が集まって来る。

 足音も近い。


「ミーナ、俺は逃げるぞ。もう騎士に何を言っても信じて貰えそうにない。このまま街を抜け、ほとぼりが覚めるまで身を隠す。明日以降、マリアンが目覚めれば状況は間違いなく変わる。お前はどうする?」


「アルちゃんと、行く」

 頷く。

「わかった。反対側の道から進んで門を出よう。ミーナ、暗いから灯りを頼む。今度は集中して、間違っても人に向けるな」


「わかった。今度は本気でやってみる」


 俺達はゆっくりと歩き出す。

 ミーナは集中している。今度は無詠唱ではなく、詠唱している。

 暗闇を歩き続けるが………。

 それにしても長い。詠唱が長ーいよっ。


 不安だが、ミーナは詠唱を終えた。


 パーッと街全体が明るくなり、空を見上げる。


 おかしいな、夜なのに太陽が見えるよ。

 まんまるなお月様と思ったら、まんまるなファイヤーボール。

 ボール………じゃないよねこのサイズ、巨大な岩石か隕石?


「ミーナ、これ、落ちてこねぇだろうな」

 ミーナはこくこくと頷く。


「大丈夫。今の所」


 デッドワード入ってるじゃねーか。

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