第5話これを装備しちゃダメでしょ
俺の声は、教会内に響いた。
おかしいな。今俺、すごく、物凄くかっこよかったよね?勇者様ここにアリって感じだったよね?
騎士は動じること無く、剣を構えている。
集中して聞いていなかったのだろうか。
剣先を見て、あれっと思う間もなく、目の前の風景がかわる。
肉体にピッタリとフィットしたシャツを着た、筋肉質な男女。
「ワーォ、良く切れそうな剣だねハニー」
「ええ見てダディ、今日紹介する剣、これ一本でなんと、スライムから魔神、人間だってスパッと気持ち良く切れるのよ」
「なんだって!?そりゃー女神様もビックリだ」
「私でも斬れちゃう所を、今からあなたに見せるわ。
これを見たら、ダディ、あなたは必ず欲しくなるはずよ」
「そして、あ、な、た、が思っているより」
「安いはずよ!今ならなんとこの―――」
止めろ、止めろ、俺がわーぉだよ。
男女共々ウィンクまで再現しやがって。
極度のストレスのせいか、剣の実演販売を見てしまっていたようだ。
隙ありッと騎士が剣を振るが当たらない。
避けつつ後ろに下がる。
騎士達と僅かながら距離が開ける。
マリアンの所まで下がれた。
マリアン、すまないが人質として、盾にさせて貰う。
マリアンの首根っこを左手で掴むが、彼女はまだ熟睡している。
気持ちの良いピロンッと言う音と共に音声が聴こえる。
「ステータスが更新されました」
装備「聖女の盾」
防御力+2
特殊効果
聖女を傷つけてはいけません。
……マリアンの身を盾として「装備」……していた。
人様を装備って、物扱いっておかしいよね。
神聖な名前だけど、「聖女の」じゃなくて「聖女は」だよね。
まず、特殊効果ではないよね。いけませんって誰の言葉よ?
防具屋で、新作の聖女入りました、って売ってる店なんて見たことないよね。
騎士達が聖女様を放せと言っているがお断りだ。
聖女の盾のお陰で、騎士達に動揺が見える。
「聖女の盾の特殊効果発動。聖女様を、傷つけてはいけません」
盾にしてもいけません。と自分にだけ言っておこう。
騎士達の合間を縫いながら走り抜ける。
「えぇー。こちらの聖女様がめにはいりませんこと?ふふっ」
卑怯とかの罵声が飛ぶが、大人数で来ようとしたお前らもまた、卑怯なんじゃいぃー。
聖女の盾を装備し、元勇者である俺の速さについてこれる者はいない。
騒がしい教会を後にした。
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