第6話
「棘の衆」6
フジ子と学校へ行くのにも慣れて当たり前になっていた。食事は志保母が作ってくれて三人、たまに志保もいて四人で食べた。この生活が当たり前に感じている。
雪ん子が飛び始める頃ー。
ウシトラは一人で図書館へ行ったー。
銀杏並木を歩いている前に高田が立っていた。
「ウシトラ君だよね」
「はい…」
ウシトラは直ぐに誠真会の高田だと解った。
「大事な話がある」
「……」
ウシトラは高田の後へ着いていった。
高田は煙草を加えてベンチに座った。
「今、君が暮らしている所と周りの人が何者なのか知って居るかい?」
「……知っています」
「なぜ悪魔達と一緒にいる?」
「悪魔なんですか?」
「そうだよ…平和に暮らしていた我々の先生と誠真会を壊滅させたのだからね…あの惨劇は今は無かった事のように世間は感じている!先生は自分が死ぬことを解っていた!だから殺されるのを覚悟で公会堂で皆に伝えたのだよ。俺にも君にも先生の魂が宿っている!一緒に先生の意志を受け継ごうではないか?」
「俺は……このままでいいです」
「なぜだ?洗脳されたか!」
「いえ…でも、解らないですがこのままでいいです」
「今の生活が続くと思うな!必ず変化するぞ」
高田は立ち上がってウシトラに名刺を渡した。
ウシトラは高田のウシロスガタを見送ったー。
世田谷の元住んでいた家の前に来た。売り家と書かれた看板がある。
ウシトラは看板を乗り越えて家に入った。母が手入れしていたガーデニングは荒れ果てている。二階の自分の部屋の窓には破れたカーテンが見えた。全ての扉は鍵がかかっていて中には入れなかったー。
「司令!北東ウシトラが高田と接触しました!高田は再起を誘ったが北東ウシトラは断ったようです」
「そのまま監視しろ」
司令部はざわめいた。
フジ子はいつも通り屋上で昼寝しているー。
志保は駅前のスーパーですき焼きの材料を買っているー。
志保母は韓流ドラマを観ながら泣いている。
泣きながら嫌な気配を感じた。
振り返ると三人の男が立っていた。
志保母はテーブルの下に忍ばせてある刀を抜こうとしたが先に背中を刺されたー。
ウシトラは夕陽を観ながら家路を歩いた。
なぜ人間は争うのか、なぜ人間は自分の思想を他人に教え込むのか、果たしてそれが平和だと言えるのか……誰しもが平和を望むが故に争い悲しみが生まれ憎しみ合い殺し合う、全てにおいての共通点が平和を望んだ結果である。
平和とは何なのか…。
雀がチュンチュン鳴いているーそれを猫が捕まえてしまう。しかし、雀は羽ばたく前の芋虫を食べるー。
平和とは……。
真実を知った上で認め合う事では無いかー。
志保は遠くに燃えるアパートに気付いて走っている。黒い煙が辺りを包んで木造のアパートを渦巻く炎が焼き尽くしている。
消防隊員達も為す術無く呆然としている。
志保が到着した時にはアパートは全て崩れ落ちていた。
「こちら“え”です。本部どうぞ……」
「高田と数人の殺戮者が陰者狩りを始めている。各地で同志が襲われている。内部にスパイがいると思われる。よって、ハッキリするまで各自の判断で行動せよーこの通信は以上で破棄する」
志保は学校へ向かった。
フジ子は寝過ごしていて夕陽の眩しさで目が覚めた。
「おかしいなぁチャイムが鳴ってない……」
フジ子は校庭を見下ろした。
そこには生徒達がバスに連行されているが見えたー。
つづく
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