第4話
「棘の衆」4
“う”三人死亡ー遺体は警察が回収する。
“あ”“い”“え”は合流した。
毒ガスによる集団自殺、武器を持つ子供達をみて気が狂いそうになるものが数人いた。
“あ”の隊長レンが戦意を失った者達を蔵まで撤退させた。
残ったのは五人であった。一つの小隊として指揮を実績のある“え”の志保に任せることにした。
「新たに“お”にする」
「了解!しかし、今回の任務はお前を救出することであり誠真会の解体では無い!機動隊の突入と共に撤退せよ」
「了解!です」
志保は部隊全員の脱出経路を確保するために少し離れたボイラー室に移動した。
その頃、正面では機動隊の突入が始まっていた。
幾度となく爆発音がして銃声が激しくこだましている。それにに紛れてありったけの煙幕を裏庭周辺に舞いて、蔵の仲間と合流して林の中へと撤退したー。
一ヶ月後ー。
事件直後は誠真会事件としてマスコミが大々的に報道したが、今は何処のマスコミも報道しなくなった。
犠牲者はゼロ、怪我人多数とだけ報道された。
実際は犠牲者235人、怪我人45人である。犠牲者の中にウシトラの両親も入っていた。
フジ子は屋上で昼寝をしている。
そこへウシトラが煙草を吸いに来たー。
フジ子は感じたことの無い気配を感じて飛び起きた。
「だれ?」
「あ、ごめん…起こしちゃったね」
「だから、アンタはだれ?」
「何者でも無いよ」
「名前は?」
「北東ウシトラ」
「なんで三家以外の者がいる?」
「煙草吸ってんだから質問ばかりするなよ」
「ここがどんな所か知ってるの?」
「知らねぇよ!連れて来られたんだもん」
フジ子は少し身構えている。目の前にいる同世代の男の子からは悲しみや孤独感、憎しみ、憎悪が感じられるのである。
「フジ子!」
久しぶりに聞く声がした。
振り返ると志保がいた。
「志保姉!」
フジ子は志保に抱き付いた。
フジ子は両親が死んだ後に志保の家に預けられたのである。志保の母親が二人を姉妹のように育ててくれたのである。
「あの子はウシトラ君、命の恩人だから特別に連れてきた…こないだの件で両親を亡くしたの…」
「誠真会の?」
「そう」
「大変だったね…」
「うん…それと、これからフジ子はアタシと同じ部隊に入る事が決まったよ」
「は?なんで?」
「アンタさぁ…夢に疋田大次郎を見たんだって?」
「うん」
「疋田大次郎は誠一様の弟で陰者の祖の御子息…でも、衆への情けを感じて陰者を抜けたの、でも感性に特別なものを持っていて衆の悟りを開かせなくさせる研究をしていたとされてる」
「そんな事出来るの?」
「出来たらしいよ…でも、それを誰も知らないの…あんたがそれを知る鍵になるかも知れないと言うことでアタシと同じ部隊でアタシと共に行動すると決まったの!そして最初の任務はウシトラ君の友達になることよ!」
「え?なんでそれを今言うの?本人聞こえてるじゃん」
「別に隠し事じゃないからいいじゃん」
「お前ら何言ってんの?」
ウシトラは煙草を捨てて屋上から去って行った。
つづく
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