第3話

「棘の衆」3


 ウシトラは両親と共に誠真会の本部へ入った。

 峠道には警察車両とマスコミ各社が大勢いて空にはヘリやドローンが飛んでいる。戦争でも起きるのでは無いかと言う物々しい雰囲気であるー。


 誠真会本部内でも武装した信者達が星印の入った鉢巻きをしている。

 ウシトラの両親も建物に入るや否や直ぐ鉢巻きをして武器を持っている。平凡な生活をしていたのに、平凡な父親と母親だったのに鬼の形相で目が血走って手には武器を持っている。ウシトラはその空気に吐き気を覚えてその場から離れた。

 裏庭まで来て嘔吐したー。

 そのまま煙草を加えて蔵の中へ入った。

 真ん中に大きな桶がある。味噌とか醤油でも作ってるのかと思った。


「誰かいるの?」

桶から声がしたー。

 ウシトラはビックリして煙草を落としてしまった。

「桶の神様??」

「違うよ!ただの人だよ」

「なんで桶に入ってるの?」

「遊んでいたら蓋が閉まっちゃったの…助けて!」

「誰か呼んでくるよ」

「だめ!!」

「なんで?だって私は誠真会の人間じゃないから!」

「そうなの?」

「少し降った町に住んでて探検してたの」

「そっか……どうすれば蓋はあくかな?」

「此処は施設の何処になる?」

「蔵だよ。建物の裏庭にある」

「それだけで良いよ」

「え?」

ウシトラは何だか解らなかったが……。


 次の瞬間ー理解した。

 ウシトラが此処の場所を言った途端に四人の武装した部隊が蔵に押し入ってきた。ウシトラは一人に取り押さえられて、三人は桶を破壊して志保を救出した。

 桶から出てきた志保は取り押さえられているウシトラの頭を撫でた。

「良い子!良い子!」

志保は柔らかい笑顔であった。


各部隊!突撃!反撃してくるものは、構わずにモノしてよしー。


 この号令と共に正面以外の山側から四人づつの小隊がそれぞれに建物に突撃していったー。


 建物は大きく二つに別れていて、正面A棟は武装した信者が籠もっていて、B棟は戦えない者達がー毒ガスによって集団自殺していた。その数158人……。

「こちらB棟の“い”…本部どうぞ…」

「言わなくて良い…見えている!直ぐに換気して非難せよ。生存者救出作業は警察に任せろ!」

「はい」

“い”の四人は建物の換気をした。


 正面A棟内部は激しい銃撃戦になっていた。

 信者達は所構わず銃撃している。仲間に弾が当たろうか構わずである。死しても魂は他の者へと受け継がれると信じているから自分が死んでも構わないと思い込んでいるのであるー。

 陰者達は訓練を受けているが、狂気に満ちた信者達に恐怖している。

「足か頭だ!とにかく動きを止めろ!」

「うわ!やられました!」

「お前は引け!」

「カツラ!俺と一緒にこい!“あ”と合流点まで進むぞ!」

「はい!」

“う”の隊長ケイと隊員カツラは他の二人を引かせて“あ”との合流点の祷場まで前進を試みたのだが…催涙剤の煙に紛れて現れたのはガスマスクを付けた数人の子供達であったの。

 唖然とするケイとカツラは、子供達の銃撃によって倒れた。二人の意識が薄れる中、更に子供達に頭を撃ち抜かれ力尽きてしまったー。


づつく

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