第2話
「棘の衆」2
誠真会ー。
「わたしは死を恐れない!わたしが死んでも魂は貴方達の心に宿るのであるー意志を繋いで世界を変えなければならないのである」
村上康彦は杖を突きながら壇上にて語った。
北東ウシトラは舌打ちしながら席を立った。
「どこ行くの?」
母親が聞く。
「トイレ…」
ウシトラは公会堂から出て外の空気を大きく吸って……吐いた。足早に大通り沿いの正門を出て246を歩きながら煙草を加えた。
なんで、ウチは毎月こんな集まりに来るんだよ。あの爺さんの言葉はどうも信用出来ないんだよな、ただの集団マインドコントロールとしか思えない、俺のやりたいことや想いを親に言っても先生に聞いてから判断するとか…有り得ないぜ…あぁ早く家出たいなぁー。
ウシトラは藤棚のある小さな神社のベンチに座って空を眺めている。
黒塗りで国産車のSUVが三台公会堂の門に入っていった。公会堂の上空には小型のドローンが飛んでいる。四谷の雑居ビルの一室にモニターが数台とコンピュータとスタッフが数人、それの周りに武装したセキュリティがいる。大型モニターには公会堂が映し出されているー。
「“あ”“い”“う”それぞれ準備はどうだ?」
モニター前に居る司令官が言う。
「こちら“あ”配置につきました」
「“い”オッケー」
「“う”も大丈夫です!いつでも突撃できます」
「よし!次は“え”の状況はどうだ?“え”の合図で突撃するぞ!」
SUVからそれぞれ武装した四人が降りて正面玄関、裏口など出入り口に貼り付いた。
「こちら“え”本部どうぞ」
「状況はどうだ」
「催涙弾を使うと信者達も巻き込まれてしまいますので、迅速にターゲットをモノした方が良いかと思われます」
「壇上でモノか?」
「はい!マスコミ各社も居るので私が一人でやります」
「出来るか?」
「はい!右がやったと思われるように致します」
「失敗したら各部隊を突撃させるぞ?」
「はい!まずは最小限に抑えます」
「よし、頼んだ!…各部隊聞こえたか?以上だ!“え”の独断に任せるが失敗と判断次第に突撃せよ!」
各部隊と司令部は一斉に「へい!」と返事した。
大山志保ー19歳。
大山家のエリートである。彼女は15歳から作戦に参加しており政府公認の陰者である。今回のコードネーム“え”は彼女から志願している。そして、彼女の父親は大山大善である。
志保はつめおりを着て右団体の半被を纏って壇上へと駆け上がった。
舞台袖から誠真会のセキュリティが飛び出してきたが、それよりも早くに短刀を村上康彦の首元へ突き刺したー。
「モノ完了!」
志保は首から血を吹きだして藻掻いている村上康彦をセキュリティに取り押さえられながら小声言った。
「モノ完了!全員撤退!」
司令官は胸を撫で下ろし、スタッフ達は溜息をついたー。
会場は悲鳴と怒号に包まれて、マスコミのフラッシュが光りつづけていた。
志保は東京都の外れにある誠真会の本部へ連れて行かれていた。
直ぐに警察の機動隊とマルボウが志保の身柄の引き渡しの交渉をはじめたが誠真会は本部に立て籠もって志保の引き渡しを拒んだ。
「リモートが全てにアクセス次第にこの者を公開処刑する」
誠真会のメンバー2である高田が言った。
「先生の首はどこにある?陰者に渡してはダメだぞ!そして、機動隊との交戦に備えよ!」
高田は幹部達へ指示している。
志保は睡眠薬を飲まされて大きな桶に入れられている。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます