文化祭の一幕(4)
「ん~......」
僕は自分でも自覚するくらい寝相が良くない。
でも一応千尋よりはましだと思う。あの子は起きたら頭が反対方向とかベッドから落ちてることもあるくらいだけど僕はまだベッドから落ちたことはない、はず。
というかお姉ちゃん以外はうちの家系はあんまり寝相が良くない。
小さい頃千尋やお母さんに蹴られて起こされることも多々あったし、起こしても起きないなんてのは日常茶飯事だよね。
それを知ってのことか寝る時はお母さん、千尋、僕、お姉ちゃんの順番で寝ることが一番多かった気もする。
まぁお母さんが僕の隣で寝たいって駄々こねてたことも同じぐらい多かったような......
僕のゲームの趣味はもちろん、家だけじゃなくて外へ出た時も十分に発揮されるからゲームセンターにもよく遊びに行く。
音ゲーやメダルゲームは当然、クレーンゲームもたくさんプレイしてきた。
部屋にはクレーンゲームで取った景品のアニメキャラやゲームキャラのぬいぐるみでいっぱいになっている。千尋も同じく。
まぁなにがいいたいかっていうといつもクレーンゲームで取った猫のぬいぐるみを抱いて寝ているってことなんだけど......
なぜいきなりこんな話をしたのか気になったって?
それはいつも抱いているぬいぐるみの感触と違う感覚を覚えたからなんだよね。
でもすごく眠たかった僕は太陽が昇るまですやすや寝てたんだ......
それはもう熟睡で抱いているものが変わっても気付かないくらいにぐっすり寝ていた。
「.....ぃ」
「にぃ......」
ん......千尋の声が聞こえる、もう朝なのかな......?
「あと5分......」
今日は朝ご飯当番じゃないし、もうちょっと寝れる、はず......
もう一度眠りに就こうとした僕だが、突然温かい手がほっぺたに触れる。
「にぃ、おはよ」
目を開けると、目の前に千尋にいる千尋と目を合わせる。
千尋かぁ......
「千尋、おはよぉ......」
そう、千尋がいたのだ。
「ち、千尋!?」
僕がいつも抱いているぬいぐるみはベッドの端っこに飛ばされていて、いつもの定位置には千尋がいたのである。僕は千尋をぎゅっとしたまま寝てたらしい。
しかもしっかり目が合ってるってことは背中を向けてたわけじゃなくて、向き合って寝てたってこと!?
なんか意識したら目が冴えてきて感覚が鮮明に......
「な、なんで千尋がここに!?」
「......なんとなく」
なんとなくかぁ......一応兄弟とはいえ男だよ?ぼく。まぁ体は女の子なんだけど......
なにとはいわないんだけど当たってるんだよ......身長おんなじくらいだから、お互いのが......うん、考えるのはよそう。
「千尋、当たってるよ......?」
「にぃのやっぱり私よりも大きい......?」
そういうことを言うのは良くない思う。非常にそう思います、ええ。
そしてナチュラルに揉んでるこの妹にもお説教が必要か?
「にぃ、ナイトブラって知ってる?」
な、なんの話......?
「寝返り苦しくない?多分着けた方がラク」
ま、まぁ確かにわかるけどこんな女子トークみたいなやつに混ざりたくない!
僕は心までは支配される訳にはいかないんだ!
「こんど一緒に買いに行こっか」
え、やだ。
「デザインかわいいの一緒にさがそ」
え、やだ。(2回目)
誰も見ないし興味ないのにこだわる必要絶対ないから!機能性だけで十分だから!
......ちょっと待って、着けること自体には反対しないのは僕がこの生活に馴染みだしているからなの?でも着けないとことあるごとに揺れていたいんだよねぇ......
「やっぱり女の子なんだからおしゃれしなきゃね」
「ま、まぁそれは一旦おいて!」
布団から飛び降りて大きく伸びをしながら流れが悪いと考えた僕は話を逸らして逃げることにした。
「それより朝ご飯はなにかな!」
「ふれとー」
ふれとー......?あぁ、フレンチトーストか。
たしかに昨日食パン浸して準備してたな......
「ゆっくり寝られるように考えた」
そんなことに頭使わなくてもいいんだけど......これ確信犯じゃん、最初から僕の布団に入りこもうと計画してたじゃん。なんで?
そんな僕のジト目に気付いてか気付かずか、ごろんと転がって僕のお気に入りぬいぐるみを抱きながらスマホをいじる千尋。
そんな中、騒ぎを聞きつけてかお姉ちゃんが部屋のドアをガチャリと開ける。
この家には僕達3人しかいないからこの部屋に2人いる以上、ドアを開けるのはお姉ちゃんしかいないと分かる。
分かるんだけど、この状況かなりまずくないかな......?
リビングで2人で寝落ちして倒れてるとかは珍しくない話なんだけど、今回は僕の部屋。そんなことはいままでに一度もなかったしさすがに怒られてもおかしくない......
「......」
ドアを開けて俯いたまま固まるお姉ちゃん
「......た」
「お、お姉ちゃんこれには深いようで深くないような理由が......」
言い訳しようとしたその矢先、僕はお姉ちゃんと一緒にベッドへと飛び込んでいた。
「疲れたよー!もうやだ!」
そういって僕の胸元に頭を預けてぐりぐりしてくる。
「もう生徒会長やめるもん!学校も行きたくない!」
あぁ、これは多分......
お姉ちゃん徹夜したやつだ......
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