文化祭の一幕(3)

晩ご飯の片付けを済ませた僕達兄妹はラムネの制作を始める。

「にぃ、ちょっと材料多い」

 買い物は僕がしたから分量の多さに今気付いたみたい。

 まぁ必死にラムネの作り方を調べていたから役割分担だよね。

「ちょっとどころじゃないくらいかなり多いよ?」

そう、ここには千尋の考えだけじゃなくて僕の考えもいつの間にか混ぜていたのである。

「千尋、お姉ちゃんのためにラムネを作ろうとしてたんでしょ?」

「ん、そう」

「じゃあさ、どうせなら生徒会の人達にも作ってあげない?」

「!」

 千尋がその発想はなかったという驚いた顔でこちらを見る。

「にぃ、天才?」

「あ、ありがとう......でもちょっと天才は言い過ぎかもね」

「違う、天才」

 千尋がムキになってほっぺたをぷくっと膨らませながら言う。

気恥ずかしくなった僕は顔を逸らして

「さ、早くみんなの分ラムネ作るよ!」

「逃げた......」

 千尋の声は聞こえないふりをした僕であった。

 そんなこんなで料理が得意を自称する僕がいながら大きなミスをすることもなく順調に進んで台所には大量のラムネが大きなボウル5個くらいにできることになった。

作業が単調すぎて退屈だったから、千尋も僕も飽きてきてゲーム要素を混ぜて作業を進行することにした。

 まず、下準備に砂糖、コーンスターチをふるって、クエン酸、水、レモン汁を合わせて溶かす。これ自体でかなりの量が発生することはもう気に留めてもない。

 その後、下準備で作ったものを水分がなくなるまで混ぜて、

着色料と重曹を加えてしっかりと混ぜる。

 後はスプーンを2つ使って半円を2つ合わせて丸型にして時間を置く。あら不思議、簡単にラムネの完成。量が量なだけにかなりの時間を要するのだけれど、試作の少量の段階ではかなりの自信作に仕上がった。コツは水分をしっかり抜くことと重曹を入れるタイミング。水気を粉に混ぜておかないと食べた時のシュワシュワ感が消えてしまうからだ。

 そして出来たものからオーブンで乾燥させて100度の予熱で乾燥させる。

 その試作はお姉ちゃんにあげたんだけど......

「ありがとう、一生大切にして家宝にするわ」

といってラムネを割れない程度に胸に大切そうに抱える。嬉しいけどちゃんと食べてね?


 この工程のうち、最初の下準備、重曹などを混ぜる時、型を作って乾燥させる時の3回に分けて、僕達はラムネ作りをゲームの勝敗で決めることにした。

「最初はグー!じゃんけんぽん!」

「   ぐー、     ぽん」

 千尋の掛け声がかなり欠けているが、じゃんけんを3回する。

結果は......なんと僕の全敗......

そんなバカな......!単純に3分の1で勝てるゲームに3回も負けるなんて......!

「こ、こんなことありえないよ......!」

僕は文句を言いながらなんやかんやでラムネ制作を終える。

そうして2回目、3回目、と何回か回数を重ねて順調に進んでいく......

 だけどぜったいに僕の方が作業量が多いことには全然納得がいかない!......まぁ僕がじゃんけん弱いせいか......

 後は合計カードが3枚のババ抜き、あっち向いてほい、道具なしでできるような手軽なゲームはほとんどこなしたような気がする。

 そして僕達はとうとうオンラインFPSゲームの一対一のいわゆる1on1と呼ばれるものを始めた。最近はランカーと呼ばれるような段階に至った僕達のルームには何人もの観戦者が生まれるような事態となってしまっていた。このゲームはフレンドでないプレイヤーでも気軽に上手い人のプレイなどを勉強できるように、ということで試合の観戦がフリーなのである。

 最初の数回のうちはほんの2、3人の観戦者だったのだが......気付いたら数千人もの人が集まる大規模なものとなっていたんだけど、それにはとある有名実況者の人が関係してたらしくて、その時の僕達が気付くわけもなく......

一戦やってはラムネを作り、一戦やってはラムネを作るということをほぼ半永久的に繰り返す。

 もうこの時には役割ごとに分けるなんてことはなく、負けた方は一回分の作業をまとめて行うことになっていた。

 するとゲーム脳である僕達にはしっかりハマって時間があっという間に過ぎていった。

 晩ご飯を食べた後、21時くらいから始めたラムネ作りは気付けばとっくに日付を回っていた。


 もう十分だ、というほどにラムネを作った僕達はゲームからログアウトして2階にある寝室に向かい、それぞれの部屋に入って眠りへと就くのだった。結構な作業をした後だからそれはもう深く眠れた.....からこそ僕の部屋に忍び込んで来た人になんて気付くことは到底不可能だった、とだけ自分のために弁明しておこうと思う。





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こちら、ラムネの作り方に関してクックパッド様に掲載されていたキイロイオニギリ様が投稿されている『シュワッと美味しい、ラムネ菓子』レシピID128293 のページを参考に書かせて頂いております。問題があった場合はすぐに改稿させて頂きます。







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