【番外編】文化祭の一幕(2)
「当分の予定についてから説明していくわね」
「まずはクラスの出し物のチェックね。これはもちろん行わないといけないわ、念のため理由について確認しておきましょう」
こういう単純なことでもちゃんと声に出して確認することで確実に忘れないようにしてるんだ......やっぱりうちの生徒会ってすごいんだよなぁ......
「予算的に現実的か、規模的に実現可能なのかをしっかりと確認します、もしどこかのクラスの出し物が完成しなかった場合はそのクラスの責任じゃないわ、その責任は私達にあるのよ」
生徒会室の空気が更に引き締まったのが僕にまで伝わってくる......
「去年もいた生徒会メンバーはもちろん、文化祭に参加した人達も分かっていると思うけど、うちの文化祭はとても多くの人が訪れるし、生徒会同士の連携がとても大事になるわ」
うちの学校は県内随一のマンモス校で、その名前は県外にまで知れ渡るほど。
場所は別々だけど幼稚園から大学まで全てが揃っているし、クラス数はどの学年も8クラスくらいある。
だから学校行事には色々なひとが来るからかなり大がかりになるし、今回は一般の人も入場できるみたいだから更に多くの人が来るんだろうということは始まる前から皆分かってると思う。
その後も細かい話がずっと続いていたけど、あんまり詳しくは覚えられなかった......
まぁ、僕にはあんまり関係ない話だからまぁいいけど......
でもさ、千尋、堂々と僕の肩に寄りかかって寝るのは僕どうかと思うな......?
皆も真剣に話聞いてるし、話し合ったりしてたよ?
ちゃんと聞けとは言わないけどさ......
そんなこんなで今日の話し合いは終わったけど......実際僕達必要だったのかな?とは思わなくもなかったな。
まぁキリっとしてるお姉ちゃん見てるのは新鮮だったし、普段は行事に参加してるだけだから裏側を見るのは楽しかった。
これ、動画とか撮ったらドキュメンタリーとか作れそう......面白そうだし放送専門部と話し合ってみようかな......?
「さ、そろそろ帰りましょう」
生徒会の人達が帰っていって生徒会室に残ったのは僕達3人になった。
「今日はスーパー寄って帰ったほうがいいかしら?」
今日の料理当番は......僕だったよね?
朝ごはんを作る時に見た冷蔵庫の中身を思い出して献立を考えてみる......
うーん、今日の晩ごはんまでは十分足りるかもしれないけど明日の朝ごはんのことまで考えるとちょっと不安かもなぁ......
スマホをつついている千尋、そういえば明日の当番は千尋か......何か作りたいものでもあるのかな?
「一応買い物行っておきたいかもなぁ......」
「千尋、明日ご飯当番だけどなにか欲しいものある?」
「いつものスーパーで大丈夫?」
「食用クエン酸欲しい......」
ん......?しょ、食用クエン酸......?とは?
「なるほどね......食用クエン酸か......」
「あら、千秋分かるの?」
「ごめん、わかんない......」
知ってるふりしたかったんだよ、だって僕料理には少し自信があるからさ?知らないっていうのは悔しいじゃん?
「そういうお姉ちゃんはわかるの?」
お姉ちゃんは僕の方に振り返って自信満々に胸を張って言う。
「当然よ、妹のことだものでもそれならあれも必要よね?」
びしり、と僕を指さして、
「そう、必要なものは食用重曹......そして作るものはずばり、ラムネよ!」
「ら、ラムネ!」
なるほど、ラムネか!
確かにクエン酸とか重曹は家にないけど、問題はそこじゃない。お気づきだろうか?
「ち、千尋?もしかして朝ごはんじゃなくてお菓子のこと考えてる?」
「朝ご飯の一品にしよう」
あ、朝ご飯にラムネは......嫌いじゃないけど別に食べたくはないよねぇ......
「それは今日の夜食ぐらいにしたくない?」
ほ、ほらお姉ちゃんも少し、ほんの少しだけ顔が微妙にひきつってない......?
「お姉ちゃんもちょうど作業も合間に夜食として食べたいな~って思うわ」
「そ、そうだよね、その方が頭がしっかり働きそうな感じもするし!」
「一理ある」
よ、よかった、これで朝ご飯ラムネは回避できそう......
「とりあえず、スーパーに着いてから考えよっか?」
「そうする」
その後スーパーで適当に朝ご飯の買い物を済ませて家に帰った。
あ、ちゃんとラムネの材料も調べて買いました。追加で食紅なんかも買っておいた。
「さ、とりあえず晩ご飯でも作りますかねっと」
今日の千秋さんが作るメニューは〜チキンチーズカレーです!
「一体僕は誰に向けてこの発言をしているんだろう......」
ま、いっか。
作り方はほとんど普通のものとほとんど変わらないんだけどここで隠し味を1つ。
それはチョコレート!お姉ちゃんのために少しでも頭が働くようにっていう僕の考え。
千尋もきっとそれを考えてラムネを作ろうって言い出したのかなって思ったり思わなかったり。
「お姉ちゃーん、千尋ー!晩ご飯できたよー!」
千尋はリビングでスマホを弄っているから聞こえているだろうけど、お姉ちゃんは自分の部屋にいるだろうから少し大声で呼びかける。
声が届いたのか階段からトントン、と降りてくる音がする。
「ドアを開けた時からカレーのいい匂いがしてくるわ」
「ん、いい匂い」
「もちろん晩ご飯がわかる嬉しさもあるのだけれど、分かってしまう悲しみもあるのよね」
「ねぇね小学校の子みたい」
「あら、なら千尋は妹で...... 千秋はお母さんかしらね!」
「ふふ、ぴったりかも」
そういって2人で笑ってる、僕もつられて笑ってしまう。
「あはは!たしかにそうかもね〜......って言いたいけど僕男だから!」
「にぃのそれも毎回」
「まぁまぁ、千尋、いつものことだから気にしないことよ」
え、これ僕がおかしいこと言ってる?あぁ、頭がこんがらがってきた......
「もうその話はいいから晩ご飯の準備するよ!」
「ねぇね、お母さんが説教してる」
「はーい、お母さん準備させてもらうわ」
そんな会話をしながらみんなで晩ご飯を食べて、お姉ちゃんは文化祭の作業へ、僕達兄妹はラムネの制作へととりかかるのだった。
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