神代千尋①
にぃが無理して学校に行っていた、やっぱりねぇねぇはわかってた。
でも私達はにぃの気持ちを大事にして知らないふりをした。
そのことをなんとなく察しているのかもしれない、もしかしたら全然気付いていないかもしれない。私達からすればどっちでも構わない。だって私達はにぃの気持ちが一番大事だから。
にぃがこうなってしまったのは私にあった過去の出来事が理由になってるかもしれないから。
「......あ、あの......」
クラス中の視線が私に集まる中、私は言葉を出せずにいた。
小学3年生の時の自己紹介。
毎年ある一番嫌な行事。といっても好きな行事はほとんどないけど。
もう小学校に来て3年。4つクラスがあるけど、どんな人がいる、とか顔は見たことがあるひとがいっぱいになるぐらいの頃。
足が速くてかっこいい男の子、可愛いくてよく告白される女の子。お話が面白い子。そういう風に皆に個性がついていく。でもこんな風に良い印象じゃなくて悪い印象の人もやっぱりいる。そのうちの1人が私。他のひともいたのかも知れないけど、私にはそんな情報があるわけがない。
私についていた印象、それは『人と関わるのが嫌いな子』といったもの。
最初は『苦手』ぐらいのものだったのにいつの間にか大きくなっていて『嫌い』と言われるようになってしまった。
それも仕方ないのかもしれない。
だって私は毎年自己紹介を最後までしたことがない。
いや、名前すら言えたことがない。
私は人見知りが激しすぎて、家族以外とは誰とも話すことが出来なかった。
でも私はそれをだめだとは考えていない。だって私にはにぃとねぇねぇがいるもん。
それ以外の人と話せなくても、家族と話せればそれでいい。
にぃに家族以外とも話してみたら?とも言われたけど、私は直そうとも思わない。
だって無理して人と話すよりもにぃ達と話す方がよっぽど楽しい。
......ちょっとは人と話すのが怖かったからだけど...
休憩時間には必ずにぃかねぇねぇの教室に行って授業の時以外は一緒に見ない時はないぐらい一緒にいた。にぃの友達も、ねぇねぇの友達も微笑ましい表情で見ていた気がする。その時の私は視線を合わせられるのも嫌だったからあまり覚えてないけど。でもそんな視線は一部だけで、私はその時気付いていなかった。
私に向けられている視線の中には敵意が含んだものもあったこと。
そしてこの後その視線に気づいていれば...と後悔するものの、この時の私にはこの後に起きることは予想することすら出来なかった。そのせいでこれからのすべてが少し歪んでしまったことも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます