神代若葉②

 これは千秋が寝た後のお話......


「にぃ、疲れて寝たみたい。」

「無理もないわよ。今日は色々あったもの。」

「うん、にぃ色々頑張ってた。」

「そうよね。多分私達が気づいていないと思ってるだろうけど、千秋はもちろん気づいているわよね?」

「あたりまえ。」

 そう、千秋は私達にを吐いている。

しかもそれは多分私達姉妹2人以外は気づいていない。

千秋本人から聞いたわけでもないけど私達は確信を持っている。

これはずっと過ごしてきた私達だからこそ分かる。

決して他の人が関係が浅いというわけではなく、千秋が隠すのがうまいだけである。

 そろそろ千秋が隠していたことの話をしよう。

それは......

「「女の子になったことに対しての気持ち。」」

「やっぱり一緒だったわね。」

「うん。」

「まだ頼りないかしらね...?」

 そう、千秋が隠しているのは女の子になったことへの感想とか立ち回り。

これだけでは分かりにくいからもっと詳しく説明する。

千尋が女の子になってからの言動はなのである。

完結に言えば虚勢。そう、強がりである。急に性別が変わってあんな理性的にいられる訳がない。

 だってそうでしょ?学校行ったり普通に体育したりショッピングモールで買い物出来る訳がない。そんなことができたのは千秋が自分を偽っていたから。

自分にこれはあり得ること、とか、なにかで合理化して自分の動揺などの感情の大半をうちにしまっただけ。

 これが私達だけにしか気付くことが出来なかった嘘。

千秋はいつもそういう節がある。私達も千秋が本当に困っている時もこういう風に隠そうとする。

 そこで千尋と私は1つの約束を決めた。

千秋が本当にどうしようもなくなって自分から心の底から私達に助けを求めるまでは

千秋の嘘に気付かないふりをするということ。ただし千秋の生命に支障がでないようなものに限るが、私達は今まで色々な場面でこの約束による歯痒さを感じることもあった。

 助けてあげたいのに見て見ぬふりをすることもあった。それでもそうしなかったのは偏に千秋のことを考えてである。

 「困ったときには私達を頼って」最初のうちはこうして声をかけていたけれど、何回言っても返事はするけれど、それが行動に現れたことは一度としてなかった。

 千秋に呆れた、とか、愛想が尽きたわけでは全くなく、千秋にもなにか考えがあるのだろうと、私達なりにも色々考えてこのような選択をとっている。

千秋がいつかは分からないけど、そのいつかを私達はいつまででも待ち続ける。

 だって私達は千秋は私達が寄せていると思っているよりも強く千秋のことを信頼しているし、それよりも何より、私達は千秋のことが大好きなんだ。

 恋愛か、とか家族として、とかはよく分からないけれど、とりあえず千尋も、私も、        千秋のことが大好きなんだ。だから気持ちを尊重してあげたい。

失敗した時のことなんか気にせず好きに立ち回ってほしい。それが私達の気持ち。

 だから、千秋が私達に性別変わったことの動揺を隠すようなら私達がいちいち触れるようなことでもないのである。

......でも、それでもいつかは頼ってくれるように、いや、頼られるような姉になれたらな、と千尋と駄弁りながら深く思った。

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