第9話 おかえりブタノスケくん
港に着いたブタノスケくんは、まずはアミブタさんを訪ねました。
「おお、ブタノスケくん戻ってきたのか!」
「アミブタさん、ただいま戻りました」
「大丈夫だったのか」
「実は海が荒れて船が沈んでしまったのです」
「それで、ブタノスケくんの体は大丈夫だったのか」
「はい、なんとか助かったんですけど、アミブタさんから借りた船が海に沈んでなくなってしまったんです。本当にごめんなさい」
「あんな船のことなんか気にしなくていいよ。ブタノスケくんが、こうやって無事に帰ってこれただけで十分だ」
「アミブタさん、ありがとうございます」
「そういえば、もうブタムラ先生には会ったのかい?」
「いえ、まだブタムラ先生には会っていません」
「ブタムラ先生、すごい心配していたぞ」
「そうなんですか。それでは病院に行ってみます」
「はよ、行ってやれ」
「はい。アミブタさん、ありがとうございました」
「おう、ブタノスケくん。またな」
「はい、さようなら」
ブタノスケは商店街のはずれにある「ブタムラ医院」に急ぎました。医院の入口の扉を開け、靴をスリッパに履き替えました。
「ブタノスケくんじゃないか。いつ戻ってきたんだ」
「ブラムラ先生、さきほど港に着いて島に戻ってきたばかりです」
「ブタノスケくん、いま病院はヒマだから、少し休んでいってくれ」
「はい、ありがとうございます」
そしてブタノスケは病院の診療室に通され椅子に座りました。
「それでブタノスケくん、良い薬草は手に入ったか」
「それが良い薬は手に入りませんでした」
「そうか、やっぱりダメか」
「でも向こうの島の先生たちは、とても親切にしてくれました」
「そうか、まあブタノスケくんが無事に帰ってこれて、よかったよ」
「先生、トントン泉という泉を知っていますか」
「ブタサワの森にある泉のことだろ」
「はい、そうです」
「なにかトントン泉にあるのか」
「実はブタクロ島で薬草名人のクロトンさんから甘酒の作り方を教えてもらったんです」
「甘酒のつくりかた?」
「そうなんです。とても美味しい甘酒で飲むと元気がでるような気がします。兄さんにも飲ませてあげたいんです」
「なるほど甘酒かぁ」
「材料が一番大事だそうでトントン泉の水と、トンベイさんの田んぼでとれた玄米と、ブタイケ屋の米麹をつかうように言われています」
「ほうブタクロ島の薬草名人もトンベイさんのことを知っていたのか!」
「はい、先生もトンベイさんのことを知っているのですか」
「だって、いつもトンベイさんからお米を買って食べているんだから、よく知っているさ」「え〜、そうなんですか」
「トンベイさんのお米は美味しいぞ」
「それとブタイケ屋って知っていますか」
「もちろん知っているさ、すぐ向かいの味噌屋さんのことだよ」
「先生は、けっこう良さそうなものを食べているんですね」
「これでも一応、医者だからね。明日にでもトンベイさんの田んぼを見に行こうか」
「トンベイさんにもあえるんですか?ぜひお願いします」
それからブタノスケはブタムラ医院を出てブタ第一病院に真っすぐ向かいました。トン次郎兄さんのことがとても心配だったからです。
ブタ第一病院のトン次郎兄さんの病室では、いまだトン次郎兄さんがベッドの上でもがき苦しんでいました。なんだか島を出るときよりもトン次郎兄さんの体が痩せ細った感じがしました。
「ブタノスケくん、もうブタクロ島から戻ってきたのか」
「あっ、ブタサキ先生。そうなんです。今日、ブタクロ島から戻ってきました」
「それでブタクロ島で良い薬を手にいれることはできたのかな」
「いえ、それがワクチンで病気になったときの薬はないと言われました」
「そうか、それは残念だったね」
「ブタサキ先生、トン次郎兄さんの体が随分と痩せ細ってしまったようなのですが」
「そうなんだ。食事の時間にお粥を食べさせても、すぐに吐き出してしまうんだ」
「そうだったんですね」
「このままでは、君のお兄さんの体が更に弱ってしまうよ」
「それで実はブタサキ先生、ブタクロ島で美味しい甘酒の作り方を教えてもらったんです」
「甘酒?」
「そうなんです。甘酒です。薬草づくりの名人のクロトンさんが教えてくれました。そのクロトンさんから『甘酒をお兄さんにも飲ませてあげなさい』と言われたんです」
「ブタクロ島の薬草名人が、そんなことを言っていたのか」
「はい、クロトンさんが言っていました」
「そうか、それなら作った甘酒を食事の時間にでも持ってきなさい」
「はい、今度甘酒をつくったら持ってきます」
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