第8話 冒険家のゴウトンさん
それからブタノスケとシロトン先生はブタクロ島をあとにして、イカダでブタシロ島のシロトン先生の病院に戻りました。
「ブタノスケくん、明日の朝は4時前に起きなさい」
「ずいぶん早いんですね。なんでですか?」
「この島に冒険家のゴウトンという者がおってな、船に乗せてくれると言ってくれているのじゃ。これで大ブタ島に帰れるぞ」
「そうなんですか」
「ただ、あくまでも旅に出る『ついで』に乗せてくれるという話だから、もし寝坊して船に乗り遅れたら大変だぞ」
「わかりました。4時前ですね」
次の日の午前4時前の、まだ真っ暗な時間にブタノスケとシロトン先生は港に向かいました。
港に着くと桟橋の脇に小型のヨットがとまっていました。ヨットに近づくと、まるでイノシシのような締まった体つきの大きなブタが出てきました。
「シロトン先生、おはようございます」
「おはよう。彼がこのまえ話をしたブタノスケくんだ」
「ゴウトンさん、おはようございます」
「おはよう、君がブタノスケくんだね。よく大ブタ島から一人で、ここの島まで来たもんだね」
「ぼくも、よく一匹でここまで来れたと不思議に思っています」
「ハッハッハッ、ひとりの船旅は楽しかったかい」
「もう本当に死ぬかと思いました」
「ハッハッハッハッ、でも大したものだよ。君にも冒険家の才能があるのかもしれないな」「そうですかね」
「ハッハッハッ、それでは出発しよう」
「あっ、シロトン先生。本当に、ありがとうございました」
「いや、ブタノスケくんのお兄さんに何もしてやれなくて申し訳ない」
「シロトン先生、そんな『申し訳ない』なんて言わないでください」
「ブタノスケくんも元気でな。お兄さんにもよろしく言っておいてくれ」
「はい、先生さようなら」
ヨットが進むにつれて空がオレンジ色に変わり海一面が橙色に染まってきました。ゴウトンさんは無言でヨットの操縦をしています。なんだか話しかけてはいけないような雰囲気です。
気がつくと青空が広がり海の水が透き通った紺色に変わっていました。とても心地よい、さわやかな風が吹いてきました。
「ブタノスケくん!着いたぞ」
「えっ、もう着いたんですか」
「それにしてもブタノスケくん、よく眠っていたなぁ」
「え〜、ごめんなさい」
「べつに、謝ることはないさ。朝早かったからな」
「でもゴウトンさんが一所懸命なときに、ずっと眠っていたなんて」
「いいから気にすんな、気にすんな。それではブタノスケくん、さよならだ」
「ゴウトンさん、ありがとうございました」
「また会おうな」
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