第6話 「島に漂着」
「ここはどこだろう?」
気がつくとブタノスケは、どこかの建物の白い天井を見上げていました。
ブタノスケは身体中の節節に痛みが走っているのを感じました。
「気がついたかね」
目の前にいたのは年老いた白いブタでした。
「ここはどこですか、それで、あなたは誰ですか」
「ここはハチブタ列島のブタシロ島というところじゃ。私は、この島で長年医師をやっておるシロトンという者じゃ。ところで、こんなところになにをしにきたんだ」
「ぼくはブタノスケといいます。大ブタ島に住んでいます。ブタクロ島で、よい薬草が手に入ると聞いてここまでやってきました」
「ほう、誰か病気になったのかな」
「実は、僕の兄さんがワクチンを打ってから、体じゅうがしびれてしまい、とても苦しんでいるのです」
「ワクチンとは健康な人や動物たちが打つ薬じゃな。ところで、きみたちの島では病気ではない者が、なんで薬を使うのかね」
「もちろん病気にならないためです」
「ところで、きみの兄さんはワクチンを打つ前は元気だったのかね」
「はい、ワクチンを打つ前は、とても元気でした」
「おかしいじゃないか」
「えっ」
「ワクチンは病気にならないために打つんじゃないのか。それなのに、いままで元気だったのにワクチンを打ったがために病気になるなんて、おかしな話だろう」
「あっ!本当だ!シロトン先生の言う通りです」
「この島では怪我や病気ではない者が薬をつかうことはない」
「あの、シロトン先生お願いがあります」
「なんだね」
「ぼくの兄さんのため、薬草を分けて欲しいのです」
「残念ながら、ワクチンで病気になった者を治す薬は知らない」
「そんな〜、でもハチブタ列島のブタクロ島には薬草づくりの名人がいると聞いています。その名人であれば兄さんを治せる薬草をつくれるのではないでしょうか」
「確かにブタクロ島には、私の従兄弟で薬草作りをしている者がおる。しかしワクチンで病気になった者を治す薬をつくれるかどうかはわからんな」
「ぼくに、その方に会わせてくれませんか」
「べつに会わせることは構わんが、まずはブタノスケくんの怪我が、ちゃんと治ってからだね」
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