第15.5話
「あ、ありがとうございます...!」
サインした色紙を渡すと西園寺さんは目尻に涙を浮かべていた。そんなに嬉しいとはこちらとしても嬉しいものだ。
西園寺さんは机の引き出しにサインをしまいこちらに話しかけてきた。さっきの顔とは想像できないほどの真剣な顔で聞いてきた。
「早速、本題なんですが」
俺は息を飲んだ。何やら変な事を聞かれそうで怖い。
「ブルーが再開するって本当ですか?」
「え?あぁ、本当ですよ」
意外と真面目な質問で準備していた言葉を全部忘れて、腑抜けた声を出してしまいちょっと恥ずかしかった。
「本当ですか...?あぁ、良かった〜」
「そんなに嬉しいんですか?」
「も、もちろんですよ!!今、ブルーは国内で1番人気があるバンドなんですから!」
熱狂的ファンだな...
「そ、それだけですか?」
「はい。他に何かありますか?」
なんだろう、このために連れてこられたのか。そう思うと、なんか悲しい気持ちが出てきた。
「もちろんですが正体はバラさないです」
「そうですよね」
「ただし、条件があります」
なんかこのパターンはどこかであったような...たか何とかさんだっけ...?
「な、なんでしょう」
「学校で話しかけてください!仲良くなりたいです!」
意外と普通なお願いで正直、びっくりした。いやいや、これが普通であっちがおかしいだけだな。そう思った。
「いいですけど、大丈夫なんですか...?」
「何がですか?」
「いや、その...俺って学校ではあんま目立たないって言うか、どっちかって言うと除け者扱いなんで...」
「大丈夫ですよ?そんな人がいたら私は容赦なく首を飛ばします!」
サラッとそんなことを言った時の表情はニコッとしていてサイコパスみを感じ、生命の危機を感じた。
「じゃ、じゃあ、それなら大丈夫そうですね...」
「はい!」
そう大きな声で返事をした後は、何も話すことがなく沈黙が続いた。気まづい時間が過ぎ去って行った。帰るか。そう思った俺は西園寺さんに話しかけた。
「俺はそろそろ帰ります」
「分かりました!」
そう声をかけるとどこか悲しそうな表情だった。
今の時刻は18時を回ろうとしていた。メイドさんが玄関まで案内してくれた。その後ろから西園寺さんも着いてきていた。
「今日はありがとうございました。サイン大事にしますね...!」
「了解、じゃあな」
俺は西園寺さんの家を出ていった。
──────どうやって帰ればいい?
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