第15話
声をかけたのは桐生学院のトップである西園寺さんだった。意外な人物に声をかけられてしまった。しかも、西園寺さんの後ろにSPのような人がいる。さすが財閥の娘だ。
西園寺さんは西園寺財閥の一人娘で学校でも有名だ。告白をよくされていると聞くが実際どうなのかは分からない。多分事実だろう。そんな西園寺さんだが、前にも言ったと思うが一時期、真田夏と付き合っているという噂が流れたが本人がそれを否定していた。
「間宮さん?でしたよね?」
「そ、そうです...!」
さすがに学校の憧れの存在とだけあって、誰とでも仲良くできる胡桃でも緊張していた。用は胡桃にあるのだろうと思い席を立った。その時、西園寺さんに服を掴まれた。
「あ、あの!どこ行くんですか...?」
「あ、トイレですよ。胡桃に用があるんですよね?それなら席を外しといた方がいいって...」
「い、いや私が用があるのはあなたです...若月さん...」
「え、俺?」
接点があったように思えないし、なんで俺なんだ?
「私の家行きませんか...?」
このパターンは嫌な予感が...胡桃の方を見るとジト目でこちらを見てきた。
「く、胡桃?落ち着いて?」
「あ、もし良かったら間宮さんも来ませんか?」
そう言うと胡桃の目は元気を取り戻し、もちろんと言わんばかりの顔を向けて、大きく頷いた。
「じゃあ、早速行きましょう」
西園寺さんの声掛けでSPが一斉に動き車が手配された。
店の風貌と似合わない高級車が駐車場には止めてあった。俺は汚さないようにゆっくりと乗車した。意外と空間があり、まるでリムジンのような構造だ。
俺は胡桃と間宮さんに挟まれとても身動きの取れない状態に陥っている。
「ここから家まではどれくらいかかりますか?」
「30分ぐらいだと思います」
胡桃が意外にも静かだと思い、胡桃を見てみると寝ていた。その寝顔を見ていると守りたくなってくる。
いやいや、そんなことを考えている余裕はない。なぜなら身動きが取れない状況で30分もの間、我慢しなければならない。
──────30分後
「着きましたよ」
門が開き、家全体が見えた。家とは言えないほどの大きさでまるで宮殿のようだった。
専用の駐車場に車を停め、俺はその硬くなった身体を一生懸命動かし外に出た。身体を反ると背骨からボキボキというなっちゃいけないような音がなった。しかし、それのお陰で身体が軽くなった。
胡桃は着いても起きないようなので、俺が運転手に住所を教え、送って貰うことにした。後々、何か言われそうだ...。
「早速、行きましょうか」
「は、はい」
西園寺さんに連れられ家の中に入った。
家に入るとそこにはシャンデリアが吊るされていてホテルと見間違えるほどの照明とレッドカーペットが引かれてあった。階段も対照的になっており、迷子になりそうだ。
応接室のような所に連れられ、そこにあったソファーに腰をかけた。
その後にメイドさんがお菓子と飲み物を運んで来てくれた。
西園寺さんがメイドやSPなどに部屋から出てという指示を出し、2人きりになった。
「えっと...」
俺が声を出すと西園寺さんも口を開いた。
「し、質問があるんですけどいいですか...?」
「全然いいけど?」
「若月さん、あなた獅子王天馬さんですよね?」
予想してない質問に思わず、硬直してしまった。ここはどうするのがいいのだろうか。俺は数秒黙り込んだ後に質問を質問で返した。
「なんでそう思った?」
「え、えっと私見ちゃったんです...」
いきなりそんなことを言われたので俺はスキャンダルが起こるのではと思った。
「な、何を見たの...?」
「体育の時、髪を上げた時にピアスがしてあって...それが天馬さんと同じピアスで...あれって非売品ですよね...?」
し、しまったぁ...!初歩的なミスをしてしまったっ...あの時か...ピアスを外すのを忘れて体育やってたのか、結局気づいたのは家に帰ってるときで、もしかして誰かにバレたかって思ったけどまさか、西園寺さんにバレるなんて...
「じゃあ、もう隠しようが無さそうだな...」
そう言うと、顔を赤らめて何か言いたげそうな顔をしていた。
机の引き出しからペンと色紙がでてきた。もしかして...サインが欲しいのか?
「さ、サインくだしゃい...!」
緊張のあまり、甘噛みした西園寺さんは今までにないほどに顔と耳が赤くなっていた。それにも俺は笑ってしまた。彼女はこちらを睨んだが、悪意は感じなかった。
「もちろんサインするよ!」
慣れた手つきで俺は色紙にサインをした、!
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