第11話

小鳥遊と別れたあと、俺は久しぶりに胡桃の家に行くことにした。一応、連絡をしたが返信が全く返ってこない。

まだ、昨日の事怒ってるのか?階段を降り、学校の玄関で靴を履き替えた。


俺はスマホの画面を見て、既読が着いたか確認したが着いていなかった。風邪でも引いているのか、それとも無視をしているのか。

スマホをじっと眺め、胡桃の家までの通りを歩いてた。学校からはそう遠くないが住宅街で家を間違えそうになる。数分歩いてようやく、家に着いた。


懐かしい家の光景が目に飛び込んできた。


「懐かしいな……」


 そう呟きインターホンを押すと同時に、玄関の扉が開き誰かがでてきた。声が聞こえてそれは何となく懐かしいような感じがした。


「秋くん?!」


 玄関の前にいた人がそう言ってこちらに近づいてきた。

 いきなり自分の名前を呼ばれ俺は驚いた。


「久しぶりねぇ!元気にしてた?」


 そう声をかけるのは胡桃の母親だった。子供の時に何度か会ったことがあって見覚えがあったがその当時と見た目が変わっていなく今でも綺麗だった。


「どうも。お久しぶりです」


 俺はお辞儀をし、あちらもお辞儀を返した。

 胡桃ママはこう聞いてきた。


「なんの御用ですか?」


「えっと、胡桃が今日休んだので会いに来ようかなと思って」


「胡桃は今、元気がないから来てくれてよかったわ。ほら、上がって」


「ありがとうございます」


 胡桃ママに手招きされ、俺は感謝をし家に入った。内装は数年前と比べて多少変わっているが大きく変わっているところはなかった。


「胡桃は上にいるのでよろしくお願いします…私は買い物に行ってくるので!」


 テンションが妙に高く胡桃の母親だと実感できた。


 胡桃の家に1人取り残された俺は目的の場所まで歩いて向かった。

 懐かしい階段に思いを馳せていると目的地に着いた。


 俺は息を飲んで部屋の扉を開けた。

 すると、そこにはゲームをしているパジャマ姿の胡桃がいた。胡桃は呆然とし、ゲームのコントローラを握ったまま止まっていた。


 見てはいけないものを見た気がした俺はすぐさま、扉を閉じた。

 扉の前に立っていると部屋から足音がドタバタと聞こえ、静かになると扉が開かれ着替えた胡桃が立っていた。


「ど、どうぞ……」


 恥ずかしそうに顔を下に向け言った。


「あ、はい」


 胡桃の部屋に座り、俺は辺りを見渡した。女の子っぽくなかった胡桃が女の子っぽいものを置いていることが俺は何となく嬉しかった。


 辺りを見渡していると分かった胡桃は俺にジロジロ見ないでと言わんばかりの顔をしてきた。


「あのさ、さっき…」


「なにかな?!」


 俺の言葉を遮るかのように強くそう言った。


「秋は何も見てない!いいね?」


「はい……」


 言いくるめられてしまった……それより、ここに来た目的は別にある。


「この前さ、ごめんな」


「何が?」


「昼ごはん一緒に食べようって言ったのに…」


「いいよいいよ!いつでも食べれるし。また、誘ってよ」


昨日の胡桃とは一転して気分が良くなっていた。俺は罪悪感を感じある提案をしてみた。


「それは良かった。お詫びとしてはなんだけどどこか出かけないか?」


「え?」


 胡桃は一瞬、思考停止したような顔をしたが次第に言葉の意味を理解し始めたのか顔が真っ赤になっていた。


「お、お出かけ……?別にいいけど…?」


「それは良かった。遊ぶ日は明日の土曜日だけどいいか?」


「うん!大丈夫だよ!」


「決まりだな。俺はもう帰るけど……」


 俺はその場を立ってそう言うと胡桃が真剣な顔で言ってきた。


「待って!久しぶりに家に来たんだし何かして遊ばない…?」


 胡桃の申し出に俺は一瞬迷ったが久しぶりという言葉に甘えさせてもらおう。


「そうだな。Switchもってるか?」


「うん!」


「いいねぇ!大スマやるか!」


 バンド仲間と鍛えたから大スマは強くなった。


「私、負けないよ!」




 ───数時間後




「なんで勝てないんだ……」


 落胆する俺の姿に胡桃は無邪気に笑っていた。俺はなんでこんなに弱いんだ…


「秋、弱すぎ!」


 ここまで胡桃が強いとは……。

 バンド仲間と練習したはずだが、ここまで上手だったとは。バンド仲間が下手くそすぎて俺が上手くなった気がしただけだったか?それにしても、久しぶりに何時間もゲームをやったから目が痛い。


「こんなにゲームをやったのは久しぶりだよ」


「私も〜」


 俺は一息つき、カバンを持ちその場にたった。胡桃はこちらを不思議そうに見上げた。


「じゃあ、俺はそろそろ帰るから」


「う、うん」


 帰ろうとした時、胡桃が肩を叩いて話しかけた。


「明日、楽しみにしてるね!」


 そう言って向けられた笑顔はどこか胸を高鳴らせた。


「おう!」


 そう言って胡桃と別れた。


 時刻は7時を回っていたが、周りはまだほんのりと明るく赤くなっていた。







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