第6話
小鳥遊の家から歩いて自分の家に着いたのは7時頃だった。俺は鍵をポケットから取り出し、扉を開けた。
すぐさま自分の部屋に学校のカバンを置いてリビングに戻った。
改めて、家のリビングを見ると小鳥遊の家との差になんか泣けてくる。ソファーに座り、テレビをつけた。今日は一段と疲れが溜まっていてもう寝そうだ。目を休めるためにソファーに寝転がった。
―――目が覚めるといつもと見慣れない天井が俺の朝を迎えた。カーテンからは太陽の光が差し込んでいた。ソファーで寝てしまっていたらしい。時計を見ると6時になっていた。
起きて直ぐにお風呂に入り、ご飯を食べていたらあっという間に学校行く時間になった。最近は忙しくてちゃんと休めていなく、疲れが溜まっているのを感じた。いつもの道をとぼとぼ歩いていると後ろから足音がして、後ろを振り返ると胡桃がいた。
「おはよ!」
胡桃の元気な声を聞くと疲れが無くなったような気がする。
「おはよう。胡桃」
俺は普段通りに挨拶を返した。
すると、胡桃は何故かソワソワし始め何か聞きたいことがあるかのような顔でこちらを見てきた。
「どうした?聞きたいことでもあるのか?」
「う、うん……。あの、小鳥遊さんとはいつ仲良くなったの!?」
いきなりの大声に俺はびっくりしてしまった。
「なんだよ。いきなり大声を出して」
「なんか、仲良かったからいつ知り合ったのかなって」
胡桃に聞かれて思い出した。俺はなんで小鳥遊と話せるようになったんだ?
疑問に思いつつも俺は胡桃の問いかけに対し、濁すような答え方をした。
「なんでだろうな」
「答えになってない〜」
その後も胡桃は、何度も聞いてきた。
学校に着いた後も、教室に着いた時もずっと聞いてきた。俺はイヤホンで耳を塞ぎ声が聞こえないようにした。すると、胡桃は諦めたのか黙り込んでしまった。悪いことをしてしまったような気がした。
胡桃との会話を聞いたのか分からないが、何故か陽キャ集団に睨まれていた。女子ではなく男子に。恐る恐る本を読むふりをした。陽キャ集団のなかに、いつもいる小鳥遊の姿がいなかった。
ボディーガードをしている身では、姿を見せて欲しい。もし、何かあったら楽さんに殺される。
俺は再び顔を上げ、陽キャ男子たちの方を見るとまだ睨んでいた。すると、扉が開かれ担任の教師が入ってきた。
隣の胡桃が肩を叩いて、ひそひそと話し始めた。
まだ、聞いてくるのかと思い聞き流そうとしたらそれとは別のことを言われた。
「秋?なんか、西園寺さんがこっち見てるんだけど何かした?」
「え?」
俺は胡桃の言ったことを確かめるために、西園寺さんの方を見たが、こっちを見ている気配がなかった。
きっと冗談だろう。
「胡桃。冗談ならよしてくれ」
「ほんとだって!」
「俺みたいな奴が西園寺さんに見られるわけないって」
俺は冗談混じりに言うと胡桃は怪訝そうな顔をしていた。
気づけば、朝のSTが終わっていた。1時間目は体育だった。男子、女子と分かれ行うことになった。
「じゃあ、秋!またね!」
「あぁ、胡桃も頑張れよ」
胡桃と別れたあと、俺は教室で体操服に着替えグラウンドに出た。
今日の体育はサッカー。
もちろん俺はぼっちなのでペアを組む人がいなく、先生に頼もうとすると、後ろから肩を叩かれた。
「良かったらペア、組まない?」
俺の肩を叩いてきたのはいつも教室で本を読んでいるひとだった。普段、喋っている様子がないので声を全く聞いたことが無かったが結構いい声をしていた。
「あぁ、よろしく」
手を差し伸べて握手をした。
「俺の名前は神宮冬季。冬季って呼んでくれ。よろしくな」
「若月秋だ。こちらこそよろしく」
挨拶を返したあと、サッカーボールを取りに行き一緒にパスをし合った。
「冬季は、サッカーをやったことがあるのか?」
「まぁ、中学まではやってたかな。逆に秋はどうなんだ?」
「俺は、遊びではやってたぐらいかな」
先生の指示でまた、集まり次は2対2の試合をした。
試合は順調に進み、俺たちの番になった。相手は、サッカー部のエースの真田夏でそのパートナーはサッカー部の副部長だった。
クラスのみんなはこちらを見ると何故か笑みを浮かべていた。
「若月くん。神宮くん。よろしく頼む!」
真田はそう言って自分の陣地に戻っていった。先生 が試合の合図に笛を鳴らすと、真田は速攻、攻めてきた。
それを見逃さなかった、冬季がブロックに入り、ボールを取り返しゴールに向かった。
肝心な俺はただ突っ立ったまま、試合が終わっていた。
結果はぼろ負け。俺、運動の才能なかったわ。
試合が終わった後に、真田が近づいてきた。
「神宮くん!君のブロック良かったよ!」
冬季に用があったらしい。
「あ、ありがとうございます……」
冬季は真田に褒められるとすごく嬉しそうにしていた。その後は、片付けをした数分後に授業終了のチャイムがなった。俺は教室に戻ると、陽キャ集団に笑われていた。
ところで、冬季が居ない。俺は早く着替え、手当り次第に探し回った。グラウンド、下駄箱、廊下を探したがいなく、最後にトイレに向かった。すると、そこには床に座り込んでいる冬季を見つけた。
「お、おい!冬季どうした!?」
俺は慌てて冬季の元へ向かった。
「あ、秋か。心配させてごめん。ちょっと立ちくらみがしてな……」
冬季の姿はサッカーで着くことの無い汚れが服にあった。不思議に思ったが今は冬季を助けなければいけない。
「そ、そうか…」
軽い相槌を返し、俺は冬季を支えて保健室に向かった。
「じゃあ、俺は教室に戻るから安静にしてな。また後で」
「あぁ、ありがとう」
1時間目からサッカーとは…動きすぎて体が重い。
体育が終わったあとの授業はとても苦痛で授業時間が長い気がした。
そんな、退屈な授業が終わり放課を、迎えていた。
帰る準備をしていると後ろから肩を叩かれた。後ろを振り向くとそこには先生が立っていた。
「若月、ちょっといいか?」
「なんですか?」
先生に職員室に連れられ、怒られるのではないかと心配をしていたが、謎の封筒が渡された。
「これなんだが小鳥遊に渡して欲しい。お前ら仲良いだろ?」
「は、はぁ……」
「頼んだぞ」
俺は先生から渡された手紙をじっくり見つめた。なんの手紙だろうと思いながら荷物を取りに教室に戻ると、そこには冬季がいた。
今日は仲良くなった記念に一緒に帰ろうと誘うことにした。
「冬季、一緒に帰らないか?」
「あ、ごめん。秋、俺これから用事があるからまた、誘ってよ。今日の体育はありがとな」
「お、おう」
神宮冬季……。今日初めて仲良くなったがどこか、不安になる。要注意人物だな。
俺は悲しくひとりで帰ることにした。
先生から渡された手紙を小鳥遊の家に送らなければならなかったから、一人で帰るのは逆に好都合だと思った。あと、小鳥遊がなぜ休んだか理由を聞かなければならない。ボディーガードだからな。
歩いて数分後、小鳥遊の家についた。家のインターホンを押し、誰かが出た。
「はい」
「若月秋です。手紙を届けにきました」
そう言うと扉が開かれ、楽さんが出てきた。
「やぁ、若月くん。昨日ぶりだね。家に入ってくれ」
「は、はい」
昨日、入ったのだがいつ見てもこの家の家具はやたらとでかいものが多い。
俺は案内されたところに腰を下ろした。
「急にすみません。あ、天音さんは今日休んだと思うんですけど何かあったんですか?」
「あぁ、風邪を引いてしまってな」
「そうですか。お大事にと伝えておいてください。俺はこれで帰ります。手紙も渡しておいてください」
一礼をし、手紙を置いて席を立つと肩に手を置かれてまた、「なんで帰るんだい?」と言わんばかりの顔をして強制的に席に座らされた。俺は顔を上げると、怖い形相をした、楽さんにびっくりした。
「天音のお見舞いはしないのかな?」
「は、はい。します」
楽さんに連れられ、半強制的に小鳥遊の部屋に案内してもらった。扉には天音と書かれた看板がかけてあった。
ここが、小鳥遊の部屋か……
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