第4話
俺は黒板に書いてあるものを何度も確認した。
しかし、何度見ても俺の名前がそこには書かれていた。
「なんで、俺がリレーなんだ……起きてれば良かった……」
「みんな、秋さんのこと無視してましたよ」
小鳥遊はニヤニヤしながらこちらを見てきた。
最近は何かと面倒事に巻き込まれる体質になってしまった。退屈はしないが目立ちたくはない。そんな我儘が通じるなら上手くいってるよな。リレーか…走るのはあまり得意ではない…。
「まぁ、秋さんなら何とかなるよ!」
「その自信はどこから来るんだよ……」
「細かいことは気にしない!ほら、行くよ!」
そう言って小鳥遊は俺の手を握り、教室から出ていった。いきなり手を握られ走り出した俺は戸惑った。
「なんだよ…!待てって!」
俺がそう言うと小鳥遊は握っていた手を解いた。
「どこに行くんだよ!?」
「ボディーガードのこと忘れたの?」
小鳥遊の言葉に俺はふと頭の中で考えないようにしていたことが蘇ってきた。昼休憩の時の約束を。
「あっ…」
「思い出した?」
彼女は俺が思い出したのを勘づいたかの期待している顔をしていた。何をすればいいのだろうか。家までついて行けばいいだけだよな?
俺と小鳥遊は靴を履き替え、外に出た。小鳥遊は何故か嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、ボディーガードお願いします!」
「あぁ」
二人で外を歩いていると後ろから、誰かの目線を感じたが、今は反応はしないでおこう。
学校から歩いて、数分程で歩き慣れた商店街が目の前に広がった。昔からあるようなお店や真新しいお店まで並んでお店の人やお客さんで溢れていた。色んなお店から美味しそうな匂いが漂ってお腹が空く。
「いい匂いだね!」
「あぁ、そうだな」
俺の考えを見透かされている気がしたが気がするだけだった。誰かと一緒に帰るのは胡桃以外では久しぶな気がする。どこかで楽しいと思っていた。
何気ない会話をするのは胡桃以外ないと思う。最近まではバンド活動で忙しかったからな。
すると、小鳥遊が含みのある笑みを向けながら、言ってきた。
「秋さん。こうやって一緒に歩いてると恋人みたいですね!」
「冗談はよせよ...」
「顔が赤いよ?照れてるのー?」
女の子の押しには弱く俺は顔を赤くした。冗談のつもりで言った小鳥遊だったが俺と同じく顔が赤かった。
「お前、俺の正体知ってんのにそんなこと言って恥ずかしくないのか?」
「私は冗談のつもりで言ってるよ。本当だと思った?」
ニヤッとした彼女は俺を試すような顔になってそう言ってきた。別に付き合いたい訳では無いが…
すると、彼女が「何か言った?」みたいな顔をしていた。やっぱり考えを見透かされていると思った。
10分ぐらい歩いてると商店街を抜けいつも歩いている道に出た。
「家はまだなのか?」
「もうすぐです!道を真っ直ぐ行って左に曲がって右に曲がれば着きます!」
「大雑把だな」
俺は苦笑をうかべ、小鳥遊の適当さに笑いが込み上げてきた。数分歩いていると、夕日が沈んできた。
ここの道はよく知っている。夕方になると夕日が綺麗に見えると有名だ。近くには、川が流れていて水の音がこの夏の暑さを吹き飛ばしてくれる。川に反射する夕日はとても綺麗だ。
「この道綺麗ですよね。私、子供の時からお父さんとこの夕日を見てたんですよ」
「俺もこの夕日をたまに見てるがいつになっても変わらず綺麗だ」
「何年も見続けているんですけど、変わらない景色でいいんです」
何気なく歩いていたが、こうやって見てみると何だか心が浄化されるような気分だ。
1、2分、夕日に見とれていた。幻想的な世界で引き込まれそうになっていたのを小鳥遊が現実世界に戻した。
「じゃあ、行きましょうか!」
「あ、あぁ」
止めていた足を動かして出発した。
俺はふと、小鳥遊の家までの道のりを思い出した。まっすぐ行って左に曲がり右に曲がればつくってことは………少し考えた結果分かったことがある。
───俺の家までの道のりじゃねぇか!
いや、深く考えるのやめよう。きっと、気のせいだ。俺は疲れているんだ。家に帰ってすぐ寝よう。それがいい。
「着きました!ここが私の家です!」
「え……?」
ここの豪邸が小鳥遊の家?俺の家と近所じゃねーか!!
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