第3話

 昼休憩が終わり、授業が始まる予鈴のチャイムがなった。教室に戻ったあとも屋上で話したことが理解出来ていなかった。


 今日の5、6時間は2つとも、HRだった。


「えっーと、今日のHRは体育大会の説明と種目決めをやります」


 先生がそう言うとクラス全員が声をあげ盛り上がった。どの種目にでるか友達と相談している人がいっぱいいる。俺は体育大会という行事は嫌いだ。なぜなら、姿を隠している身としは自分から晒しに行ってるようなものだからだ。

 まぁ、やる気があったとしても俺は決定権を持っていないから余りの競技をやらされるだけだからな。俺は自分の哀れさにさすがに笑ってしまった。


 俺は机に突っ伏し、腕に顔を埋めていると隣の席の胡桃が話しかけてきた。


「秋は種目何にする?私はもちろんハンドボール投げ!ソフト部の力、なめないでね!」


 笑いながら胡桃は手を挙げた。


「胡桃らしいな。俺は余ったものでいいよ」


 そう話をしていると先生が体育大会の説明を初めた。5時間目は説明で丸々つかった。次の時間は種目決めだ。みんなが盛り上がってざわざわしている。


 すると、陽キャ集団から離れるようにこちらに近づいてくる人がいた。小鳥遊だ。俺は寝たふりをしたが間に合わなかった。間に合ったとしても話しかけてくるだろうと思いつつ俺は下を向いた。


「秋くーん!種目は何にするの?」


 クラス全体に響くような大きな声で聞いてきた。クラスの全員、陽キャ集団が不思議な顔でこちらを見てきた。


「おい!大きな声をだすな!」


 小さい声で俺は小鳥遊にこう言った。


「屋上で隠れた意味がねぇじゃねぇか…!」


「あ!そっか!」


 小鳥遊はそれに気づいたのか少し恥ずかしそうにしていた。俺は息をつき、さっきの質問に答えた。


「俺は余ったやつでいいよ」


すると、小鳥遊は何かを考えるように首を傾けたが数秒経った後、何かを思いついたかなように顔を上げた。


「私もそうしようかな~」


 小鳥遊と話していると授業が始まるチャイムがなり、先生がやってきた。

 小鳥遊が陽キャ集団に戻ると小さい声だが、「大丈夫?」「なにかされなかった?」と小鳥遊を心配する声が聞こえていた。何故か、鋭い目付きを向けられた。すると、先生がやってきた。


「チャイムなってるぞー席につけー」


 先生が一声かけるとバラバラにたっていた人たちが自分の席に座った。



「さっきの続きだが種目決めは学級代表にやってもらうぞ。西園寺と真田。ここからはお前たちが仕切ってくれ」


「「はい」」


 二人同時に返事した。


「ここから仕切っていく学級代表の真田と西園寺です。よろしくお願いします」


 挨拶が終わると早速、種目決めが行われた。


 ここで、学級代表の紹介をしよう。

 真田夏は顔はよく、成績優秀、スポーツ万能、ルックスもそれなりにいい。いわゆるイケメンという人種だ。俺とは関わりのない人だな。


 西園寺冬華。真田と同じで成績優秀、スポーツ万能。胡桃と同じくソフト部でキャプテンだ。一時期、付き合っているという噂が流れたが今では、落ち着いている。


 この二人にはファンクラブができるほどの人気があった。クラスが同じなだけで、嫉妬する人が現れるほど人気な人たちだ。


「早速、種目を聞いていきます」


 それから30分をかけて種目が決まった。


 退屈な気分だったので俺は机に突っ伏して腕に顔を埋めた。段々と眠りが深くなっているのを実感し周りの声がごにょごにょと聞こえてきた。

 俺はいつの間にか鼻息をたて、ぐっすりと寝てしまっていた。



 ―――俺はチャイムの音を聞き、目が覚めた。周りは異様に静かで、顔をあげると誰もいなかった。時計を見てみるとすでに授業が終わってる時間だった。いつの間にか寝てしまっていたらしい。机の横にかかっているバックを取るために横を向くと、そこには小鳥遊が座っていた。


「うわっ!」


 俺はビックリして椅子から転げ落ちた。なんで小鳥遊がここにいるんだ?


「あはは!秋さんて、以外とどんくさいんだね!」


「笑うな!い、いきなりすぎて驚いただけだ」


 俺はおしりに着いた埃をはらい、一旦落ち着いて小鳥遊に聞いた。


「なんでここにいるんだ?もしかして、俺を待ってたのか?」


 聞いた数秒間、小鳥遊は黙りしていた。再び、口を開くと聞いてきた。


「昼のこと覚えてる?」


 小鳥遊の言葉になにかを思い出してきた。多分あれだよな。思いついたことを小鳥遊に聞いてみた。


「それってボディーガードのことか?」


「正解!」


 忘れていたとまではいかないが冗談だと思っていた。そういえばこいつに頼まれていたんだ。結局、わからず仕舞いで話が終わっていた。俺は悩んだ。秘密をばらされるかボディーガードを受けるか。どちらとも嫌だが、悩んだ末、背に腹はかえられぬということで受けることにした。


「いつまでやればいい」


「引き受けてくれるんだ!」


「一応な。で、いつまでだ?」


「卒業まで!」


「は?」


 俺は素の反応をしてしまった。卒業まで?冗談じゃない。俺はバンド活動で忙しいのにずっとボディーガードをやれって?俺の学校生活は目立たず平凡で快適な生活じゃないの?なんでこんなやつに‥‥


「引き受けてくれないなら、わかってるよね~」


「選択の余地はないのか?」


「ないよ!よし!決まりね!今日から早速お願いね!」


「理不尽だな」

 

めんどくさいがこれもしょうがないな。


「あ、そういえば秋さんの種目決まったよ」


 俺は椅子から立ち上がり黒板まで歩いて自分の名前が書いてある種目を探した。


 あった!俺の種目は‥‥リレー!?





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