第2話
俺はベンチから頭を出し、屋上に人がいないかを確認した後、落ち着くために一息置き再び顔を上げ小鳥遊に聞いた。
「いつ気付いたんだ?」
「うーんと、声が似てるとか?」
「俺はお前と喋ったことなんてないぞ?」
「秋さんの隣の間宮さん?だっけ?その人と喋ってる声が聞こえてくるんですよ」
「そ、そうか…。声だけで分かったのか?」
「他にもあって仕草とか似てるなって」
「仕草だけで分かるとは……」
「まぁ、私は獅子王天馬さんの大ファンなので!」
バレた原因を聞く度に何故か背中をさすられているような気分だった。自信満々に言う彼女はどこか満足そうな顔をしていた。
「ここまで簡単にバレるとは…他の人にもバレてるのか?」
「多分、気づいてるのは私だけです」
小鳥遊の言ったことにどこか安心した自分がいた。俺はため息を深く着いた。いや、まだ安心は出来ない。小鳥遊が俺の正体をばらす可能性は低いと思うが一応、小鳥遊にばらさないようお願いしてみることにした。
「まぁ、このことは誰にも言うなよ。バレたら大変なことになる」
俺は小鳥遊の顔をじっと見つめた。すると、小鳥遊の顔は真剣な顔から不敵な笑みを浮かべた。
「どうしよっかな〜」
その言い方にはどこか嫌な感じがしてこのまま、バラされるのではと思った。
「なんだ、その顔は?何か企んでるのか?」
「よくお分かりで!ばらさない代わりに1つ条件があります!」
「なんだ?」
何かを企んでるような感じがした。俺はこの先大変なことになるのではと思った。
「ボディガードをお願いしたいです!」
嫌な考えが当たってしまった。
しかし、俺は理解が出来なかった。なぜ小鳥遊のボディガードをしなければいけないのか。有名人なのか?大手企業の社長の娘とか?俺は疑問思い小鳥遊に聞いた。
「なんで、小鳥遊のボディガードをしなきゃいけないだ?」
「私って可愛いから守って欲しいなーなんて!」
言われてみればそうだった。小鳥遊は普通に可愛いと思う。だが、ボディーガードが必要なのか?と俺は頭の中で疑問を浮かべた。
「それを守らないとどうなる?」
「それはね〜秘密!」
「なんだそれ。小鳥遊はどこかの社長の令嬢なのか?」
そう聞くと小鳥遊は余裕そうだった顔がどこか表情が固くなった。
「そ、そんなわけないじゃないですか〜やめてくださいよ!」
明らかに動揺しているが確信は出来ない。ここまで聞いて正体を明かせば秘密をバラさせる可能性がある。俺は冷静な判断をし的確な返答をした。
「そうか」
「そうですよ!変なこと言わないでください!」
俺は小鳥遊の言葉に少し腹が立った。
それに、いきなり言われてびっくりしたが、受け入れないといけなさそうだ。己の身は自分で守れるようにバンド活動外で格闘技をやっていたからボディーガード位はできるんだが......
「俺と居て変な噂がたったらどうする?俺は大丈夫だが、小鳥遊の立場はどうするんだ?」
「それは大丈夫!それと、変な噂って〜?」
小鳥遊はにこにこしながらバカにするかのような表情で聞いてきた。答えは分かりきっているが口に出すのは少し恥ずかしい。
「た、例えば……」
「う〜ん?例えば〜?」
小鳥遊が聞き返した時、屋上の扉が開き俺のクラスのスクールカースト上位の陽キャ女子たちが入ってきた。
それに気づいた小鳥遊はすぐさまベンチの後ろに隠れ気づかれないように静かにしていた。
「あいついんじゃん」
「まじか。今日は屋上で食べるのやめとこ」
「まじ最悪〜。あそこのベンチ私の特等席なのに…」
「教室戻ろ〜」
言いたい放題言って彼女らは屋上から出ていった。それも仕方ないと分かっているが何故か心が痛かった。だが、こうやって1人でいた方がバレる可能性は低くなる。自分でぼっちになってるだけだからな。
―――決して、友達が居ないわけじゃない。
陽キャ女子が出ていったのを確認した俺は小鳥遊に声をかけた。
「小鳥遊、もう行ったよ」
「ふ〜危なかった〜」
俺と小鳥遊がここにいることはバレる訳には行かなかった。余計に話がややこしくなる。
「いやぁ〜言いたい放題ですね〜」
「お前も知ってるだろ。俺のクラスでの立ち位置を」
「もちろんですけど、ここまで言われてるとは思わなくて〜」
「はぁ......」
軽いノリの小鳥遊に俺は深くため息をついた。
すると、小鳥遊は屋上の出口まで走って向かっていった。
「じゃあ、私は教室に戻りますね!」
「お、おい!」
「あ、ボディーガードの件考えといてくださいね?」
俺の話を聞かずに小鳥遊は屋上から出ていった。その時、小鳥遊は何故か嬉しそうに手を振って出ていった。
深い溜息をつき開いていた弁当箱を閉じた。すると、同じタイミングで昼休憩が終わる予鈴のチャイムが鳴った。
俺の学校生活はどうなっちゃうの?
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