第58話 盗賊の頭 ザイル

「頭、良い情報が手に入りましたぜ!」


 俺は盗賊の頭ザイル。長年山に住んで旅人からちぃとばかり物を頂いてる。


今回はどこかの貴族が山道で俺たちと遭遇した。奴等は運が悪かったと思うしかねえな。残念ながら女は乗っていなかった。男はいらねぇ。子分達はいつものように殺そうとした時、情報と引き換えに助けてくれと言ってきた。


 どうやらこの山の奥にある封印の解き方らしい。確かにこの山の奥の岩陰にある封印は俺達も知っている。財宝が眠っているらしい。


 その昔、ある人間が魔女と仲良くなり、500年後に封印を解く約束をしていたらしい。その封印を解く代わりに財宝を手にすると。眉唾物の話だが、貴族は真剣に話すので俺は興味を持った。俺は貴族が言っていた男を子分達に探させた。案外その男はすぐに見つかった。俺はその情報を元に、鍵となる人物の監視をしていたが、俺とは真逆。


品行方正、正義の塊みたいな奴だった。


何も無いままでコイツを従わせるのは難しいだろう。魔女なら従わせる方法があると聞き、魔女の元へ向かった。


魔女を必要とする時には森が開かれると噂だったが、本当だったようだ。


 

 

 小屋をノックすると出てきた1人の魔女。良い女だ。俺の物にしたいねぇ。だが、部屋へ入る時に気づいた。


コイツ、足が蛇だ。


人間じゃないのか!


 流石の俺でも人間の姿をした魔物にはビビった。そして部屋に入ると、部屋に入るとテーブルと椅子が置かれていて、壁には所狭しと薬らしき物が置かれていた。


そして驚くことに外からは小さな小屋なのに部屋が数部屋ありそうだ。不思議な作りに驚いた。人間には絶対出来ないだろう。やはり俺に幻覚を使い殺すのか?そう思っていたが、魔女は俺の考えを気にする事なく用件を聞いてきた。


人を操るような物が薬があれば欲しいと。封印の話もした。本来なら話すべきでは無い。財宝を減らす事になるからな。けど、魔女は対価で動くと聞く。財宝があれば協力を惜しまないだろう。魔女は俺の目の前で1匹の蜘蛛を取り出した。


コイツ1匹で人を操るだと?


俺は騙されたのか?


まぁ、いい。報酬は財宝を手に入れてからだしな。


 捕まえる男は代々魔法使いを輩出している家系らしい。押さえつけて捕まえようにも魔法を使って解くのだろう。捕まえるには厄介だが、やはり魔女から貰った蜘蛛を使うしかない。



 男が領地へ帰る話を聞いたので郊外で待ち伏せし、馬車を襲った。案の定、男は魔法で抵抗してきたが、気づけば俺の肩から居なくなった蜘蛛が男の肩に糸を垂らして乗ったようでそこから男はピタリと動かなくなった。


「こいつぁ凄いな!封印を解いた後、こいつを使って一儲けしてやるか」


俺は1匹の蜘蛛に大いに感謝した。




俺達は早速、財宝が眠る封印の地へとやってきた。


「おい、やれ!」


俺は嫌がる男に命令すると、男の身体は勝手に動くようで魔法陣を構築し始めた。俺や子分達はその様子を後ろでみているだけだが、もう少しで財宝が手に入ると思うと上機嫌になる。


そしてパリンと封印が壊れるような音がした。


「おい、行くぞ!」


 俺は男を連れて人1人が通れるほどの通路を歩き始める。洞窟は暗いと思いきや、薄ぼんやりと光があり、灯りがなくても歩いていけるほどだ。


不思議な空間だな。


そして広い場所に出てきたと思ったら、そこには竜が眠っていた。


ちくしょう!これはやばい。


逃げるしかねぇ。


子分達は俺達の後ろからゾロゾロと入ってきた。引き返すのに時間が掛かる。煩くすれば竜は目覚め、俺たちは一気に消されるだろう。竜の巣だったとはな。


 俺たちは急いで引き返そうとしたが一足遅かったようだ。


「我の眠りを覚ます者は誰だ」


竜が俺たちに問いかけてきたが、もちろん俺たちはその答えを知らない。操っていた男もその答えを知らないようだ。ガチガチと震えている。


「目障りな人間共め、消えろ」


竜はそう一言発した。


…ああ、俺たちは失敗した。

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