第56話 呪いの子 アンファンside

「呪い子だわ、死ね!死ねばいいのよ!」


「その悍ましい風貌。まるで悪魔だなっ!この村を呪う気だろう!」


村人達はそう言って俺を追い立てる。


 母は僕を産んでからすぐに死んだ。父は僕が母を呪い殺したと地下の部屋に何年も閉じ込めた。


薄暗い部屋には本棚と机と椅子、ベッドとトイレがあるだけ。何年も1人で居る事に気が狂いそうだった。たまに食事を持ってくる父。


機嫌が悪い時は僕に殴ったり、蹴ったりして気を失うまで暴力が続けられる。


俺のせいじゃない、僕は何も悪くない。


殺してやる!


 ずっとそればかりを考え続けた。時折どこからか這い出てくる蜘蛛や虫達を見つけてはそっと力を与えてやる。


 僕はどうやら魔力というものを持っているらしい。使い方がよくわからなかったが、虫達に気付けばいつのまにか分け与える事が出来ていた。


「僕の代わりに外へ出て行くんだ」


そうして虫達に力を与え続けてきたある日、ガチャッと鍵を開ける音がした。部屋に入ってきたのは1匹の大きな蜘蛛。


「…お前が開けたのか?」



 僕は蜘蛛を肩に乗せて恐る恐る部屋を出てみると父は首を掻くような形で床に倒れて死んでいた。


僕は逃げるように家の外に出た。


初めて見る外の世界。


僕はどうしていいか分からずに歩いていると行き交う人達が俺を見て驚き、石を投げてくる。悪魔だと。


 僕はすぐに村人達に捕まり殴る蹴るの暴力を受ける。僕が何をしたというんだ。


悔しかった。


恨みばかりが募っていく。


「村で死なれると呪いがかかるやもしれん」


と1人の老人が言葉を発すると人々は僕を荷台にのせて魔女の森へと投げ捨てた。僕は殴られるために産まれて死ぬのか。


 村人達が居なくなるとどこからともなく虫達が集まり、動けない僕をどこかに運び始めた。森を抜けどこかの小屋の前に僕を下ろすと虫達は散り散りに何処かへ行ってしまった。


小屋に入れって事かな。


でも、もう動けないや。


 そう思っていると誰かが僕を引き摺ってあるく。僕にはもう抵抗する力もない。ボーッと考える力もなく見ていると女が何かを話している。そして男に抱えられて部屋へと入っていった。


無理矢理飲まされた液体は苦くてまずかった。でも液体を飲んだら体の痛みが消えてびっくりするほど元気になった。


周りを見渡すと村にいた人達とは違う形をしている人がいる。僕はまた殴られるんじゃないかって警戒しながら差し出されたパンを口にする。


これから僕はどうなるんだろう?


そう思っているとダイモーンと呼ばれた人に付いていく事になったみたい。


「君の名前はなんて言うのかなー⭐︎」


連れてこられたのは広い部屋。ベッドと机とソファや本棚がある。僕はソファに座らされて聞かれている。


「…お前って言われていた」


「ふぅん。名前じゃないねぇ。そうだ♪じゃぁ、僕が名付けてあげよう!君は今日からアンファンね⭐︎僕はダイモーン。人間はデーモンとかデビルなんて言うけどね⭐︎僕の弟子だよ!宜しく♪」


そう男は笑いながら言ってきた。


 ダイモーンはその日から数年間、人間の知識を僕には叩き込んできた。スパルタだった。読み書きから歴史、食事のマナーに至るまで。それと同時に魔法の訓練。魂の狩り方。


悪魔と呼ばれるだけあって本当に色々と悪魔だった。だが、人間が僕にしてきた仕打ちに比べるとダイモーンはとても優しかった。


「師匠っ!僕、そろそろ成長を止めても良いですか?」


「あぁ良いよー⭐︎あの魔女っ子に薬を頼んでおくから」


僕は魔女様の薬と師匠の協力で下っ端だけど魔人になった。


「アンファンおめでとう⭐︎」


数年経った今も人間は嫌いだ。憎い。苦しめる対象でしか無い。師匠は僕にそれで良いと言ってくれるんだ。師匠は人間と契約して魂を貰ってくると言ってた。絶望を味わった魂はこの上無い輝きを放つのだと。


僕も師匠に教わりながら魂を狩るけど、まだまだ先は長そうだ。


これからも師匠について行くよ。

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