第55話 呪いの子
私はいつものように薬草の手入れをしていると、玄関前から少しの物音と何かの気配がした。
「ガロン、何かしら?」
ガロンはさっと玄関前に向かったと思うとすぐに戻ってきた。けれどガロンは人型になっており、何かを引き摺っている。
「エイシャ様、人間の子が落ちておりましたぞ。このズダボロ具合。親に虐待され、捨てられたのかも知れませんな」
私は近づいて子供を診る。10歳位だろうか。意識はうっすらあるようだが、衰弱が激しく今にも死にそうね。
「あら、これは面白い拾い物よガロン。白髪に赤と金のオッドアイ。よくこの歳まで生きてこれたわねぇ。人間って珍しい子を不吉だって殺すんでしょう?」
「エイシャ様。この童、どうされますかな?」
「そうねぇ、この子は相当な魔力を持っているようだし、ダイモーンはちょうど弟子が欲しいって言っていた気がするわ。彼にあげればいいかしら。きっと喜んでくるわ」
「ダイモーンですかな。奴も喜ぶに違いないですな」
ガロンは引き摺っていた子供を抱き起こし、魔法で身綺麗にしてやる。
「ガロン、部屋に連れて行って着替えと回復薬をあげてちょうだい。私はダイモーンに連絡を取ってからいくわ」
「分かりましたぞ」
ガロンはそう言うと、子供を抱き抱え、家へと戻って行った。私はそのままダイモーンへメッセージを飛ばす。するとすぐに返事が返ってきたわ。
『その連絡を待ってたよ~⭐︎今、ちょ~っと取り込み中だ、か、ら、終わったらすぐに取りに行くよ~⭐︎』
相変わらず軽いわね。
私は家に戻り、子供の様子を見に行く。
回復薬を飲んだようですっかり元気になった様子。けれど、長年の虐待ですっかり自分以外は敵だと認識しているようね。こちらを睨みつけるように威嚇しているわ。
私は構わずにパンとスープを子供に出してやると勢いよく手づかみで食べ始めた。パンを口に押し込み、手でスープを掬い飲みこむ。
「へぇ、よく心を折られなかったわね。その精神力に期待したいわ」
長期に渡り虐待や奴隷として暴力を受けると人間は自我が無くすように無気力、無抵抗になっていくのに。素質は充分のようね。
食事の様子を眺めていると、入り口の方から転移の陣が光と共に浮かび上がり、1人の男が姿を現した。細身で長身、ピエロのような顔に悪魔の尻尾。
「麗しの魔女っ子ちゃーん。君の熱いメッセージに心を打たれてすぐに来ちゃったよー⭐︎」
「ダイモーン、よく来てくれたわ。うちの前に落ちていたの。持って帰ってちょうだい。この子なら貴方の弟子でも大丈夫な気がするのよね」
私は必死でパンを口に詰め込んでいる子供に視線を向ける。
「どれどれー?ふぅん。オッドアイね!イイね!この反抗的な目!シビれるー⭐︎」
ダイモーンは入り口からパッと子供の側に現れ、ふざけた事を言いながら詳しく調べている様子。子供は彼にジロジロ見られるのにイラ立ったようでフォークを掴み刺そうとするが、ダイモーンには触れる事が出来ずに驚き動揺した姿をみせた。
「良いねー⭐︎この反抗的な態度。気に入ったよ♪魔女っ子、引き受けるよー⭐︎」
ダイモーンは上機嫌になり子供の上をふわふわと飛び始めた。
「助かるわ。後を宜しくね。必要な物があったら後で言ってちょうだいな」
「そうだねー⭐︎上手く仕上がったらいいなー⭐︎じゃぁ、そろそろ行こうか。少年⭐︎僕についておいで⭐︎」
ダイモーンは床に降り立つと指を1つ鳴らした。するとフォークがカランと落ち、体は抵抗出来ないようで唸りながらも歩いてダイモーンの横に立った。
「魔女っ子ちゃーん⭐︎じゃ、待ったねー⭐︎」
ダイモーンは大きく手を振って消えていった。
「相変わらずあやつは五月蝿いですな」
「ふふっ。そうねぇ。彼の今後が楽しみね」
私はそう言ってフォークを拾い、ガロンが差出したお茶を飲んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます