第9話 ストロベリーブロンドの娘 アイシャside

 私の名前はアイシャ。男爵のご落胤って事で平民として過ごしていたけれど、母の死と共に父に引き取られた。父は上位貴族の繋がりが欲しくて私を引き取り、嫁がせようとしているわ。そのために学園にも通わせた。その事には感謝しないとね。


 学園ではご令嬢達に人気絶大な王太子殿下とその側近達。王太子殿下は無理にしても側近の誰かを落としたいわ。


ここで失敗すれば私は年寄りの後妻や不細工な人と結婚させられてしまうもの。


私は街で噂となっている魔女に薬を作って貰おうと考えたの。上位貴族をがっちり捕まえてしまえば後は楽ちんな人生が待っているのよ。




森は魔獣が出ると噂があったけれど、会う事なく家にたどり着いた。


魔女に案内され入った家の中。部屋は薬草や何かの小瓶が棚に沢山置かれているわ。さすが魔女って感じの家ね。席に着くと男がお茶を淹れてくれた。その男をよく見るとなんて格好いいの!魔女はとっても格好良い男を従者にしていた。羨ましい。


この人、私を好きになってくれないかしら?そう思ってカップを取る時にそっと触れてみたけれど、この格好良い人は私の事を虫でも見るかのような視線で睨まれた。


失敗したわ。残念。


よく見ると、魔女に甘い視線を送っている。悔しいわ!足が蛇のこんな化け物より私の方が絶対若くて可愛いのに。


魔女は私の要求通りに惚れ薬を作ってくれた。香りも良いし、お菓子に混ぜるといいかも。


早く帰ってお菓子を作らなきゃ。

私はお礼もそこそこに急いで家に帰った。



 翌日からそっと香りが分かるように首元に香水のようにそっと香りをつけて自分の取り巻きを取り込みながら王太子の側近へと徐々に手を伸ばして行った。


男達がコロッと堕ちる様は笑いが止まらなかった。


学園で側近達と中庭でお茶をする時には必ず惚れ薬を入れたわ。途中で側近の婚約者達は文句を言いに来たけれど、彼等は既に私の魅力に夢中で婚約者達を追い返した。


あははっ。簡単ね。これなら王太子も簡単に堕ちそうだわ。案の定、王太子もコロッといったわ。


みんな私の我儘を聞いてくれる。


綺麗だって褒めてくれる。


沢山贈り物をしてくれるわ。


 やはり私はいい女なのね!傾国の美女って私の事だわ。このまま王妃になってもいいわね。



男達は皆んな私に跪くべきなのよ。





 王太子に惚れ薬の飲ませて半月後、学園の卒業と共に王太子は豹変した。それと同じくして側近達も。愛という名の独占欲に支配された王太子達。王太子と側近達との間に殺し合いをしそうな程の言い合いになっている。


「私の事で争わないで」


ウルウルと潤んだ目をして男達に言ったのが間違いだったわ。彼等は仲良く共有しようとなり、私を後宮の一室へ閉じ込めた。


そこからは酷い有り様だったわ。愛していると皆囁きながら私の身体を貪っていく。


私の意思なんて無いかのように。


苦しくて、辛くて、逃げだそうとしたわ。


けれど、私を捕まえて鎖で繋いだ。魔女が部屋に来た時、私は助かったと思った。


・・・けれど、違った。


魔女は支払っていない対価を取りに来た。私は対価として目を抉られ光を無くした。そして魔女を呼ぼうとすると喉が焼けつくように痛み、いつのまにか声も枯れてしまっていた。


王太子達は『これで逃げ出さなくていいね』と喜んでいる。


あぁ。誰か助けて。

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