第7話 魔女の弟子 モリスside

 俺の名はモリス。平民から王宮魔法使いにまで上り詰めた男だ。皆、揃って平民上がりである俺を馬鹿にしている。

爵位や役職が有れば箔も付いて誰も俺の事を馬鹿にする事はないのに。くそっ。忌々しい。


 ある日、同僚の一人から魔女エキドナの話を聞いた。先日、隣国の目覚めぬ王女を魔女が起こしたらしい。

その話を聞いて俺は良い事を思い付いた。あの有名な魔女の弟子になればそれこそ立派な箔が付くのではないか、と。


 いそいそと俺は魔女の森へやってきた。魔獣が出るという噂だったが、遭わずに家へと辿り着いたらしい。ははっ。やっぱり俺はツいてるなぁ。



ー トントントン ー



 返事と共に扉が開いて中から出てきたのは絶世の美女じゃないか。目を布で覆ってはいるが、透き通るような白い肌、口付けしたくなるような淡い唇。華奢な体つき。こんな美女を師匠に出来るとは俺も鼻が高い。しかし、エキドナが後ろを向き、部屋に入る時に見てしまった。


足が、無い。蛇だ。こいつ、化け物なのか?


まあいい。弟子になってしまえばこちらのものだ。


 俺は魔女に弟子にしてもらうように願った。けれど、弟子を取らないだと?くそっ。俺は縋り付くようにして願った。


「仕方がないわねぇ。弟子になれるかみてあげるわ。私の弟子になるにはある程度の魔力が必要なの。」


そう言って魔女は俺にチャンスをくれたのだ。種を額に?早速付けてみたが特に問題が無いようだ。


足りない場合は魔力量が種を通して徐々に増えると言っていたな。カインと言う男に送られて森の外へやってきたが、あの男は魔女の男か?弟子では無い様子。


あの魔女は化け物だったが、美しくもあった。弟子になり魔法を覚えた暁にはあの魔女を奴隷として飼ってやってもいいな。


 俺はそんな考えをしつつ、自宅へ戻る。翌日からの仕事は怠かったが、いつもより魔法の精度や威力が上がったような気がする。

種の力なのか。同僚や上司達は舌を巻いているのか一線を置き始めた。同僚で同じ平民の一人は俺を心配してくれているようだ。



 種を付けて4日目。上司から俺は呼び出された。『目が赤いぞ?大丈夫か。頬も痩けているし、無理をするな暫く休め』と言ってきた。可笑しな事を言うもんだ。

俺は今までになく体調は良い。魔力も種を付ける前とは比較にならないほど強くなっている。上司には大丈夫だと言ったのだが聞いてもらえず上司からの命令で休暇を無理矢理取らされた。休めだと!?


文句を言っても仕方がない、仕事を休んでいる間に森へ行き魔力量の確認とともに魔獣を倒してやろう。


俺は近場の魔獣の森へ赴き、狩を始めた。

身の丈3メートルはあるようなオークやポイズンスネーク。魔獣達は不思議と沢山俺に向かってきた。

魔法を唱えるとあっさりと魔獣達は燃え、首を落とし、粉砕出来た。


ふははははっ。強い!強いぞ!俺は強い!魔獣が綿のような柔らかさだ。疲れも無い。なんて素晴らしいんだ。



 7日目の朝、倒した魔獣達をギルドの買い取りへ持って行くと受付の男達は引き攣った顔をしている。あぁ、身体を洗うのを忘れていたから全身血塗れだったな。


魔獣の血は取れにくい。どれ、そろそろ1週間が経ったな。魔女の森へ向かうか。森に入り、魔法で魔獣の返り血を洗い流す。もう大丈夫だろう。


 魔女の家へと辿り着いた。またあの男が扉を開けた。


あぁ、忌々しい。魔女は俺だけの物だ。


「あらあら。1週間前の彼?随分と変わったのね。素敵よ。でも残念だけど、弟子にするにはまだ魔力が足りなかったみたいね。ごめんなさいね。不合格よ」


そう言って魔女は扉を閉めた。そんな馬鹿な!


俺は強くなった。何故認めない? 


ぐぐぁぁ。身体が熱い。俺は焼けつくような痛みに大声をあげる。


ふと周りを見ると先程とは違う景色。魔女の家は無くなり、どこを見回しても森の中だ。


魔女、魔女は何処へ行った?


俺は森を彷徨い歩いていると、1匹の魔物がこちらへやって来た。



「アタラシイ、ナカマ。ヨロシク」

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