第5話 黒色鎧の男 カインside
森へ逃げたぞ!追え!…駄目だ。この森は…だ。一旦引け。
遠くから追っ手の声が聞こえる。
・・・助かった。
俺の名はカイン・ラナク・ナタクール。ナタクール国の第二王子だった。ナタクール国は一部の貴族の反乱により国は存亡の危機となっている。
きっと家族はみんな殺されてしまっただろう。
兄が王太子となり俺は騎士団長となって王家を支えていく予定だった。そして俺はたまたま隣国近くの森で魔獣が出たと騎士団に連絡が入り討伐に出ていた。
貴族達の王位簒奪の知らせを聞いた騎士達は追手を振り切り俺を命をかけて隣国に送り出してくれた。
俺は逃げて、逃げて、この森に辿り着いた。だが、この森は追っ手が手を引くような森だった。
魔獣がそこかしこに存在し、逃げるのに精一杯だった。そしてあの時、死を覚悟していた。
魔女エキドナの家の前で。
どうやら彼女は俺の命を助けて介抱してくれたようだ。扉の前で倒れてから目が覚める1週間は全くの記憶が無い。エキドナは当たり前だと言っていたが。
彼女はいつもレースのアイマスクをしている。俺は彼女の姿を見た時は何とも言えない感情に襲われた。
この世とは思えぬその美貌。細く白い手。すぐ折れてしまいそうな華奢な身体。
けれど、それとは似つかわしくない大蛇の尾。彼女は人間なのだろうか。それとも神なのだろうか。
行く当てのない俺に気づいたのか暫く置いてくれるという。1週間、寝たきりだった俺はエキドナ様の言う通りに起き上がったり、部屋の中を歩くリハビリから始めた。
元々体力はあった方だが、国から何日もろくに食べずに逃げたおかげで傷は回復しても魔獣を討伐するまでの体力は戻っていなかった。少しずつやるしかないな。
数日経った頃、彼女は突然俺の部屋を作った。国の魔法使いが使うような魔法とは全く違う。正直驚いていた。新しく出来た俺の部屋は結構な広さだった。
エキドナ様は街に買い出しに行くと言っていたが大丈夫だろうか。魔法で人間の足に変化させていたが、あの美貌を隠さないと狙われてしまうのではないかと心配になる。
俺は次にエキドナ様が街に降りる時に護衛を買って出る事が出来るように身体を再度鍛える事を心に固く誓った。
エキドナ様が街から帰ってきた。
…なんだこれは。
少女が家具を引き連れている。
俺の部屋の家具を買ってきたと意気揚々と言っているが驚くしかない。俺はエキドナ様の言う通りに新しくできた自分の部屋へ家具を置いていった。やはり家具を置いても広い室内。
俺の替えの服も沢山買ったらしい。俺は何から何までしてもらっているな。体力も戻りつつある。
これからしっかりとエキドナ様の手伝いをしていこう。
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