We Don’t Talk Anymore
「なあ、白本、おまえ、不動ちゃんと付き合ってたんだろ? 顔、見せてきたら?」
白本涼は、そんなことを言う顔も忘れかけた同級生をにらみつけた。
「冗談、冗談だって! そうだよなあ、元カノとは顔を合わせづらいよなあ。うん」
おまえに何がわかる。おまえがいったい何を知っている。訳知り顔でいちいち騒ぎ立てやがって。目障り、いや、耳障りなんだよ。
白本は大きく舌打ちをして、煙草を灰皿に押し付けて火を消した。
「不動ちゃん、好きな人いるってよ!」
無言で壁を拳で殴りつけて、あの同級生に背を向けた。
だから同窓会になんか来たくなかったんだ。幹事のあいつの面子を潰さないために来たが、やっぱり来るんじゃなかった。
身体にカッカとマグマのようなものが全身を駆け巡る。それを冷ましたのは、不動、不動はつねではなく……。
「涼ちん、おっひさー」
瓜実ヒロ。白本と同じく不動の元彼。今、二番目に会いたくない相手。
ここで騒ぎを起こして、彼女に迷惑をかけるわけにいかない。白本は、そそくさとこの場を去ろうとしたが、瓜実の一言で足を止めた。
「こないだ、はつねちゃんと話したよ」
「なに?」
白本と不動は別れて以来、卒業式でも言葉を交わすことはなかった。顔だって、卒業してから見ていない。なのに、瓜実は彼女と話したと言う。
「彼女、フラレたんだってさ。俺が慰めたげたらニコニコ笑って、可愛かったよ。相変わらず、ね」
不動がフラレたと聞いて、白本は今でも彼女を想う自分を意識した。彼は、それを恥じた。
「今日も綺麗だった。俺はそれを言えなかったけど。これ、彼女には内緒ね」
「そりゃ、そうだろ。男二人を手玉に取った女だ。もしかしたら、今はもっと…かもしれないがな」
今更、彼女を想うなんて。今更すぎる。
しかし、彼女が他の男のためにドレスを着るのは見たくない。不動を想うのなら、不動の幸せを願うのなら、そう思ってはいけないはずなのに。
白本と瓜実は、彼女にキスをした輩にキックを食らわせてやると笑った。
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