救助求む声

潰れたトマト

救助求む声

ーーーーーーザザッ………ザ…………。


 ピーーーーーッ…………こ ………おん……。


 ……ッ!………………プツンッ!



 ※



 ザザッピッ


「こちら救助隊!本部聞こえますか?応答して下さい。救難信号の位置に到着したが救助対象が確認できない。周囲の安全確保をした後すぐに捜索を開始する。今後の連絡は後続のブラヴォーチームを通してするように。」



 ※



 ザザッピッ


「こちらスペースデブリ収集船TJ-20!救助を依頼する!地球へ帰還中何かの引力に引っ張られてそのまま不時着した!小惑星か何かだと思う……現在地はレーダーが不時着の際に破損したので分からない…。とにかく救難信号を送ったのでどうか助けに来てほしい!さっき周辺を見て廻ったがどうやら食糧は期待できなさそうだ……。それに、ガスの影響か地上が妙に脈打つように動いていて気味が悪い……。早くこんな所オサラバしたいよ……。」



 ※



 ザザッピッ



「や、やっと繋がった!頼む!誰か助けてくれ!ヤツに喰われちまう!巨大な赤子みてぇなバケモンが這いずり廻って俺たちを襲っているんだ!今、俺のいる遊泳船のすぐ側にいる…!お願いだ……すぐに助けに来てくれぇ…グスッ…死にたくねぇょ…………あ」



 ※



「………これは凄い。これぞまさしく世紀の大発見だ。太陽系に小惑星程の大きさの生命体的遊星が存在していることが明らかになったのだ。ああ失礼、わたしは宇宙学者のテディ博士。現在西暦2155年4月10日のアメリカ時間午後2時45分。私率いる惑星・遊星研究所は新たな新天地へと足を運んだのだ。この遊星は宇宙から見るとまるで胎児のような姿勢の女性を思わせる外観をしている。生きているようだが半年間の観察期間を経ても全く微動だにしない。音波や信号にも反応はない為、仮死状態といったところだろうか。危険を承知で着陸してみたが、星の中心から鼓動が聞こえているのを確認し感動にうち振るえている。小惑星並みの大きさをもつホモサピエンスの可能性があるのだ。研究を続ければそのルーツに辿り着けるかもしれない。このレポートを録った後、暫しの休憩を入れてまた探索を開始しようと思う。私のこの発見と研究の成果を地球に持ち帰る日が楽しみで仕方がない。今後のレポートに期待していてほしい。」



 ※



「こちら宇宙ステーション『電脳』、応答願います!月周辺に惑星レベルのサイズの知的生体を発見!我々人類に非常によく似た姿をしています!宇宙服もなしに呼吸できている様子から、宇宙空間での活動ができるようです!ゆっくりと宇宙を漂うように……?あっ!あああっ!目が……目が合った……!こちらに気づいたた……!?ひっ!!ひぃぃっ!気付いてる!気付いてるぅ!こちらに気付いて向かって来てるぅぅう!ひぃ!来ないでぇぇぇっ!!」



 ※



「緊急ニュースです!只今入ってきた情報によりますと、以前より非人道的として研究が中止していた人類宇宙適合化試験ステーションが、先程爆発しました!周囲数十キロメートルにステーションの破片が四散しています!近くの宇宙船は直ちに避難して下さい!また、地球にも一部の破片が大気圏を突入してくる可能性がある為、地球に住む方々はすぐに間近のシェルターへと避難して下さい!繰り返します!以前より非人道……」



 ※



「緊急事態発生!緊急事態発生!人類宇宙適合化試験ステーション内の研究員に告ぐ!機密部門にて事故発生!被検体381が脱走、なおも巨大化を続けており施設を破壊している!直ちに緊急脱出用カプセルにて避…………………ッ!」



 ※



「こほん。えー、本日は当プロジェクトにご参加頂いたスポンサーの皆様列びに研究協力して下さった企業の方々、御足労有り難う御座います。今日で丁度20周年を迎えることが出来たこのプロジェクトは、数々の非難や妨害と戦い、幾度とない失敗を経て遂にここまで辿り着くことができました。全ては皆々様のお陰で御座います。思えば当プロジェクトは人類の宇宙への移住と適合化を掲げた最初で最後の計画でした。様々な人体実験が物議をかもし、モラルの著しい欠落とされてこの宇宙ステーションは僅か1年半で閉鎖されました。しかし皆様からの支援金により、政府の支援無しでも充分な研究費を得て内密に研究を続けられる環境が整ったのです。倫理を犠牲に実験に明け暮れてはや20年。ようやく人類の移住と適合化を実現のものとする時がやってきたのです!ご紹介します、こちらが奇跡の集合体、被検体381です!この被検体381はなんとかつて我々の研究に反対していた団体のリーダーの娘なのです!我らの報復として誘拐してきた反対派の娘が、まさか我々の夢の実現を果たすとは誰もが思わなかったでしょう。この被検体381は月や火星から得られた未知の遺伝子を人間の遺伝子と組み合わせ、宇宙空間での呼吸や空気圧等の問題を全て解決したのです!その上なんと、オス無しでも自力で子供を胎内形成させる機能が偶発的に備わったのです!正しく奇跡の産物と言えましょう。それでは皆様長らくお待たせ致しました。今から被検体381を仮死状態から蘇生させ、新たな人類の理想形をご覧に入れましょう!どうぞっ!」



 ※



「お母さん……お父さん……これは脅迫じゃなくて、報復なんだって……。だから、わたしは助からないみたい……。……うん、そう。この生中継が終わったら、わたしを実験に使うって。それが、お前たち偽善者への罰だって。……大丈夫だよお母さん、そんなに泣かないで。お父さんの子供だもの。そんなにやわじゃないわ。それに、今も救助隊がこっちに向かっているんでしょ?それならきっと大丈夫……。ううん、そんなことない。お父さんたちは何も悪くなんかないよ。人を人とも思わないこの………ッ!!……うぅ……だ、大丈夫、このくらいへっちゃらだよ。全然痛くない。………ねぇお母さん、お父さん……。今までわたしを育ててくれて、ありがとう…。わたしをたくさん愛してくれて、ありがとう…。わたし、すごく幸せだった。お母さんとお父さんの子に生まれてよかった。だから……………グスッ………ごめん………泣かないつもりだったのに………余計悲しくさせちゃうのに……グスッ……うぅぅぅ……こわいよう……死にたくないよう………お母さん……お父さん………わたしを……助けにきてよ………。」

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救助求む声 潰れたトマト @ma-tyokusen

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