第14話
「幸也、これなんてどうだ?」
「ん?どれどれ―――――」
樹と二人でメンズ用の浴衣コーナーに着た俺らはせっかくだしお互いの似合いそうな浴衣を探すことになった。
まぁ実際俺のセンスには自信はないけど樹ならどんな浴衣も着こなすだろうと思い選び合うことを了承した。
イケメンとは本当に何でもにあって妬ましい限りだ。
そんなイケメンから差し出される浴衣はどれもこれもしっくりくる。
何だけど俺に浴衣を当てては樹が何だか違うと感じるのか浴衣は何度も選び直されている。
(……そんなに違うもんか?)
特にこだわりもない俺はそう思いながら樹が悩んでくれているのに俺が即決するわけにもいかない為、一応悩んでいるそぶりを見せながらいろいろな浴衣を見ている。
(まぁでも、樹の落ち着いた雰囲気を考えると藍色とかなんかいいよな。)
なんてことを思いながら手に持っていた浴衣を樹にあててみる。
(思った通り樹に合うかも。)
とはいえ樹はまだ悩んでくれている。
一応これは候補の一つということでほかの浴衣を見ようと思ったその時だった。
「何、お前らまだ悩んでんの?」
先程別れた明夫と陽葵ちゃんがお互いに袋を手に持って現れる。
陽葵ちゃんだけでなく明夫まで袋を持っているのが気になり明夫の袋に視線を注いでいると明夫が「あぁ、これか?」と切り出してくれた。
「実はひなちゃんに俺の浴衣選んでもらっちゃったんだ♪」
声を弾ませながら上機嫌で見せびらかすように袋をちらつかせてくる明夫。
そんな明夫を俺は睨む。
何一人だけおいしい思いしてるんだ、コイツは。
「ひなちゃんってばセンスいいんだぜ。この俺に似合う浴衣をさっと見繕ってくれたんだ。」
「せ、センスがいいなんてそんな!ただその、工藤君の明るい雰囲気に合うなぁって思って……。」
気恥ずかしそうに照れながらいう陽葵ちゃん。
何?なんでこの二人めちゃくちゃいい感じなの?
しかも……
(俺は阿久津さんで明夫は工藤君……?)
何故だろう。
彼女の仲での親しいランキングにおいて俺は明夫に抜かれた気がする。
何たる屈辱……。
「陽葵ちゃん、俺のも選んで!!」
「あ、こら幸也!お前のは俺が選んでるってのに――――ったく、本当にお前は……。」
あまりの屈辱から考えるより先に口から願望が出てしまった俺。
そんな俺にあきれながらも樹は俺の思いを組んでくれる。
「あの、杉坂さん。こいつもこう言ってるわけだし、あんたが選んでやってくれない?」
頑張って選んでくれていた樹には申し訳ないが正直、野郎に選ばれるよりかわいい女の子に選ばれたい!!
なんて思うのだが樹の言葉を受けた陽葵ちゃんは首を横に振った。
「阿久津さんはどの浴衣でも似合いそうな気がして多分選べないので……ごめんなさい。」
陽葵ちゃんに浴衣選びを断られた俺はトンカチを頭にぶつけられたかのような衝撃を受けた。
なんで、なんで明夫は選べて俺の浴衣が選べそうにないなんて言われたのだろうか……
(何でも似合いそうって、俺はイケメンでも何でもないから何でもは似合わないわけで、つまりは陽葵ちゃんは俺がどんな浴衣を着ようが興味ないってことに……)
どうしよう、すごく泣きたい。
「……じゃあ俺が迷ってる浴衣、どっちにするか選ぶの手伝ってくれない?」
「あ、それなら!」
樹の提案で少しだけ浴衣選びに加わってくれる陽葵ちゃん。
(それなら……それならって……。)
やはり俺の浴衣選びに陽葵ちゃんは興味がないのだろうか。
こう言っては何だが明夫よりは女の子に好かれる自信があるのに明夫に負けた俺は少しの間ショックを受け続けたのだった。
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