ある実験用マウスが、壁のない迷路のクリアを義務付けられた。道を誤れば死ぬ。実際に何度も死んだ。そうして死んだ「前世」の記憶を元に、新たなマウスが迷路へ送り込まれてゆく。先代の無念を晴らす、ためではなく、ご褒美のほうれん草を貰うために。マウス達の軽妙な独白、同じ記憶を持ちながら異なる個性、世代の変遷。それらが抒情とテンポを両立し、手際良く、鮮やかに綴られています。大変面白いSF短編。